第56話
僕も気になって、ジャックに探らせてみました。どうやらアヴァリーも青の絵画について探っているようです。あまり素行のいいとはいえないような人たちも秘密裏に雇っているみたい。
兄さんが持ち去った青の絵画に執心するあまり、アヴァリーは手段を選ばないでしょう。あなたが得た情報を奪うために、あなたに危害を加えることだって厭わない。
なんだか不安にさせるようなことを言ってごめんなさい。あなたに危険が及んだら、すぐに旅をやめてください。僕は、ナノさんに傷ついてほしくない。きっと兄さんも。
青の絵画はとても大切な絵です。だけど、僕は人命より尊いものを知りません。ナノさんにもわかってもらえたら嬉しい。
またお手紙をくれたら嬉しいです。
ルーク・シオン』
手紙を読み終わり、そっと胸の中に抱くとルークの優しさが伝わってくる。彼のためにも必ず青の絵画を見つけたいと、改めて強く思う。
手紙を封筒にしまい終えると同時に店のドアが開く音がした。大きな身体の男が立っていた。
「……イーズ?」
「僕も靴を磨いてもらおうと思って。ステラから聞いて」
「任せろ。この椅子に座ってくれ」
イーズはゆっくりと腰掛けて、靴磨き台に足を乗せる。イーズのブーツはステラのものと違ってあまり汚れも目立たず、きれいなままだ。
「ステラがやたら靴を自慢するものだから」
「そうか。イーズのもきれいにするよ」
「ありがとう。ねえ……ナノ……あのさ……」
イーズの声に反応して顔を上げる。イーズはなにかを思いつめたような顔をしていたが、ナノと目が合うなりいつものように笑った。
「イーズ……?」
「ううん。なんでもない」
そのままイーズは黙ってしまった。その沈黙を破る勇気がナノにもなく、お互いに黙ったままだった。
が、ナノの頭上から聞こえてきた寝息によって、沈黙が破られる。
「…………だいぶ、お疲れなんだな」
音を立てないようにしてゆっくりと立ち上がり、その寝顔をまじまじと見る。イーズはやっぱりイーズのままだった。
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