第4話 野良猫と一緒に登校
窓に差し込む朝日の眩しさで目が覚めた。
気怠げな身体を起こして、あくびをする。
昨夜は寝付きが悪かった。
理由は明確だ。裸の女子を目の当たりにしてしまったせいで、悶々とした気持ちになったからである。結局、寝付けたのは深夜の二時を過ぎた頃だった。
とにかく朝はやってきたわけで、登校の準備をしないといけない。
身支度を済ませて一階に下り、朝食を用意する。
朝はレトルト食品やパック野菜など手軽に食べられるもので済ませている。居候することになった女子がお気に召すか分からないが、まあ嫌だったとしても我慢してもらおう。
「遅いな……」
朝食をテーブルに並べた後、しばらく経ったものの陽菜は起きてこない。
まだ寝てるのか。そろそろ起きて準備しないと、学校に遅刻するぞ。
さらに数分ほど待っても姿を現さなかったので、仕方なく起こしに行くことに。
陽菜にあてがわれた部屋は、千冬姉の自室だ。
わけあって今は家を留守にしている千冬姉には、昨夜に大まかな事情を伝えてある。
俺の同級生が我が家に住むことになったのを千冬姉は驚いていたが、部屋を陽菜に貸してもいいかと尋ねれば、快くオーケーしてくれた。
「おーい、そろそろ起きないと遅刻するぞー」
部屋のドアをノックして声をかけるが、応答なし。
直接、部屋に入って起こすしかないか。
勝手に入って怒られるのは……彼女の性格上ないだろう。
ドアを開けて部屋に入ると、予想通り陽菜はベッドですやすや寝ていた。しっかりと掛け布団にくるまり、猫のように身体を丸めている。
「朝だぞ、起きてくれ」
「……すう、すう……」
近くで呼びかけても全く起きる気配がない。
まさに熟睡って感じだ。
「俺は先に登校するぞ。遅刻しても知らないからな」
「……ん……起きる……」
ようやく反応があったかと思えば、ゆっくりと身を起こした陽菜の姿に動揺する。掛け布団がはらりと落ち、純白のブラとパンツだけをまとった肢体があらわになったのだ。
「お、おい! なんていう格好で寝てるんだ!」
「……おはよ……ふああぁ……」
盛大にあくびをした陽菜。
朝から半裸の野良猫系女子は、大きく伸びをする。
彼女の素肌は白磁のように白く滑らかで、どこを触ってもすべすべしてそうだ。思わず手を伸ばしたくなる魅力がある。
美しい下着姿を見せられた俺は、動揺を必死に押さえつけて陽菜にまくし立てた。
「早く着替えて飯食って登校しよう!」
「学校行くの、めんどくさい……ふああぁ……」
なかなかベッドを離れないので置いていこうか迷ったが、俺が困っていることを察してくれたのか、陽菜は渋々と制服に着替えて部屋を出た。
さっさと朝食を取らせ、登校する。
色々とバタバタしているうちに、遅刻寸前だ。
まったく、野良猫の世話は手間がかかるぜ。
早足で学校に向かい、ギリギリ遅刻は免れた。
これで先生の説教を受けずに済む。
しかし、俺は一つの懸念を忘れていた。
うっかり陽菜と一緒に教室に入ったため、クラスメイトの注目を集めてしまったのだ。
「あれっ、小鳥居さんって高宗くんと仲良かったっけ」
「おいおい二人仲良く教室にインかよ! こりゃ何かあったな!」
教室内がざわめく。
俺はともかく、陽菜はクラスメイトに関心を向けられている不思議ちゃんだ。
そんな陽菜が男と並んで登校してきたものだから、クラスメイトがざわつくのも仕方なかった。
「あー、その……これは……」
「ん、千隼と一緒に登校してきた」
「うおおい! そんなストレートに言わなくても!」
俺が良い言い訳を考えつく前に、陽菜がサラッと事実を述べてしまった。おかげで俺と陽菜はただならぬ関係なのではないかという誤解を生み、休み時間は質問攻めされることに。
「あの自由気ままな小鳥居さんをどうやって落としたの?」
「落としてないから。ただ偶然、通学路で会っただけだから」
「小鳥居さんと距離近いの羨ましいんだけど。俺もベタベタに懐かれたいし甘く擦り寄られたいんだけど」
「知らん! 俺は別に懐かれてるわけでも擦り寄られてるわけでもない!」
ゴシップ好きな女子や陽菜にそっち系の関心を寄せていた男子に詰め寄られ、俺はへとへとだ。
ちなみに陽菜は休み時間中、ずっと自分の席で爆睡していた。すごく穏やかな寝顔だった。
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