第20話

「……なるほどね。で、青の絵画は今どこに?」

「知ってりゃわざわざ旅に出るかよ。とりあえず片っ端から芸術関係をあたったけど、たどりつけなかった。ユーリ本人と会えればいいんだが……どこにいるかわかりゃしねえ。最近はちょっと諦めかけてる。おれの旅もそろそろ終わりかね」


 ステラはナノをちらりと見やる。


「で、ナノはどんな絵を探してんだ?」

「……同じだ、ステラさんと。わたしたちもユーリの絵を……青の絵画を探している。ただ、残念ながらユーリは亡くなっているから、所在を本人に問うことはできない」


 亡くなっている、という言葉でステラはしばらく黙った。やっと絞り出したのは、そうか、という乾いたひと言だけだった。

 ようやく解いた腕をぐっと上げて、身体を思いきり伸ばす。喉がゴロゴロと鳴った。その仕草がまさに猫で、ナノの顔は思わず緩む。


「ユーリが亡くなってるってのは驚いたな。まだ若いんじゃねえの」

「そうだな。ユーリは……半年前に亡くなって、わたしが見送った。だけど青の絵画はユーリの手元に残っていない。ユーリが持ち出したことは確かだけども、その先はわからない。ひとまずこれからユーリの友人に話を聞きに行くところで……」


 ステラはテーブルに手をついて勢いよく立ち上がる。


「え、それ、おれも聞きたい! ねえ、おれも連れてってよ」


 ステラの顔に赤みがさす。声もわずかに上ずり、テーブルに乗せていた手は自然と固く握られていた。

 ナノとイーズは目配せをして互いの意思を探った。


 ステラは旅慣れしている様子だし、青の絵画も複製とはいえ見たことがあると言う。ナノとしては、心強い仲間のように思えた。


 が、イーズはそうでもないようだった。珍しく眉間を歪ませ、探るような目を向けている。ステラもさすがに気づいたのかイーズと向き合うようにして椅子に座り直した。

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