第97話 旅程

 旅の第1日目、ロイたち一行は直前になり領主と合流し、王都への道を進み始めた。

 彼らの馬車隊は、領主の豪華な馬車と、商店の貴重な商品を積んだ荷馬車(ように見える)、乗用馬車で構成されていた。 


 10人の騎士たちが冒険者風の格好で場所を取り込み、護衛隊を形成している。

 ロイはこういった旅に慣れていないので不思議に思うが、どう見ても絶好のカモだよなと感じていた。


 招請の期日には余裕があり、彼らはゆっくりとしたペースで進んだ。

 朝露が輝く草原を抜け、昼には道端の木陰で休憩を取る。馬に飼い葉や水を与えて休ませるためだ。

 今は無理をさせるときではない。


 夜には宿屋で一泊するという、普通の旅の日々が続く予定だ。

 宿は予め先行した騎士や兵士が確保しており、快適な旅となる。

 もっともこの時代の馬車の揺れや突き上げは体に疲労を蓄積する。

 それでもソニアの収納には野営の道具、特にテントや寝具が入っているので、万が一宿が埋まっていても安心だ。

 因みにロイは領主に気に入られ同じ馬車だ。

 元々領主は夫婦揃って街の外に出かけることはない。

 これは奥方様が領主不在時に領主代理となるからだ。


 長男は王都にて騎士として勤めており、領主に万が一のことが起これば引き戻され、領主の座を引き継ぐ。


 そうそう、今回何故かリラもいる。

 ギルドマスターにロイが王都に行くと伝えると、ギルドからの書状をリラに持たせ、同行することになった。

 ただ、リラは領主が来ることを知っており、ロイたちは護衛依頼を指定の形で受けさせられた。


 第2日目、彼らは小さな村を通り過ぎ、村人たちと交流を持ちながら、地元の食材を仕入れた。

 商人として取引のために王都に向かっていることにしているからだ。夜はもう少しで町になる規模の村に泊まることとなり、広場で火を囲み共に食事を楽しんだ。


 第3日目、森の中を進むと突然の雨に見舞われた。雨宿りをするために近くの洞窟に避難し、そこで暖を取りながら雨が止むのを待った。

 仕方がないので、この日は見張りを立て、この洞窟で1夜を過ごした。


 第4日目、天気も回復し一行は再び旅を続けた。


 ロイたちの車隊は森の縁を進んでいた。

 一行の馬蹄の音と、車輪の軋む音が静かな森に響き渡る。

 午後の陽が傾きかけた頃、突然不穏な空気が一行を包み込んだ。馬たちが鼻を鳴らし、護衛騎士たちの手が剣の柄に伸びた。


「何者かが近づいています!」


 騎士の声が鋭く一行に警告を発した。


 瞬く間に、森から盗賊たちが飛び出してきた。彼らは粗野な笑い声を上げながら、車隊に向かって突進してきた。数は20を超え、手には剣や斧、槍を持っていた。


「護衛隊、陣形を!」


 領主の護衛隊長が叫び、騎士たちは迅速に馬車を囲む陣形を作った。ロイもまた馬車から降りて剣を抜き、戦闘の準備を整えた。


 盗賊たちが襲い掛かる中、ミランダは弓を構えると次々と矢を放った。矢は風を切り、1人の盗賊の肩を射抜くと、その盗賊は悲鳴を上げて倒れた。


 ソニアとエリナは魔法の呪文を唱え、手から火の玉と氷の矢を盗賊たちの群れに向けて放った。火と氷の魔法は盗賊たちの間に落ち、爆発とともに数人を吹き飛ばした。


 ロイは剣を振るい、騎士と並び最前線で盗賊たちと対峙した。彼の剣は光を放ち、盗賊たちの攻撃を次々と受け流し、反撃に転じた。1人、また1人と盗賊たちが倒れて行く。


 ベリーズは盾を構え、領主の乗る馬車の側で大盾を構えて守りながら、敵の隙をついて攻撃した。彼の盾は盗賊たちの剣を跳ね返し、その隙に剣で反撃した。


 戦いは数分間続いたが、ロイたちの勇敢な戦いと、領主の護衛騎士たちの組織的な防御により、盗賊たちは次々と倒され残りは逃げ出した。


「これで終わりではない。彼らのアジトを見つけ出し、この地から一掃するのだ」


 ロイは領主の言葉に決意を新たにし、一行は盗賊たちのアジトを探し出すために、後をつけた。

 逃げられたのではない。

 領主の指示により、護衛隊はわざと逃がすことにしていた。


 そして、夜が訪れる前に盗賊たちの隠れ家を見つけ出し、そこを襲撃した。大した抵抗もなく、盗賊たちを討伐し脅威を永遠に取り除いた。


 アジトには大した物はなく、拍子抜けするも討伐は無事に終えた。

 流石に訓練を受けた騎士だけあり、怪我人が3人のみで、死亡者はゼロだった。


 治療が終わるとロイたちは再び進み出した。


 第5日目、盗賊たちの襲撃から1夜明け、一行は王都への道を急いだ。

 王都の壮大な城壁が見え始めると、彼らの心は興奮で満たされた。王都への長い旅は、予想以上の出来事や発見をもたらし、彼らの絆をさらに深めた。そしてついに、王都の門をくぐり、彼らの新たな冒険が始まるのであった。

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