第2話 ニュースタート

 静かだ。建物の外から叫び声や助けを呼ぶ声など届いてくるけど、少し距離が離れているため、この部屋の静かさを破ることはできない。

 少し休んだ星野は警察の死体から脱いで着かえた服から予備の弾倉を取り出し、確かに装填済みと確認して胸のポケットに入れる。死んだ警察に対する敬意がない訳ではない、彼は命の最後の一瞬まで自分の役割を完璧に果たしていた、でもこんな状況で余計な感情に縛られ生還の可能性を縮むなんてことをする星野でもない。

 警察の衣装はある程度に人々の信頼を得られる、少なくとも自分に近いているのは警察だと見たら少しは安心するはず。今でも外は虐殺の声を聞こえるこれくらいのことは必須だと星野は思う。事件が解決したら自首すればいい、刑期が長くなるだろうけど。

 体を振り向いて後ろにいるもう一人の警察の死体に向くと、冷静になった脳が先ずっと気付かなかった変なところを気づいた。

 虫の死体がいる。拳銃を必死に握って引き金を引く寸前のこの警察の頭のところに彼の命を奪った虫の死体がいる。それに自分に襲って弾を食らった虫と違い、体に傷一つもないのに死んでいる。それを意識した星野が部屋中を環視したら、いろんな所に虫の死体がいた。

 さっきは一方的な虐殺だった、こんなにたくさん虫の死体があるはずがない。それに虫たちの死体の傍は必ず人間の死体がある、気になった星野が数えてみたらやはり自分に襲った奴を除くと残った虫の死体は人間の死体と同じ数だった、一番明白な答えは人間を殺した後にすぐ命を失ったこと。

 しかし原因についてはどう考えでも納得できる答えを得ない。習性だと言ったらこれは無駄遣い過ぎる、種の存続の為に存在する進化はこんな間違えを冒さないはず。自然の習性ではなければ、誰かに操られているしかない、でもどういう目的でこんなややこしいことをするのか、恐らく本人が知らせる以外、一生分からないのだろう。色々問題はあるが星野はそれらを後に置くことにした、今はどう生きられるかの方が第一問題だ。

 「♪~」

 星野の頭が再び回す前、耳がすぐ足元に音楽の音を聞こえた。頭を下げるとやはり足元には着信メロディーを奏で「着信中」と示しているスマホがあるのだ。

 違和感——これは星野が携帯を見た瞬間に生まれた感覚だ。ここにはつい先まで世界末日の開幕のような状況を演じたというのに、目の前のこのスマホは壊れるどころか、モニターに傷一つないし、一滴の血も染められていない。まるで先の惨劇はこいつと何の関係もなくのように真新しいスマホがそこに置かれる。

 少し躊躇したが結局のところ警戒心は好奇心に負け、星野はスマホを拾い手に取って最後に指が少し躊躇したが、遂に受信のボタンを押す。

 「もしもし?」

 電話の向こうから若い執事なイメージがする声が一言だけ伝えた。

 『真実を知りたいそしてこれからも生き延びたいというのなら、このスマホを捨てないでください、後ですべて話します。』

 「は?何を....」

 星野に質問の時間も与えず、電話は切られた。短くもなく長くもない一言だった、でも星野の仮説は証明される、やはりこれは誰かが何らかの目的でこの惨劇を起こした。その原因は後で解釈すると言ったがその後とはなんの後だろう、恐らくそれも“後”でしか答えされない。だが後で答えてくれるから今はそんなことを考えなくて済む。

 そう思った星野はさきの発見に驚きで回収忘れた警察の死体の方に歩き出す。

 「誰か助けてー」

 女の声だ。それにこっちに物凄いスピードで近づく素足の足音、恐らく虫に追われて必死に走っているでしょう、そう思って星野は銃を再び手に取って声の方向に向く。

 やはり2秒も足らず、裁判官が出入りする扉から一人の女性が飛び込んできた、そしてすぐ警察の制服を着ている星野を気付く。

 「警察さん、助けてください。」

 そう言いながら彼女の足も止まらず、星野のそばからすり抜けて部屋の後ろに走っていく、ほぼ同じタイミングで先の扉から先の虫と同じ姿をしている物が飛び込んだ。

 そしてほか虫と同じ、もっと近くにいる星野を無視して女のほうに向かおうとする。

 『パン、パン』

 だがそんな機会を与えず、虫が自分のそばで通ろうとした時、星野は素早く虫に向けて二発を撃った。地面に倒れた虫は少し足搔きしだがすぐ生気がなくなった。

 「ありがとうございます、警察さん。」

 安心した女は地面に座って、激しく喘いながら恩人に感謝する。先までずっと素足で全力走っているから、いまの彼女はただ両手を使って足を揉むしか何もやりたくない、だがあいにく、あるものは彼女の視線に入った。

 「礼を言われるほどのことじゃないさ。」

 女性の感謝にあまり気にしてない星野は銃の安全装置を付けベルトに掛けているホルスターに入れ、目の前にいる虫の死体を観察する。自分がこいつに銃を向けていても自分を襲ったあの虫のように何かを発射する器官を変形した、でも時間が間に合わず完全な変形をなされなかった。普段はターゲットしか注意しないが、もし他の敵意を感じたら反撃もするらしい。

 「動かないで、両手を頭の後ろに抱えてこっちに向きなさい。」

 助けた女性の声が、急に厳しさを感じられる、気になった星野が頭を振り向くとあの女性はいつの間にか倒れたあの警察の拳銃を手にして、結構美しいその真面目な顔に少しの恐怖を見られる、そのサファイアよりも澄んでいる瞳は緊張のせいで揺れている。

 「何をしている?」

 「ここに警察手帳が落ちていました、」

 女はそう言いながら左手で拾った手帳を開く、

 「中の写真はあなたではなくここに倒れている半裸の人です、それに手錠も落ちでいましたの、だからあなたは警察ではなく、警察に成り済ました犯罪者の人でしょう?」

 星野はその推論を聞きながら何かを認めているように頭を頷く、そして彼女のほうに振り向く。

 「いや、凄いなお前、こんなピンチの状況で冷静で周辺を観察して得た情報から結論を導きそして対策を考えるとは、拍手したくなるくらいだ。」

 「何を言っているの、早く私の言う通りにしなさい、でなければ本当に撃ちますわよ。」

 女はそう言って、構えをもっとプロに見せつけようとしている、でも結局プロではないから、少し滑稽な姿になっている、それに本人はそれを気付いていないのが、もっと滑稽なことだ。

 星野は何度も笑いたい気持ちを抑えて抑えて遂に話せることになった。

 「なぁ、一つ賭けないか?」

 「賭けですって?」

 女は少し困っている、こんな時にこの男は何がしたいというのだ?普通の場合は降参しかないでしょう、命の恩人にこんな事をするのは心痛むが、自分は犯罪者を信じるわけにはいかない。それに相手は変な行動をとらない限りこっちも傷つくつもりはないのに、いま彼は自分と賭けをしようとする、何なんだろうこの人。

 「そうだ、今から俺は10からカウントダウンしながら歩く、そしてゼロになったときお前の目の前に至る。それまでもしお前は引き金を引いたら俺はお終いだ、死んでいなかったら、これからお前の言いなりにする。でももしお前は引き金を引かなかったらその拳銃は俺がもらう、そして君には俺の言いなりに動かせてもらうぜ。」

 「正気ですの?あなたは。」

 「10、9....」

 女の六割の驚きを含めた質問に返して、星野は約束通りカウントダウンしながら前に歩き出す。

 「停まりなさい、私に撃たせないで。」

 銃を握ってる手は震えている、人を撃ちたくない、特に命の恩人にはなおさらだ。でもこの男の動きから危険を感じる、このままでは自分のほうが危うくなる。

 「7、撃ちたいなら撃つといい、だが結局はもう決まっているがな、5....」

 仕方がない、最悪の場合この人の命を奪うことになるかもしれないが、自分も死にたくはない。そうと思ったら、女は引き金を引いた——

 でも予想中の大きな音はなかった。

 「あれ、どうして?」

 正しく言えば引けないのだ、どれくらいの力を入れても引き金は微動もしない、そして....

 「2、1、0」

 星野はすでに大きな恐怖に包まれて動けなくなった女の目の前に来ている、そして手を伸ばして拳銃を彼女の何の抵抗もいその手から取り除いた。

 殺される、あるいはもっと怖いことをされてしまう、そんな恐怖は彼女の心に満ちている、だって目の前の男はそんな気配がしているから。でも星野は何もしないまま体を横に向いて、そばに倒れてる制服を着ている警察の死体からあちこち探って、予備弾倉とかホルスターとかを外して自分のものにするだけだった、先ほどの危ない気配もさっぱりなくなっている。

 「あの、殺したりしないのですか?」

 女の声は少し小さい、まるで少しでも大きくしたら、星野は気が変わって彼女の命を奪ってしまうようだ。

 「殺す、お前をか、そんなことをしたらお前を助ける意味ないだろう?」

 星野はそんな言葉を聞いてため息をした。

 「そう....ですか、ごめんなさい、あなたに誤解をしました。」

 そう言いながら女はお詫びの辞儀をした。

 「別に謝ることはないさ、お前の推論は大体あってるからな、そうだ、俺は星野、星野真吾だ、お前は?」

 「鶴木ツルギ羽良ハラです、あなたは初めから私の銃は撃たないと知っているのですか。」

 片付けを終わった星野は立ち上がって先引き渡された拳銃の付けたままの安全装置を指差して鶴木に見せる。

 「ワルサーPPK/E、このシリーズの拳銃は安全装置をつけているんだよ、それにお前は銃器とか知りそうにないしな、そんなことを知るはずがない。」 

 解明が終わった、星野は増えた拳銃を増えたホルスターに収まる。

 「でも死んだ警察さんから手に入れたのに、安全装置はもう外した可能性も—」

 「—いや、ないな、」

 星野は鶴木の話に切り込んで、傍聴席の手すりを乗り越え椅子に座ったまま解明を続ける、

 「あの警察は死ぬ前に引き金を引こうとした、そして虫に脳を直撃されて死んだ、死ぬ前にはきっと激しく暴れたし、死んだときにもし恐怖のような刺激的な感情を抱いていたら死体の痙攣を引き起こして筋肉は収縮する、実際お前がこの銃を手に入れたとき、死体はすごい力で銃を掴んでいるのだろう?」

 「確かに....」

 「こんなたくさん、発砲のきっかけがあったのに、俺は俺の銃声しか聞こえていないのは何よりの証拠さ。」

 「なるほど、私は自分の情報不足で負けてしまいまし...なにこれ?」

 鶴木の方向に振り向くと、彼女の手には星野と色違いのスマホが持っていた、当然のように新品のピカピカの姿だ。

 「それを捨てないほうがいいぞ、すぐ俺たちに教えてくれるはずだから。」

 「教えてくれるって、何をですか?」

 鶴木の質問を答えるように、二人の携帯は同時にメロディーを鳴った。

 「真実、だそうだ。」

 星野はポケットから自分のスマホを取り出し、躊躇なく受信ボタンを押して耳のほうに置く、電話の向こうは前回と同じ声が届いてくる。

 『プレイヤーの皆様、おめでとうございます。』

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