第41話
「青の絵画、ぜってえ見つけてやるわ。な、イーズ」
「………………」
「おいイーズ、無視かよ」
イーズははっとして、すぐにいつものように笑った。当たり前だろ、とイーズが静かに言った。
宿に着いて、部屋を案内される。ようやくゆっくり腰を下ろせたナノは、小さなベッドの上で大の字になった。
まだ目の端がちりりと痛むけれど、ふたりがずっと寄り添ってくれたおかげか、涙はすっかり乾いていた。
昔に比べれば泣かなくなったつもりだけれど、やはり根はなかなか変わらないらしい。
強くならなくちゃ。そう言い聞かせては、なりきれない自分にいつも憤る。悔しくて泣きたくなる。
「あ……ルークさんに手紙を書かなくちゃ」
ひょいと起き上がり、ペンと便箋を取り出す。
レオともうすぐ会えそうなこと。海がきれいな街に着いたこと。翌朝出航する船に乗る予定であること。ステラという旅の仲間ができたこと。ステラもまたユーリの絵を見たがっていること。
泣いてはいられない。これからもっとやることがある。ナノは目をこすり、手紙をしたためる。ペン先のインクがぽとりと便箋に垂れたけれど、そのままにしておいた。
返事は次の街の郵便局宛にくださいと付け加え、封をした。
翌朝、ステラと手紙を出しに行った。宛名は見えなかったが、きっと家族宛だろう。
郵便局を出たところで、市場で買い物を終えたイーズと合流した。
「市場はなんだかいい匂いで溢れてて、いろいろ目移りしちゃったよ」
「朝は賑やかだよなあ。んで、朝飯はなにを買ったんだ?」
「ハムたまごサンドだよ。あと牛乳も」
ほら、とイーズが紙袋の中身をふたりに見せる。
ハムたまごサンドはまだ温かいみたいだ。袋を覗き込むとたまごの匂いがぷわんと登り立った。それだけで食欲を刺激され、ナノのお腹は早く食えと急かすように鳴った。
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