第45話
ここは飲食店や住宅が並ぶ街。規模こそは大きくないけれど、さすがに野宿するのははばかられる街なのは確かだった。その辺で寝転がっていれば周囲から不審がられる。
「それは困った。日雇いの仕事を探して稼ぐしかないな」
「だね。ステラはお金持ってるのかな」
「うん、話してみよう」
ステラのもとに戻ると、ステラは水を飲みながら大きく息を吐いていた。ナノたちに気づくと、気怠そうに「おう」と言った。
イーズが案内板から得た情報をステラに伝える。ステラとしては今日船に乗らなくて済むことは都合のいい話だったが、足止めを食らうのは不本意のようだった。
そして、深呼吸をした後に「おれも金がねえ」と真顔になった。
三人は街の案内所に足を運んだ。ナノたちと同じような旅人たちが押し寄せていた。といっても、小島に渡るような旅人はほとんどおらず、宿や食事処を探したり、別の場所に行くための船の時間を見たりしていた。
案内所の受付窓口に三人で行き、事情を話す。受付の女性は分厚いめがねをくいっと上げて、重そうな書類をぱらぱらと開く。いくつか仕事を提示してもらい、三人にできそうなものを吟味する。メモを取って、ひとまず募集を出している店を巡ることにした。
一軒目に立ち寄った靴屋では靴磨きを募集していた。しかし三人もいらないと言われてしまったので、ナノだけ雇ってもらうことになった。
そこの店主からすぐ裏にある飲食店で人を募集していることを聞き、ステラとイーズはふたりで向かった。残されたナノはさっそく店主から仕事の内容を教わる。
店主は白髪頭の物腰柔らかな男性だった。夫婦で長いこと靴屋を営んでおり、靴を作って売るだけでなく旅人の靴の修理や靴磨きもやっている。
この街は旅の中継地点として栄えてきたのだと店主が話していた。
「ナノさんはなんのために旅を? まだお若そうだけども」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます