第三章 事業発展編

第91話 報告

 ロイがアルティスに戻った時、体力はまだ完全に戻っていなかった。旅路は順調ではあったものの、随行員は大幅に減少してしまっていた。


 しかし、亡くなった兵士の家族への補償金は、ソニアが収納に入れてしっかりと管理していたため、町に戻るとすぐに領主の屋敷でお金を引き渡し、今回の任務が全て終了したことを告げられた。


 ロイは奥様からその事を聞かされ、この護衛任務のために集めていた補償金を渡し、任務を終え胸をなでおろした。

 随行員は3割ほど亡くなったが、少なくとも自分の仲間は全員無事だ。


 その後、ロイはベリーズをちらりと見て頷くと、ベリーズはその場から離れ恋人であるコナリスに逢う為に向かった。


 ベリーズ以外の面々はギルドに向かったが、ギルドに着くと、ロイの姿を認識したリラが涙を流しながら彼に抱きついてきた。ロイはリラが何故泣いているのかをすぐに理解した。


 それは、彼が無事に帰って来たことへの安堵と、旅の間に遭遇した数々の危険から生還したことへの感謝の涙だった。


 その騒ぎを聞きつけたギルドマスターが現れ、ロイは報告をすることになった。


 彼の話は、旅路の困難、戦い、そして勝利の瞬間までを包み隠さずに語った。



 そして、リックガントのもとへ報告に行くと、リックガントは珍しく興奮していた。報告を終えると、ロイはリックガントのもとへと向かった。リックガントはリラの父であり、彼の興奮した様子は珍しいものだった。ロイが報告を始めると、リックガントは目を輝かせて言った。


「驚くなよ、ロイ。あのスライムの実験、成功したんだ。」


 ロイは驚きを隠せなかった。元々、焼けた建物の中から1体だけ無事なスライムが発見され、そのスライムがお肌のシミ取り効果があることがわかった。それを再現する実験をリックガントは進めていたのだ。


「本当なんですか?それは素晴らしいニュースだ。」ロイは感嘆の声を上げた。


 リックガントは得意げに頷き、続けた。


「そうだ、このスライムを使った製品が市場に出れば、大きな利益をもたらすだろう。そして、町の発展にも大いに役立つはずだ。」


 ロイはリックガントの報告に心を躍らせながらも、リックガントの話が中途半端だなと思う。


 リックガントは深く頭を下げ、感謝の意を表した。


「ロイ、お前は本当に立派だ。この町にとって、お前は英雄だよ。たとえ他の町のこととはいえ、この町の者が多くの命を救った英雄と呼ばれてたんだからな」


 ロイは静かに微笑んだ。まだ魔力枯渇の影響から疲れていたが、精神は決して折れることはなかった。これからの彼の物語は、まだまだ続いていくのであった。


 ロイの旅は終わりを迎え、彼は再びアルティスの日常へと戻ってきたが、この新たな発見により、彼のこれからの活動にも新たな展開が待ち受けていることを予感させた。


 リックガントはロイを見送った後、あのことを話すの忘れたなと思うも、発見したコナリスの口から聞かされる方が良いかなと、これからのことに思案を巡らせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る