第58話
「そうだね。早くて三日後くらいには出航になると思う。そのつもりで店長にも僕から話をしておくね」
「はーい。なあ、イーズっておれのこと好きなのか嫌いなのかよくわかんねえよな。おれが嫌いなら黙って置いていけばいいのにさ」
イーズは意外そうな顔をした。ふっ、と溜息まじりに笑う。
「ふうん。ステラには僕がそういうことする人間に見えているんだ」
思わぬ切り返しにステラは言葉に詰まる。
ナノやイーズはこれまでのステラの人生の中で会ったことがないタイプの人間だった。だからときどき、ステラが想像もしないような言葉を突き返してくる。
だからこそふたりの前では、まっさらになってしまうのかもしれない。だけど、まっさらというのはステラにとって少し怖くもあった。
「僕もナノも旅慣れしていないから、いてくれて助かってるところはある。それに僕、ステラが星をお金に換えるところを見たいなって思ってるから」
「……は? それはガキの頃の夢で……今は……どう考えたって無理だろそんなん」
「いいじゃない。夢くらい見たってさ」
「………………っ!」
ステラはうまく言い返せなかった。もどかしさのあまり、顔が熱くなる。それを察したイーズが余裕のある笑みを見せたものだから、ステラは悔し紛れに「ばか」とだけ返した。
ナノは朝から、イーズは昼過ぎから仕事に出る。ステラは店が開店する三十分前くらいに行って、閉店までホール業務に勤しむ。
仕事に行く前に、ナノに靴を磨いてもらう。もちろんお代はきちんと支払っている。靴を磨いてもらうと、なんとなく調子がよくなるような、足取りが軽やかになるような、不思議な感覚があった。
今日も靴を磨きに行くかと思ったが、その前に郵便局へ立ち寄り手紙を受け取る。いつもの白い封筒を見て、ステラは溜息をついた。
封を開けなくても書かれていることはおおかた想像がつくけれど、一応開けてみた。
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