第14話
「……そういえば、この前相談があるって言ってたよね。本当はもっと早く聞くつもりだったけど、遅くなってごめん」
「ああ、うん。近いうちになるけれど、しばらくこの家を空けて旅に出ようと思うんだ。その間、家の手入れをお願いしたくて。おばさんにお願いしたくて……」
「た、旅!?」
イーズは目を白黒させる。そんなに驚かせるようなことを言っただろうか、と思いつつも、なんの理由も話さずに家を出るというのはやっぱり唐突だったかと反省する。
ナノは先日ルークがこの家へ来たときのことを話した。ユーリのこと、青の絵画のこと、ルークと自分のために青の絵画を探し、可能であれば持ち帰ること。そのためにまずはユーリの友人のもとへ向かうつもりだと話した。
「とりあえず会いたいとだけ手紙で送ったんだ」
「なるほど。でも、あの人って世界を旅してるんじゃなかったっけ。手紙は読めるの?」
「手紙は自宅に送れば、手元に届くようになっているから問題はない。どこかで落ち合おうと思っている。返事が来たら出発するつもりだ」
「そう……ナノはひとりで絵を探すの?」
そうだけど、とナノが返すとイーズは肘をついて、目を伏せる。部屋の端にある棚のほうを見たまま黙ってしまった。棚に積んだスケッチブックの表紙がすきま風でかさかさと音を立てていた。
──さすがに無謀すぎて呆れているのかな……。
イーズの横顔は呆れているようにも、悲しそうにも、怒っているようにも見えて、どんな言葉をかければいいのかナノにはわからなかった。
「ナノ、僕にも探させてよ。僕だってユーリが描いた絵を見たいし、なによりナノの力になりたい。それとも僕は……旅のお供には頼りない?」
思いがけないイーズの言葉に、ナノはほぼ反射的に首を横に振った。
「そんなこと、ない! でも……どのくらい時間がかかるかわからないし、イーズに迷惑はかけられない」
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