第42話
「じゃあ、港に行こうか。出航の時間も迫ってることだし」
「うん。そのハムたまごサンドに『しちみ』をかけたら美味い気がするなあ」
「朝から辛いもん食うの? 強えなあ……」
港へ向かおうとすると、ひとりの青年が勢いよくステラにぶつかった。ハンチング帽をかぶった獣人だった。
ステラはぶつかった勢いでしりもちをつき、少年もまた地面にひっくり返っていた。
青年は鞄の中身をぶちまけてしまい、慌ててそれをかき集める。ナノもそれを手伝うと、青年は慌てた様子でナノの手を握った。
「あーっ、いえ! そんなお嬢さんに手伝わせるなんて!」
「いってえ……ったく、どこ見てんだよ!」
「ステラ。そういう口の利き方はよくないと思う」
イーズがぴしゃりと言うとステラはなにも言わずに口先だけをつんと尖らせる。少年はまだあわあわと言いながらぶちまけたものを拾っていた。
土も一緒に鞄に入れると、よろよろと立ち上がって何度も頭を下げる。そして風のように走り去っていった。
「……ん? なにか落としているみたいだ」
ステラの足元に紙くずが落ちていた。ステラは不機嫌そうにそれを拾うと、ゴミだろと言いながらポケットにねじ込んだ。
「骨折れたって言って、慰謝料とか取ってやりゃよかった」
「ステラ、それは不届者の行いだ」
ステラは服や腕についた土をはらう。そして、溜息をつきながら青年が去った方向を眺めていた。
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