アルバイト先の先輩は、オーガの末裔

平木明日香

アルバイトスタッフ募集!

第1話


 …ふう。


 成人式を迎えた今年の1月。


 もう自分が二十歳なんだっていうことを考えると、なんだか虚しい気持ちになったりする。


 虚しいっていうか、何してんだろ…って感じかな?


 高校を卒業した頃は、まさか無職で成人を迎えるとは思わなかった。


 …つーか、この2年の間、転職を繰り返す羽目になるとは思わなかった。


 社会人生活なんて楽勝だ!って息巻いていた自分が懐かしい。


 あの頃は特に何も考えてなくて、卒業式の後にツレと一緒に海沿いを走ったっけ。


 取ったばかりの自動車免許を引っ提げ、オンボロの軽自動車を乗り回してた。


 これからどんな社会人生活が始まるんだろうって、それだけが楽しみでさ?



 今となっては、周りの同級生は順風満帆な大学生活を送っていたり、早い奴は結婚していたりもする。


 市内の大企業に就職して、順調なステップを踏んでいる奴も。



 …はあ



 考えれば考えるほどため息が出る。


 別に誰かと比べようって話じゃない。


 自分の人生は自分の人生だし、他人は他人だ。


 …ただ、どうしても変な気持ちになるっていうか、もどかしいっていうか…


 友達には恥ずかしくて、自分が今「無職」だって絶対に言えない。


 この前ちょっとした同窓会みたいなのがあって、仲の良かった連中と飲みに行ったんだ。


 まあ、案の定話せなかったよな…


 「市内のとある企業で働いてる」なんて、どの口が言ってんだろうって思う。


 そもそも、働いてすらいない。


 「ニート」なんだぜ?


 …そんなの、人前で話せるかっつーの。


 せめてアルバイトでもしてりゃ、フリーターに昇格できるんだが…

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