第3話 絶体絶命
俺は
ちなみにオリジナルの三宅一色は、謎の宇宙人――今目の前にいる連中から逃げるために、誤って宇宙船の自爆ボタンを押してしまい、爆死。
「受け入れ
キャプテンはそう言いながら、横目でチャッピーに合図を送る。
ガチャンとした金属が動く音が聞こえ、締め付けられていた手足の感覚が楽になった。
どうやら拘束を解いてくれたらしい。
俺は恐る恐る上体を起こしながら、彼女に尋ねた。
「どういうことだ?」
「君を拘束する必要は無くなった」
彼女はそう言うが、こちらとしては疑心暗鬼にならざるをえない。
相手は俺を口封じのために殺そうとしてきた連中だ。それに俺はこの船を爆破した前科もあるのに、あっさり開放するのは妙だ。
「警戒する必要はないよ。今から説明するから、そのまま腰を掛けてリラックスしたまえ」
「……そうか、分かった。説明してくれ」
敵意のようなものは感じられなかった。
俺は言われるまま、ベットの外に足を出して着座の形を取る。
キャプテンは咳払いを一度交えてから、語り始めた。
「順を追って説明しよう。あの時船は君によって破壊された。僕たちは脱出できたが、脱出用の小型船では広大な宇宙で旅をすることは不可能だ。ならば我々の宇宙船をこの地球で一から作るしかない」
「設計図は私の頭に、素材は地球にあるもので代用できますので」
チャッピーが補足を入れる。
「先ほど言った一年というのは、地球で秘密裏に宇宙船を作るのにかかった時間だよ。地球は中途半端に科学が発展していて厄介でね。目立つリスクを避ける必要があったから、想定よりも時間が掛かってしまった」
「手っ取り早く地球を征服しても良かったのですが、現代の地球の人口・科学力を考慮すると、我々が負ける可能性がありましたので自重しました」
さらっと怖いことを言うチャッピー。
「ちなみに一年は盛り過ぎです。三ヶ月ほどで宇宙船は完成しました。残り九ヶ月はキャプテンが地球を堪能してい「ゴホン!」すので」
咳払いで誤魔化したキャプテンは顔を赤くしていた。
ちょっと可愛いな、こいつ。
「まぁーとにかくだ。宇宙船は無事完成し、君もこうして生き返って元通り。あとはケジメをつけるだけだ」
「ケジメって?」
「金だよ金。君が破壊した宇宙船だよ。チャッピー、いくらだ?」
「地球のレート、日本円で23億5789万7562円です」
「はぁ? 23億ぅうううう?」
俺はベットの上で叫びながらのけ反った。
まさかそれを弁償させるために俺を生き返らせたってことか? 馬鹿げている、狂っている。
「元はと言えば、そっちが悪いだろ。勝手に拉致して、証拠隠滅で殺すとか言って、自爆ボタン……いや、そもそもなんでそんな大事なボタンがそんなとこにあったんだよ。そっちの設計ミスだろ」
「やれやれ、聞き分けの悪い男だ」
「ふざけんな! 俺はそんなもん払わない……って言うか払えるわけないだろ、そんな大金。俺は帰るぞ」
「ははは、帰るって地球にかい? ここは宇宙船の中。君は今どこにいるか分かっているのか?」
宇宙の中だと言うのはだいたい予想が付く。前回もそうだったからな。
だからなんだと言うんだ。外道相手に手段は選ばない。
俺はすっと立ち上がって、キャプテン目掛けて飛び込む。
狙いは一点――彼女の膝には電動銃のようなものをベルトで固定している。それをさっと奪い取り、そのまま彼女の額に標準を当てた。
「動くな!」
「ふふ、その銃の使い方は、分かるのかい?」
人質になったキャプテンは鼻で笑い、警戒することなく俺に近づく。
確かに彼女の言う通り、銃なんて映画で見た程度の知識しかない。そもそも地球のものとは勝手が違うだろう。
……万事休すか。
「ヒイロ様、奥から二つ目のボタンを1秒以上長押しです。ロックが解除されます」
「そうなのか? あ、ほんとだ。起動した」
俺はそのまま標準をキャプテンの額に合わせる。
「おいチャッピー、何故彼に教えたんだ!」
「ヒイロ様が困ってそうだったので」
「そのせいで主人が困ってるんだけど?」
馬鹿なのかこいつらは。
……まぁ、とにかく形勢逆転。こんなふざけた連中とはおさらばだ。
「なにっ、じ、銃が……」
と思っていたのも束の間、握っていた銃が突然シャットダウン。
慌てて引き金を引くが、カチカチと音を立てるだけで何も起こらない。
「今度はキャプテンがお困りでしたので、ヒイロ様の電動銃を強制シャットダウンさせました」
「よし、良くやったぞ。チャッピー」
「くそ、なんだこの茶番は!」
俺は銃を床に叩きつけた。
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