第14話 王家の斜陽 王太子視点

「もう、なんなの⁉︎私はヒロインなのよ‼︎なんでこんなところに押し込められなきゃいけないの⁉︎」


リコの高い声が頭に響き、思わず顔を顰める。


俺とリコ、父上と母上が住んでいる帝国の人間が用意した家は、平民の中でも最下層の人間が住むような、ぼろ家だった。

隙間風は吹き込むわ、雨漏りはするわで最悪だ。


平民になるときにリコと結婚させられたが、リコは俺に文句を言ってばかりいて、すごくイライラする。


家にいるとリコに文句を言われるので、勝手にこの家から出ようとすると、家の前に立っている帝国の兵士が剣を構えて

「許可が無いのに出ようとするのであれば斬るが、それでもいいか」

と脅してくるので、嫌でもここにいるしかない。


文句を言い続けるリコ、一日中頭を抱えながらブツブツと何かを呟き続ける父上、虚な目でどこかを見ていたかと思えば、ドレスや宝石を求めて歩き出す母上。


三人と鬱々とした気持ちで過ごすこと三日ほど。

今の俺は、碌な食事がない為、短期間でひどく痩せ、服を洗濯する方法がわからない為に汗や垢、シミなどの汚れが染み付いたシャツを着ている。


こんな事になったのも、全部クリスティーナのせいだ。


あいつが帝国との繋がりを隠さなければ俺もあんな扱いはしなかった。


あいつが俺の仕事を何も言わずにやっていなかったら、俺も自分の仕事がちゃんとできた。


そうだ、あいつが全て悪いんじゃないか。


俺がこんな思いする必要ない‼︎


そうだ、なんで俺はそんな簡単な事に気が付かなかったんだ?

今すぐ、俺の忠実な部下に無実を伝えなければ‼︎


「おい‼︎いたぞ‼︎」


「見つけた‼︎」


「な、なんなんだ⁉︎お前ら、誰だ⁉︎」


「やっときてくれたの?早く綺麗な宝石を見せてちょうだい‼︎」


「おい、早くこっちに来い‼︎」


「ぎ、ぎゃああああ‼︎助けてくれ‼︎金ならいくらでも払うからっ!」


「ふざけるな!お前みたいな奴に、俺の父さんは殺されたのか⁉︎」


「痛いわ⁉︎私は王妃なのよ‼︎早く私を助けなさい‼︎」


「貴女のせいよ‼︎あなたの嫌がらせのせいで、私の娘は自殺したの‼︎謝りなさいよ‼︎」


でも、俺はここから出られないからな……、どうしようか。


「起きろよ‼︎」


「きゃあ⁉︎なんなの?」


「うるさい、黙れ‼︎」


なんだ?なんだか騒がしい。


父上と母上の声が遠い。


遠くでリコの叫ぶ声がする……?


酒の飲み過ぎか、頭が痛い。

食材と共に置かれていた酒を飲んだのは失敗だったか?


ドンッ‼︎


「う、うわあああああ‼︎」


痛い痛い痛い痛い。なんだ?背中が焼けるように痛い。


「おまえの、おまえたちのせいだ‼︎おまえたちのせいで、ぼくのおとうさんはしんだんだ‼︎」


「私の夫を返して‼︎」


「俺の娘は、魔物に食われて死んだんだぞ‼︎」


「お、お祖父ちゃんが、食べ物が無くて死んじゃった。なんで助けてくれなかったの?」


「私達はこんなに苦しんだのに‼︎酒を飲むなんてずいぶんいい身分だな‼︎」


知らない……。


なんの話だ?

俺には関係ない。


痛い。何かが体から抜けていくみたいだ。


寒い。


ははうえ、ちちうえ、たすけて。



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