第6話 二人の関係性
「意味が分からな過ぎて頭がショートしそう……」
優香はカレーライスを頬張りながらそんなことを口にした。
正直、優香の気持ちもわかる。誰だって、異世界から来ましたと言われて、「異世界から来たんだ。よろしくね」とはならないだろう。
「優香がその反応になるのも無理はないな」
「そりゃ、そうでしょ」
「一応、信じてくれたんだろ?」
「一応、ね。二人の表情が嘘をついているようには見えなかったし」
「ありがとな」
不満そうな表情をしながらも、信じてくれるところが、やっぱり優香って良いやつだよなぁ。
俺はそんなことを考えながら優香がカレーライスを食べ終わるのを待った。
「ごちそうさまでした」
カレーライスを食べ終わった優香はなぜか俺とティナの方をずっと見ている。
「な、なに?」
「いや、二人が初めて会ったのは今朝よね?」
「そうだけど、それがどうかした?」
「いやー、なんというか、その……」
「……?」
「距離近くない?」
優香が俺たちの方を見ていたのは、俺たちは今日が初対面のはずなのに距離が近いからのようだ。
俺とティナはここに来るときも手を繋ぎながら来たし、今もお互い笑顔を向けあいながら話していたりしたので、優香は不思議に感じたようだ。
俺から話すより、ティナから話してもらった方が色々と納得してもらいやすそうな気がする。
そう考えた俺は、ティナに向かって懇願するように顔の前で両手を合わせる。
「ん? ……いただきます?」
そうじゃなーーーーーーい!!!
ティナは俺がお願いする仕草を「いただきます」の仕草と勘違いしたようだった。
俺は仕方なく、ティナに顔を近づけ、優香にこの距離感の理由等を教えてあげるよう小声でお願いした。
それに対し、ティナは「はい、わかりました」と、天使のような可愛らしい笑顔を向けながら答えた。
「えーっとですね、私と璃空の距離感が近いように見えましたか?」
「うん、今も璃空のこと呼び捨てで呼んでるし」
「えへへ、そう見えたなら嬉しいです」
「嬉しい?」
ティナは俺との距離感が近いと言われ、顔を赤くしながら喜んでいるようだ。
そんな姿をみてしまったら俺の顔まで赤くなってしまいそうになる。
「私、今日が璃空との初対面なんですけど、このショッピングモールに来る前に好きになってしまったと告白したんです」
「こ、こ、こ、告白ぅ!?!?!?」
優香は驚きのあまり、椅子から落ちそうになっていた。
ティナが照れながら伝えたこともあって、優香はティナの言葉を一切疑っておらず、信じてくれているようだ。
「璃空の優しさとカッコよさに惚れてしまいまして……」
ティナは俺の優しさとカッコよさに惚れたと言ったが、俺にカッコよさなどあるのだろうかと疑問に思ってしまう。が、これからもそう思ってもらえるように努力しようと決心した。
最初は驚き慌てふためいている様子の優香だったが、徐々に落ち着きを取り戻していった。
「それで、璃空はその告白にOKしたの?」
「いや、まだ……」
「はあ!? こんなに可愛いのにOKしてないの?」
「もちろん出来るだけ早めに答えを伝えるつもりだけど、即返事したら軽い男だと思われるんじゃないかと思って……」
「そういうことね。璃空らしい、のかな」
ティナには俺が軽い男とは思ってほしくない。
だから、告白されたときに即答えを返さなかった。
優香は突然、立ち上がり、俺のそばまで寄ってきて耳元で囁く。
「早めに返事してあげなよ? そうしないと、取られちゃうよ。できれば、今日にしな」
そう言って、俺にウィンクをした。
「それじゃ、私は帰るね。二人とも何かあったらすぐに私に頼っていいからね」
優香は自分のカレーライスの皿を片付けてから帰っていった。
「ティナ、俺たちも帰ろうか」
「そうですね」
「今日は楽しめた?」
「はいっ! もちろんです! 今まで見たことのない服だったり、食べたことのない料理も食べさせてもらえて大満足です!」
「それは良かった」
俺は満足そうな表情のティナと再び手を繋ぎ帰路についた。
俺の頭の中では、優香の言葉がずっと残っていた。
できれば今日返事を返せ、と優香は言っていた。女子の気持ちは、俺よりも優香の方が分かっているはずだ。
だから、優香の言う通り今日中に返事を返した方が良いのかな。
そんなことを考えながら歩いているうちに、気が付けばもう家に着いていた。
「着いたね」
「はい、そうですね。今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
「それは良かった。疲れたでしょ? ソファで
「ありがとうございます」
俺はティナがソファで休んでいる間に、一人で考える。
言うなら今、なのか?
今日一緒にショッピングモールへ行って、服をみたり、カレーを食べたり。
とても充実していたと思う。
今まで何度もショッピングモールには行ってきたが、確実にこれまでで一番楽しかった。
俺は、チラッとソファで寛いでいるティナを見る。
その瞬間、俺は無意識に「ああ、好きだな」と口に出していた。
そこで気づいた。
やっぱり、俺の気持ちもティナと同じものだ。
「よし、言おう!」
俺は覚悟を決め、ティナのいる部屋に入る。
だが、俺が部屋に足を踏み入れるのとほぼ同時に、その部屋の中心にあれが現れた。
「魔法陣だ……」
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