レートSSS

斎藤 三津希

レートSSS

 一言で言えば大馬鹿天狗でした。


 多分、おそらく、いや、絶対に小学生の僕はこの長鼻野郎と化していました。


 突然ですが、家に漫画や雑誌などが豊富にあったらどうしますか?


 まぁ、読むと思います。主に漫画。


 その中でとてもカッコいいキャラがいたらどうしますか?


 絶対真似しますよね。


 これは『絶対なんてない』という言葉を信じている僕でも絶対だと言い切るほどです。


 きっと皆様も、

 遊具が撤去された後の地面に残ったひびで


『アースクエイクッ!』してたでしょう。


 公園に落ちている枝を加工して、作品の物に近づけようとして断念してたでしょう。


 でも、これって黒歴史の『く』の字じゃないですか。


 なぜかって?


 よく考えてほしい。先ほどの二つは人目のつかない場所で行うことが可能なんです。


『アースクエイクッ!』は公園でも可。

『枝加工職人』も公園で可。


「でも、公園って人いるよ?」

 きっと、こう疑問を持つ人もいるでしょうが、そんなもの一瞬の隙をつけばチャンスは無限インフィニティなんですよね。

 有識者の僕がすでにできることを立証しているので、ご安心して下さい。


 本当の問題はここからです。


 あれは小学四、五年生の頃。


 世の男子の全てがカッコいいと思うほどのキャラと出会ってしまったのです。


 発症した中二病は約2年の間、治まることを知らず、ただ悪化する毎日。


 しかも同じ作品を読んでいた同じ症状の患者がいるものだから、歯止めが効かなくなり、人目を気にせず暴れる始末。


以下、当時の会話の再現


友A「俺の高速の異能で全て避けきるっ!シュッ、シュッ、シュシュッ、シュッ。」

 友A、避けている音を口で再現。


僕「ふん、それで避けたとでも?」


友A「な、何っ!?」


周り「なにあれー。クスクス・・クス・・」


友A「くそっ!追尾だとっ!?この俺でも避けきれないっ・・・。」


僕「終わりだな・・。」


友B「俺が守るっ!!ぐはぁっ!!」

 友B、大の字の形から吹き飛ばされる。


周り「え、なにあれ大丈夫なの?てか、なにしてんの?」


友A「と、友B!!」


僕「雑魚を庇ったからだな。おそらくSレートほどだったのに。Aレートのために散るとはな・・。」


友A「貴様っ!ふざけるなよ!覚醒!!ビキッ、ビキビキッ、ヴァキ!」

 友A、覚醒で肉体が変化している音を口で再現。


僕「ほう。少なくともSレートといったところか、だが俺はSSレートだ。この戦い、早めに降参するのが吉だぞ?」


友A「そんなもの、やってみなければわからない!!!」


といった見るに堪えない、文に書いても読む地獄といったものが僕の黒歴史です。


 ちなみに会話によく出てきていた


『レート』という言葉は僕達が愛読していた作品にでてくるもので、強さを段階にして表したものです。


 強さは、


 CからB、BからA、AからS、SからSS、SSからSSSとなっており、SSSに近いほど強く、逆にCに近いほど弱いです。


 なので、再現の中で友A、Bと敵対していた僕はかなり強いのです。


 しかし、ふとした瞬間に思い出してしまい、古傷をえぐってくる黒歴史自体が一番強いのですので、黒歴史はレートSSSです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レートSSS 斎藤 三津希 @saito_zuizui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る