第16話
封筒の中には折り畳まれた紙幣が入っていた。レオの優しさに胸の中が熱くなり、お守りのように紙幣を胸に当てた。
イーズに報告に行かねばと思い、家を飛び出したらちょうどイーズが坂を登っているところだった。ナノの姿に気づくなり、イーズは軽々と坂を駆け上がってくる。
「イーズ、返事が来たんだ!」
「そっか。ちょうど僕も休学手続きを終えてきたところ。その報告に来たんだ。いいタイミングだったね」
ナノはイーズにレオからの手紙を見せた。手紙を読み終えると丁寧に封筒の中に戻した。
「イーズ……おばさんたちは……なにか言ってなかったか」
「驚いてはいたけど。でも、このまま学校に戻っても、なにも身に入らないと思うし。僕だってユーリのことを知りたいんだ。そうすれば……」
「そうすれば?」
イーズは口元に手を当てて、視線を逸らす。
「…………ううん、なにもない。ユーリは僕にとってかっこいい大人だったから、その、ああいうふうになりたいなって、昔から思ってたし」
「そうなのか? ユーリはだらしないところがあるから、真似してはいけない大人の見本だぞ?」
イーズはしばらく考えた後、そうかもね、と苦笑した。
手紙が届いてから三日後、ふたりは村を出ることにした。
現存しているかどうかもわからない絵画を探しにいく旅だなんて、無駄骨に終わるのかもしれない。それにも関わらず、イーズの家族を含め、近所の人たちが賑やかに見送ってくれた。
イーズの母親はナノを抱きしめて涙目になっていた。なかなか離せずにいたけれど、イーズの父親からなだめられてようやくナノを解放した。
「それじゃあ、いってきます」
必要最低限の荷物を詰めたリュックサックを背負い、ナノは歩き出す。
まずはレオ・ブルースターの元を目指して。
ふたりは泥濘んだ道をゆっくりと進む。二人三脚のように歩幅を合わせながら進むと、足音が次第に重なった。
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