第3話 ようこそ、コロシアムへ!

 「おめでとですって?」

 星野は鶴木の方を見る、彼女は今死の脅威から抜け出したばかり、こんな揶揄う半分な言葉に怒るのは当たり前だ、でも今の星野は同じ気持ちにならなかった、元々自分の人生は終わるべきだ、どんな形で成しえようと、自分にとっては同じこと、でもせっかく生き残った、選択できればやはり自分は生きていたい、そして今の状況で生きるために一番必要なのは——情報だ。

 「お前は真実を教えると言った、その約束を果たしてもらおうか。」

 『もちろん、私もそのつもりです、これから質問の時間となります、何か問題があれば聞いてください、許可の範囲で答えます。』

 「お前たちは何者だ?」

 『申し訳ありません、それは許可の範囲に含まれていないので、お答えできません。』

 角度は違ったか、直球尋問が失敗した星野は方法を変え、知った情報を使って答えを誘い出そうとする。

 「初めて俺に電話した時には、『後ですべて話す』と言った、なんの『後で』というのだ?」

 星野の心の中は嫌な予感が蠢く、もしこんなピラミッドは一つじゃなかったら、いやもし何万何億もいたとしたら....

 『あなたの思った通り、我々は世界規模で選抜を行いました、それが今終わったばかり、私はこの時を待っていたのです。』

 「銃でも倒せるこんな弱い怪物で本当に世界中の政府と軍隊を?」

 ある意味では鶴木の質問は一理ある、この虫みたいな怪物だけなら十倍以上の数がない以上はどの国の軍隊も倒せないのだろう、しかもこんな10分間も掛からず短い間で、しかし....

 『オンーウンー』

 まるでタイミングを見計らっているように東方から飛行機が低空飛行するほどのでっかいくぐもっている音が届いてくる、誰かが鉄のバケツの中に大声で叫んでいるみたいだ。

 「何の音だ?」

 勿論、星野のこの質問を答えられるのは携帯の向こうにいるものだけ。

 『鶴木様が求めている答えです、選抜といていましたが、流石に軍隊や政府など莫大な資源を持つ勢力とそれに属する組織は論外しました、でないとフェアーじゃありません、ですから残念ながらも彼らに与えられるのは死しかないのです。』

 「全員殺したのか?」

 『一人残らず全滅したとは言えません、何しろ私達が滅びたいのは「文明」という概念だけですから、生還者は僅かだがあるはずです。』

 国家機械をいとも簡単に全滅するなんで、さすがの星野も少し鳥肌が立て来た、もしこれが事実なら間違いなく相手は想像を絶する力を持ってる、でも残念なことに今まで起きたすべてのことはそれを証明する証拠になれる。

 「お前はいま『私達』と言ましたね、お前たちはいたい何なのですか、何の目的がある?全世界を自分の手に収まりたい極端組織ですか?」

 鶴木の質問に対して向こうの者は軽く笑ってしまう。

 「何が可笑しいのです?」

 『いえ、誠に申し訳ありません、もし我々がこの世界が欲しいのならばこんな回りくどいことはしませよ、我々の目的は「人類の進化」です!』

 二人は自らいろんな可能性を考えていた、相談はしていないがそれらを合わせば二十くらいはある、でも向こう側が出した答えはなお彼らを驚かせた。

 「進化だと?お前たちは人類が千年の時間を掛けて築き上げた成果を10分も掛けらずの間に無にしたんだぞ。」

 星野は少し怒ってる。政府も社会もそれらがすべて無くなった今、どんな大都市でもコンクリートの森みたいなもの、そして星野たちもただの現代製品を使える猿に過ぎない、進化どころか物凄い退化だ。こんな状況で「人類の進化の為」なんて戯れ言を言う奴は、自分を舐めてるに違いない。

 『星野様の困惑は理解しているつもりです、でも申し訳ありませんが今は答えできません、この世界で生き続けていけば自然にわかります。』

 星野の怒りに対して向こうは何の反応もなかった、もしかするとこんな状況をとっくに予想しているだろう。

 『制限時間は近いため、答える質問はあと一つです、その後は今イベントのマニュアルを説明しいたます。』

 星野は鶴木の方を見る、でも彼女はただ無言に頭を横に揺れただけ、いろいろな衝撃のせいで彼女はもうまともに考えない、当然質問なんか考え出せるわけない。

 でも星野は違った、彼は最近ずっとを心の中に覚えていた。

 「なぁ、お前に名前を教えたら、そいつの生存を確認できるのか?」

 『生存者リストなら後で....』

 「いや、リストなんかいらない、ただ一人の生存を確認したい、いいか?」

 『かしこまりました、ではあの方のお名前を教えください。』

 星野は思わず深呼吸をする、その名前は今の彼にとって誰のよりも自分の命よりも重要なもの、何故ならその名前があるから星野はさっき必死に生きようとしたのだ、それは——

 「桐崎辺矢キリサキヘンヤ、桐崎グループの代表取締役社長の男だ。」

 そして、自分のたった一つの親友を殺し、その罪名を自分に被らせた張本人、でもそんなことを星野は自分の頭の中だけにした。

 『はい、桐崎様は五体健全です。』

 まるで事前に問題の内容を知って先に答えを用意したかのように、向こうの人は一秒もかからずにその答えを告げた。

 でもそんなことを星野はまるで気にしてない、彼の思想はその答えでいっぱいだ。星野にとっても不思議な感覚だ、脳は何にも考えていないのに莫大な電波が走っている、心臓も100メートル競走したばかりのように加速している、背中はその答えのせいで寒さを感じているのにその寒さで汗が走ってシャツはずぶ濡れ。

 星野が再び時間の流れを感じたのは、他人にとっての10秒くらいの後だった。

 「あの、大丈夫ですか?」

 『星野様、ご無事でしょうか?』

 鶴木と携帯からの声が同時に星野の耳に届く。

 「ああ、もう大丈夫、あいつは生きている、それを知っただけで十分だ。」

 今、星野の精神は残念と喜びの二つの感情で刺激されている、桐崎がこの災難で死んでいなかったらのは残念だが、これで自分の手であいつに復讐できるのは喜ぶべきことだ。

 『それでは、私からこの世界で生存するマニュアルを説明いたします、後でメールの形でお送りしますので、忘れてしまうご心配は無用です、それでは——ようこそ、コロシアムへ!』

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