こぼれ話:「小説」ってなあに? (言葉の由来)

「小説」という言葉の由来について、メモ書き程度に少しお話します。ワークショップ内でお話ししようと思って手元には原稿を用意していったものの、皆さんでの読み合いや朗読が予想以上に大盛り上がりしたため、そちらに多く時間を割きました。


 3月17日の予定時間は、13:30~16:00だったのですが、館長と皆様のおゆるしをいただいて、大幅に伸び(伸ばし)16:30まで朗読発表会! その後もわいわいと、閉館間際まで会話に花を咲かせました。途中、開架室もしまっちゃうからそっちへ行きます!と慌てて席を立たれた参加者の方(画家さんだった!)、掲載許可もいただいて書いていただいていたイラストの写真もとったのに、お名前を訊くことをわすれてしまった~~~!!!どなたか覚えておられませんか?


 さて、冒頭にも書いたように、「ショートストーリーを書いてみよう」と題して開催した今回のWSだったわけですが、文字を使った創作には小説とか詩とか俳句とか色々あります。そもそも「小説」ってどういう意味なのだろう、と当日の朝にふとよぎりました。それで少しだけ調べました。


「はーい! 小説ってなんですか?」

「長いのになんで〝小〟なんですか?」


 小学生の参加者は当日おられませんでしたが、もしこう訊ねられたら、私は答えられるだろうか? となりまして。実際にしらべてみて、あ、うん、知らなかった、となりました。なのでお載せします。(もしかしたら片方の意味はご存じの方も多いかも?)


――


「小説」の言葉の由来をネットで検索しますと、おそらくヒットしやすいのは、


・坪内逍遥がnovel の訳語として「小説」という言葉を用いました。


 という説明の部分かな、と思います。坪内逍遥の話のみで終わっているサイトが結構ありました。はい、インターネットの情報は、あちらから、こちらから、多方面から検索してこそ真実にたどりつけるのですよ! 間違った情報もたくさんありますからね。裏をとる、とまではいきませんが、たくさん調べて、ふるいにかけたり、判断していくのだ!


 まあ今回はそこまで大袈裟なことではなくて、言葉の定義、由来、歴史的な事実を知りたいだけですから、広辞苑とか辞書だとどう書かれているのか、そちらを調べれば先人がなしてきた偉業の一端を簡単に知ることができそうですね。いやあ、辞書って本当にすごいや。うんうん。(脱線)



※「小説」という言葉は、坪内逍遥が訳語として用いる以前にも、「novel」の訳語として用いられていましたが、novelの他にも、「story」「fiction」「romance」など、関連する複数の語の訳語として総じて用いられていたそうです。

「小説」を「novel」に限定して、他の文学形態と明確に区別させたこと――これが坪内逍遥がやったことといえます。


 辞書などでは、「小説」とは以下のように説明されています。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【小説】


1)《坪内逍遥がnovelにあてた訳語》 文学の一形式。特に近代文学の一ジャンルで、詩や戯曲に対していう。作者の構想のもとに、作中の人物・事件などを通して、現代の、または理想の人間や、社会の姿などを、興味ある虚構の物語として散文体として表現した作品。


2)《中国「漢書」芸文志げいもんしから》 市中の出来事や話題を王に報せるために記述した文章。稗史はいしのジャンル名。※はい‐かん〔‐クワン〕【×稗官】民間の風聞を集めて王に奏上した下級役人。 転じて、身分の低い小役人。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ほうほうほうほう……! なるほどこういうの好き。知識オタクの血が騒ぎます。


――稗史はいしとは、世間のうわさなどを歴史風に書いたもの。転じて、小説。


 世間のうわさや出来事、「隣の庭で猫が仔猫を産んだってね!」そんな小さなことが含まれてたかどうかはわかりません(なかったでしょう)が、世間での出来事を王様にお知らせするためにまとめたもの、が「小説」だったと。担当したのは下級役人だったということですから、それほど重要な職務ではなかったかもしれませんが、世間のことを知る必要のあった統治者に、村では何がおこっているか、をつねにご報告する必要があったわけで、おそらく日誌のようなもので膨大にあったのだろうなと推測されます。(この先は時間の都合上、深堀していません。申し訳ありません)


 現在私たちが、「小説」というと、するのは「本」という形になっている架空の物語のことかな、とは思うんですが、この上記の2からわかるように、 「小説」の「小」とは、長さを表していないということがわかります。小話、ちょっとした報告、とりまとめ。「大」に対しての「小」。立派ではないもの、雑記をまとめたものといった感じの「小」でしょうか。あくまで由来の話ですが。





 こぼれるにはちょっと多い、こぼれ話でした。


――


 ちなみに英語にまつわる小ネタです。


■novelとは:

 novelは「新しい」を意味するラテン語 novus に由来します。実際、現在でもnovelは形容詞として「新しい、新奇な」という意味も表します。


■小説を意味して使われる主な英単語:

 novel:長編小説

 story:短編小説 short story とも

 fiction:事実でない創作小説


■ライトノベルは和製英語

 若者向けの小説 (japanese) young adult novel


■その他

 雑誌(magazine)、漫画(comic,manga)、教科書(textbook)、絵本(picture book)、写真集(photo book)



※当日時間の都合上、割愛した「小説」という言葉の由来、小ネタでした。

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