第19話
「わたしは、ナノ。わたしも……まあ、探しものの旅だ。こっちはイーズ。わたしの旅に付き合ってくれている友だちだ」
「ほお。探しものって……なにを探してんだ?」
ステラは意外そうな顔をする。大げさにも見える彼のリアクションにナノとイーズは小さく驚いた。
「ええと……なんと言えばいいか……そうだな、家族が昔描いた絵を探している。今はまだ情報収集の段階だけれど」
「絵? 奇遇だな、おれもだ」
「ふうん。きみはどんな絵を?」
ナノが答える前にイーズがやや前のめりになった。尋問をする警察のように目を光らせ、手を組んで口元に置く。真正面に座っていたナノからは、イーズの表情が読めなくなった。
「ふたりは芸術に詳しくなさそうだけど、知ってるかねえ」
「もったいぶらずに教えてよ。知ってるかもしれないじゃない」
ステラは指に髪を巻きつけるのをやめた。腕を組み、イーズと見合う。
「ユーリの絵。欲を言えば、『青の絵画』だな」
ナノは身体ごと勢いよくステラのほうを向く。今すぐにでも話を聞きたいと思ったが、イーズの顔がさらに険しくなり、ナノは口を挟めなかった。
「だいぶ前だけど……当時若手画家として活動していたユーリが『青の絵画』を発表したんだ。『青の絵画』はユーリの名を世に広めた。芸術のげの字もわかんねえようなやつらも、こぞって大金はたいて買うくらいにはな」
「それで、そんな絵をなぜきみが?」
「ガキの頃に複製を見たんだ。きれいだと思ったけど、あくまでコピーだからな。おれは死ぬ前に本物を見たい」
ステラは腕を組んだまま、椅子の背に身体を預けるようにして天井を見上げる。
しかしすぐに身体を起こし、人差し指と親指で円を作ると、にかっと笑った。
「でも、所有者を見つけられたとしてもふっかけられると思って。見るだけでウン万はかかるかもしれねえから、平行して金集めもしてるってわけ」
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