2 旅のお供に
第17話
ヴェルデ村を出てしばらくしてから、ようやく大きな街へ到着した。
「ナノ、歩ける?」
「歩けないことはないけれど……もう脚がぱんぱんだ。イーズはさすがだな」
「うん、まあ訓練で長い距離を歩くし。きついならおんぶしようか?」
背負われる自分を想像して、イーズの申し出を丁重にお断りした。小さい子どもじゃあるまいし。イーズに心配をさせてばかりではなく、もっと強くならねばとナノは密かに意気込んだ。
宿はレンガ造りの建物で、白い縁の小窓が規則正しく並んでいる。扉を開ければ岩のような身体をした中年の男性が、見た目からは想像もつかないような人懐っこい笑顔で迎えてくれた。彼が宿の主人だ。
ここは旅人がよく立ち寄る街なのだ、と宿の主人が話していた。その証拠に、外はたくさんの人で溢れかえっているし、肌の色や目の色、そしてナノの村ではめったに見かけない獣人もいる。
獣人とは文字どおり、獣のような見た目と能力を持つ人間で、猫や犬、きつねなど様々な形をしている。普通の人間とは形の異なる耳としっぽを持っているのが特徴だ。
「腹が減った。食事をしたいな」
「そうだね。僕もぺこぺこ」
宿の主人に聞いて、この街で一番人気の食事処へ向かう。広い店内には椅子と机がぎっしり置かれていた。人間を詰められるだけ詰めたような店内には、料理と人の汗の匂いが混ざっていた。
店の端に空席を見つけて座ると、陽気な店員が水差しと空のコップを置いた。メニューをふたりの間に置いて、忙しく席を離れる。
「うーん……この炎の激辛ハバネロ具沢山スープ一択だな……制限時間内に完食すれば無料だと書いてあるぞ! 無料!」
「空きっ腹に激辛料理なんて、ナノの胃は強いな……頼んでもいいけど、お残ししても僕は食べてあげられないからね」
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