25mと50mプールと…

.。o○


 その後、2人は25mプールで泳ぎ始める。こういうところでは、ちゃんと泳げるかを確認したかった。

 まずは、のとおりと言うべきか、4泳法でターンも決めて合計50mを泳ぎきれている。瑠璃はスタートとゴールで待っていた。

 時には、瑠璃は潜って翠夢を待っていた。本気の表情は、割と珍しく、2人だけが知っている。

「習っていた時代があったからな。焦らなければ別に問題なく泳ぎ切れる」


 その次は瑠璃。一応、ちゃんと泳げた。久々ではあったが、しっかりと25m泳ぎ切れることを確認。水着も水泳向けでないこと以外問題なし。一応、2人共ゴーグルなしの裸眼で泳ぎ切れることも確認した。瑠璃はあまり慣れていなかったからか、苦労しつつ泳ぎきる。

「ぷはっ、はあはぁ」

「無理はしないでくれ」

「…でも、ちょっと遊んでみたいプールがあるんです」

「言っていたな。そこには別に頑張らなくても遊ぶだけならいけるんじゃないか」

「そのプールで泳ぐ…というか潜るにはちょっとしたテストを受けないといけないのです。そのためのテストとしてここで泳ぎたかったです。ありがとう。次は50mですね」


 2人は、この後本命のプールで泳ぐため、そのテストとして50mプールで泳いで確かめることを考えたのだが…そこで瑠璃が思いついた。


「あっ…」

「どうした?」

「手を引っ張ってもらえば良かったよ」

「んー、たまに漫画である、女の子が泳げないからその練習をするというものか?」

「そうです。それをやってもらえば良かったなって」

「遊ぶためのプールであれば、出来ないことはないけど、今からやるか?」

「ええっ?」


 この提案を受け、瑠璃は翠夢に手を引っ張ってもらいながら泳ぐ。翠夢が手を引っ張り、瑠璃は手を引っ張られてバタ足で泳ぐ。浮く感覚を覚える感じなのだが、本来自分でやらないといけないので引っ張る形ではうまくいかないのではないのかと、翠夢は思う。


 どちらも泳げる状態では、あまり良い展開にはならなかった。ここでできそうなこととすれば、水中開眼くらいだが、それも既に練習して一応出来る状態になってしまった。2人はタイミングを間違えたようだった。


 瑠璃の頬を見ても特に色が普通のまま。仕方ないので、ちょっと恥ずかしいが、翠夢は手を一気に引っ張ることにした…


「うわぁっ!」

 瑠璃は、誰から見ても、驚いた声を出した。おとなしそうで清楚な声。手を引っ張られた結果、翠夢の上に乗るような感じになってしまった。2人は顔が水中へ…

「んっ…んんっ、ああ…(ごめんなさい!)」

 翠夢は上に乗られるような状態になってしまったが、慌てずに瑠璃がバランスを取り戻すのを待った。吐き出す泡が水中に交じっていく。2人の現在の感情を表すかのようだった。


 何とか2人は体勢を立て直した。

「あの、大丈夫ですか!?」

「すまない、無理に引っ張ったから」

「水中で仰向けでしたよね?それで…」

「いや、大丈夫だ。息を出していれば水は入らない。一応瑠璃は問題なさそうだな。もう手を引っ張るのはいいか?」

「ありがとうございます。もうこの遊びはやめて、本題の50mプールに行きましょう!」


.。o○


 2人は気を取り直し、50mのプールに向かうため、一度プールサイドに出たのだが、そこで瑠璃がバランスを崩した。

「わっ…」

「おっと。」


 歩いているところでうっかり転びかけるも、なんとか支える。しかし、支えるということは身体に触れることになる。露出を抑えているとはいえ水着だ。2人とも変な気を起こしかねなかった。

「急に触ってごめん。急ぐのはわかるけど、もう少し落ち着いて。下手にプールに落ちると助けるのが大変だ」

「はい!気にしてないですよ。あなたであったら…別に…」

「はい?」

「いきましょう!」


 瑠璃の水着の構造は、支えたときにわかった。見てもわかりにくいが、下にも別の水着があるようだ。


 この後、後にやりたいことに備えて、どれくらい水中で泳げるか、無理しなくてもいい方法を確認する。そのため、50mのプールを息継ぎせずにどこまで泳げるかに挑戦した。また、自分の限界も確かめるためでもあった。


 瑠璃は何とか25mを泳ぐことが出来た。翠夢は泳ぎに慣れているからか、40mまで行くことが出来た。

「惜しいな。瑠璃は25mプールなら息継ぎなしで泳ぎ切れるな。今まで見たことは水泳をしている人以外にはいなかった」

「はい、潜水だけであればできるように子供の頃から練習していました。ある意味、一番落ち着くと思いますね」

「落ち着くというのはわかる気がする」


試しの泳ぎを行った後、一度プールサイドで休み、その後に瑠璃が泳いでみたいと言っていたプールへ向かった。


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