第48話
ナノは顔を上げ、ステラの顔をじっと見つめる。ステラの視線はどこに行く当てもなくナノとステラのあいだをゆらゆらと揺れていた。ナノの視線に捕まるなり、はっと意識を取り戻す。
「……ステラ、どうした?」
「……え? なにが?」
「ステラならもっと前のめりになるかと思っていた」
「うん……まあ、見たいけど。見つけたらこの旅は終わるんだよなあって思ったりもしてる。絶対見つけたいのは変わんねえけど……」
ステラの語尾は頼りなく消えていく。
旅の終わりなんて考えたこともなかった。
「……ステラはたくさん旅をしているだろうから、旅の終わりを知っているんだな」
ステラの左側のブーツのには少し多く泥が跳ねていて、かかとの部分が破れかけていた。たくさん旅をしてきた証拠だ。
ナノはステラの左足を両手で持ち上げる。ブーツの先をぐいっと引っぱり、脱げと指示する。ステラは戸惑いながらもするりとブーツから足を抜いた。
ナノはそのままブーツを店主のもとへ持っていき、修理を依頼する。
店主はブーツを上や下から観察するように見て、両方持ってくるようにナノに指示をする。ナノとステラはそれに従った。
ステラは客用のスリッパに履き替えて、売り物の靴を眺めていた。
「修理が終わるまで少し待っててくれ」
「ああ……うん、ありがと。きれいなブーツでばりばり働いて、がっぽがっぽ稼いでくるわ」
「ふふ、気持ちは嬉しいが稼ぐのは必要な分だけでいいよ。そんなにいらない」
ステラは「は?」と、口をあんぐりと開けて、珍獣にでも遭遇したかのような目でナノを見た。なぜそんな目を向けられるのかナノにはわからなかった。
「そんなにいらないって、金が? 金いらないの?」
「いらないとは言っていない。必要な分の金があればいいというだけだ」
「なんで? 金があればあるほど、大抵のことはうまくいくのに?」
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