第92話 進捗報告

 町に戻った一行は、その日は軽く帰還の挨拶のみをし、早々に休んだ。


 そして翌日、リックガント商店の広々とした会議室には、主要メンバーが一堂に会していた。

 正確には元サイラー商店の一部でだ。

 壁に掛けられた絵画や豪華な家具が、部屋の重厚な雰囲気を一層際立たせている。


 成金趣味全開の下品な調度品だ。リックガントもコナリスもその辺りは無沈着で、邪魔なら部屋の隅に押しやっていた。


 ロイは売れるものだからと、手荒には扱わないでと言ってある。

 ただ、貴族を相手にするには、多少の調度品が必要だ。わざわざ買うことまでもないので、下品な調度品を上品に見せるのがロイの腕の見せ所だが、目下のところ先送りしていた。


 そしてその部屋は会議室兼休憩室になっている。


 コナリスが前に立ち、開発状況についての報告を始めた。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございますぅ!皆さん無事で何よりですうぅ!今日はぁ、私たちの研究チームが最近発見したぁ、驚くべき新製品についてお話ししますです!」


 彼女は一枚の図面を指し示しながら続けた。


「まず、先日焼け跡から発見された染み抜き効果があったスライムですがぁ!再現できましたですぅ!パチパチパチ!どうするかといぅとぉ、固体状のスライムを低温でじっくりと焼き上げることで、ペースト状に変化しますですぅ!。このペーストは、お肌の頑固なシミを簡単に取り除くことができるのですぅ!」


 会議室には再現できたことに対し、賛美の声が上がった。コナリスは満足げに微笑み、次のスライドに移った。

 スライドと言えば格好良いが、ベリーズが紙芝居よろしく、色々なことが書かれた木の板を裏返したり、壁に持たれかけさせている板と入れ替える力技だ。


「そして、次に発見したのわぁ、保湿効果とマッサージに効果のあるローションですです。液体状のスライムを高温で焼き上げるとぉ、透明でドロッとした液体になりますぅ。このローションは、お肌に潤いを与え、リラックス効果も期待できるのです。マッサージをする時に塗るとぉ、ものすごくぅすべすべになりますう!」


 コナリスが皆にサンプルを配り、ロイも実際に手に塗りその効果に驚いた。


 一同は興味深げにコナリスの話に耳を傾けているが、何故かコナリスはベリーズを見て顔を赤らめた。


「さらに、現在開発中の製品がありますぅ。液体状のスライムを低温でじっくり焼き焼きするとぉ、ローションと液状の中間の粘度になりますですぅ。これを髪に付けるとぉ、驚くほどのツヤツヤ効果がありますです!つまり、トリートメント効果があるのですう!」


 会議室は期待でざわめいた。コナリスは最後のスライドに指を向けた。


「そして、最も興味深いのがぁ!魔石を封入した液状のスライムですう。これを焼くと白濁液になるのですがぁ、効果はまだ不明ですぅ。これから検証を進める予定ですがぁ、期待の星と言えるのですぅ」


 リックガントが立ち上がり、会議室に集まった全員に向けて宣言した。


「皆さん、私たちの研究はまだ始まったばかりです。これらの製品が市場に出れば、私たちの町はさらに栄えることでしょう。そして、私たちはこれらの発見を通じて、多くの人々の生活を豊かにすることができるのです」


 会議室は拍手と歓声で満ち溢れた。ロイは微笑みながら、これからの可能性に心を躍らせていた。彼らの冒険は、新たな発見とともに、まだまだ続いていくのであった。

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