プールでの、2人の距離
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翠夢と瑠璃は、更衣室で着替えた。流石に別の部屋ではあるが、いろいろな準備で瑠璃が遅くなるのは確実だった。また、一応それなりに泳がないといけない。
時間がかかると思っていたので、翠夢は先にプールの様子を見ておいた。種類は結構あるが人はまばらで、やはり時期から外れているんだなと思っていた。
瑠璃は、更衣室での準備を終え、恥ずかしがりつつも、更衣室から出る。
「ごめんなさい…どうでしょうか」
「ああー。似合っているぞ」
「ああ、良かったです。かっこ悪いとか言われるかも知れないと思ってた」
「自分の彼女だから、あまり他の人に見せてほしくなかったとは思ったけど、ちゃんと可愛い物で良かった。それと清楚さを合わせた、瑠璃らしい水着だと思うぞ」
瑠璃は嬉しかったのか、繋いでいた手を恋人繋ぎに変えた。他愛のない話をしつつ、25mの基本的なプールについた。
瑠璃は眼鏡を掛けている。当然、水にぬれたりなくなってしまうと周辺が見えなくなってしまうので、一旦外さざるを得ない。ただ、こういう所でも、プールに入らない時は眼鏡を掛けており、付き合いたての頃に似合っていると言われたのが嬉しいようだ。
眼鏡は残念ながら外さざるを得なくなるが、瑠璃は今回のために持ってきたものがあった。度付きゴーグルである。
入水した際、瑠璃にとっては少し恐怖心があったが、すぐに足がついた。瑠璃の身長では少し深いかもしれないが、普通に立てるので問題なさそうだ。
その後、瑠璃はちょっとした話をしだした。
「あの…眼鏡を外してもいいでしょうか?」
「駄目…といいたいが、泳ぐのに邪魔だから…仕方ないか?掛けていてほしいのはやまやまだが」
「あ…それなんですけど、度付きのゴーグルがありまして、いまロッカーにあります。それを使ってもいいでしょうか」
「…そうだな、それなら、まあ形容範囲か。眼鏡を失くしたり割ったら危ないからな。度付きなら、陸上で掛けていれば見えるか?」
「一応、見えます。ゴーグル、水中眼鏡を外すのは、曇ったときくらいですね」
「そうだな。持ってくるといい。俺も一応そういうのを持ってくる」
「はい!」
2人は、一度プールから出て、水泳で扱うゴーグルを持ってくることにした。数分後、先に翠夢が出てくる。視界の確認を行うが、特に問題ないようだ。
さらに、数分後、瑠璃は水着と同じ色の度付きゴーグルを掛けたまま出てきた。瑠璃は、眼鏡あり、眼鏡なしなど、眼鏡の存在などで雰囲気が一変する。
眼鏡のときは、ちょっとおとなしめに見え、清楚な印象を与えたが、度付きゴーグルでは目が見えにくくなる。はわわ系といえる印象は鳴りを潜め、クールな感じになる。ゴーグルを外すと、特別美人とは言えない、個性が薄めになる。よく眼鏡でわからないようにする方法があるが、瑠璃は眼鏡なしの姿がそれに相当し、場合によってはそれで乗り越えたときもあった。
「まずは水に慣れていこう」
「はい!」
まずは水に慣れるため、歩き、浮き、潜水などの水慣れを2人でこなしていく。その後、
「翠夢さん。水中でキスしたい」
「いいけど、それなら水中で動くことに慣れない
と。息も止められる時間を知りたいし」
水中で動くことに慣れることに納得した瑠璃。
その後、息を整えて向かい合い、手を繋ぐ。一緒に水中に潜った。翠夢は表情を変えていないが、瑠璃は水中でも頬を上げている。手を繋いでいるのが嬉しいのと、同時に安心感がある。
水中ではしゃがむだけだったが、浮力の影響で耐えられず、体重の軽い瑠璃は浮いてしまった。それに追従して翠夢も浮く。
「うん、この調子なら大丈夫そうだな」
「よろしくお願いします」
そして、2人は一度水面でキスするような体勢を整えた。その状態で息を整え、同じタイミングで潜る。ゴーグルが触れ合ってしまわないようにしていた。
水中でのキスは身体が触れ合うが、普通でするよりも、水のおかげか感触が柔らかく、かなり落ち着く。ハグも同様だが、こちらは水着同士ということもあり、さらに感触が変わる。
長い水中キスで、瑠璃が苦しくなり、息を吐き出し始める。ゴーグル越しに見える目は苦しそうに閉じており、唇にも力が入り始める。
「んんっ(こぽぽん)」
「(流石に限界だな)」
「はぁ、はぁ、けほっけほっ」
長くキスしたいがために、瑠璃は無理をしてしまったようだった。
今度は、ゴーグル無しで一緒に潜ろうとするのだが、瑠璃側が拒否していた。
「ごめんなさい、どうしても…目が開けられなくて。目に何か入れるのも本当に駄目で」
「…そうか。なら、諦める…いや、練習しておくか」
翠夢は眼鏡をかけた瑠璃が好きなタイプだ。ゴーグルを眼鏡として見ることも出来ないこともない。
だが、いくら眼鏡の瑠璃がが好きだからといって、水中で目が開けられないのは流石にまずい。そこで、ちゃんと目が開けられるように、瑠璃を手伝うことにした。
「慣れないうちは目が痛いと思うけど、問題ないから。後、吐いた息が目に当たった時の感触も慣れないと。ぼやけるのも」
「本当に怖いけど、翠夢さんと一緒に手を繋ぐことで頑張れそう」
「落ち着いて。俺も同じ条件で潜るから」
瑠璃は、水中で目を恐る恐る開ける。
その目に映ったのは、ぼやけていて判別できない状態の翠夢であった。息を止め続けられず、鼻や口から息を吐く時も目を開けていた。
ゴーグルさえあれば、問題なく泳げるが、無いと慌てて泳げなくなる。水中の雰囲気が怖いから開けられない。今はそれを翠夢が抑えてくれる。手を繋いでくれている、瑠璃の事を理解してくれている人が。
ぼやけているとはいえ、一応何があるか程度であれば見える。それを瑠璃は考えたのだが…長く潜っていたからか、好きな人の事を考えたからか、苦しく…
「ぷはぁ、はあ、はあ」
「ちゃんと目を開けられたな。これなら無くなった時も大丈夫だ」
「ああ…ありがとうございます。ですが、はっきり見えていた方が気分がいいのでゴーグルに戻りますね」
「そうだな。俺もそうしよう」
もとの姿に戻った。この姿の瑠璃は清楚さが出ていて可愛い。ずっと顔を見ていたことを思い出してしまった…翠夢も、少し顔を赤くしているようだ。
「んっ…うまくできるようになったお礼をしないと」
「どうしたんだ。顔が赤いようだが…別に熱はないようだな」
「お礼。ここでするなら、うーん…」
2人は、とりあえず顔を水面に出し、その状態でハグをした。見つからないように。
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