第102話 国策
興奮冷めやらぬ女性陣の反応と、その場に招かれたお披露目会に参加した者たちからの肯定的なフィードバックに触れ、国王はある決断を下した。
それは、ヴィーナスシリーズを国家プロジェクトとし、国策にするというものだ。
国王はこの美容革命が国の威信を高め、さらには国民の幸福にも貢献すると確信していた。
后がどこからともなく聞きつけた噂により調査させたところ、どうやらスタンピードからアステールの町を救った者と、噂の美容品の開発者が同1人物と知り、その真実を確かめたくなった。
しかも友の息子、一度婚約破棄された子爵家の令嬢との再婚約、ハズレと言われるギフトを授かっていると・・・興味をそそられる背景を持っていた。
また、その者の兄は騎士見習いであり、儀典時の己の背後勤め最終候補に残っている。
是が非でも会ってみたいと思った。
中々顔を出しに来ない友人、王権を振り回して呼び付けるのが嫌で呼んでいなかったが、さてどうする?
そうだ、兄の叙爵だ!書類を見たところ中々良い騎士だから、この際長兄を騎士爵にし、友人をその叙爵の式典に呼べば王権を振り回すのではなく、騎士団から招待された体を取れる。
そしてその問題の息子は功績により男爵にすれば良い。いくつか取り潰した男爵があるから、空席がある。
これで奴の驚く顔が見れる。
そうそう、問題のロイという少年はただただ呼び付けよう!ヴィーナスシリーズを持ってこいとすれば、化粧品が目に止まったから、それで呼ばれたと思うだろう。まさか家族が待っているとは思うまい。よしよし、俺って頭良くないか?
そんな感じで王は関係者に中途半端な情報しか与えず、驚く顔を堪能していた。
だが、后たちからは怒られあまつさえ皆の前で正座を・・・
しかし、皆が唖然とする姿を見れたからプラマイゼロだ!
そんなふうにニタニタしていたが、流石にそろそろ王として后たちにビシッとしたところを見せないと夜が大変だ!このままだと暫く触れさせてくれなくなる危険がある。
そこで立ち上がると、咳払いをしてから話し始めたが、正座させられた後なので締まらない。
「我が国の未来のため、そして国民の幸福のために、このヴィーナスシリーズを国策として推し進める。」
国王は堂々と宣言した。
「ロイ、貴殿と家族にはこのプロジェクトの中心となって協力してもらう。」
ロイとその家族はこの突然の命に驚きつつも、国王からの信頼に深く感謝した。しかし、ロイは一つの懸念を口にした。
「では、父の治める村のことはどうなるのでしょうか?村の管理や日々の業務は・・・」
国王は穏やかに微笑みながら答えた。
「村のことは心配無用だ。別の信頼できる者たちに任せることができる。しかし、ヴィーナスシリーズの製造方法は非常に重要な秘密だ。この情報を守るためには、信頼の置ける者のみを新たに加えるべきだ。」
ロイの家族は国王の言葉に安堵し、同時に重大な責任を感じた。
先程からの人を食ったようなおふざけな様子から一変し、至極真っ当なことを述べていた。
ロイとその家族はヴィーナスシリーズの製造販売において中心的な役割を担うことになる。国王の決断により、ロイの家族は国策プロジェクトの重要な一員となり、国の未来を左右する大きな役割を果たすことになったのだ。
こうして、ヴィーナスシリーズは国家プロジェクトとしての新たなスタートを切り、ロイとその家族はこれまで以上に大きな責任を背負って前進することになった。一方で、彼らは国王の信頼と支援を受け、国全体を巻き込んで美の革命を推し進めることに興奮と期待を感じていた。また、これはリックガントが夜の帝王と呼ばれるカウントダウンの始まりでもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます