4ー4

PM 6:20 大通公園(ビアガーデン会場)


「「かんぱーい!!」」


 ジョッキを重ね合う音が、鳴り響く。キンキンの冷えたそれは、蒸し暑さが残る夜にはピッタリだった。

 豪快にビールを飲み干すセシリア。どうやら、酒が欲しかったみたいだ。


「いや〜! 無事に終わったわね!! 正直、ダメかと思ったわ!」


「無事に終わったじゃないですよ。始末書の処理にどんだけ時間がかかっと思ってますか!?」


「それに、キサラギさんまで呼んだからって、どんだけピッチャー頼んでるんですか?」


「いいじゃないそれは。あなたもそうでしょう? アル」


 セシリアは、話しながら、私の方に腕を置く。女同士でも、暑苦しいから勘弁してほしいものだ。


「別にいいが、酔い潰れるないでくれよ。そこまでは面倒見る気はない」


「ま〜たまた」っと言いながら、勝手に私のジョッキにビールを足すセシリア。配慮というものがないのか?

 だが、勢いあまり、泡が溢れ出してしまった。急いで拭いてると、美羽とリリィとイロハが、私たちの席に来たみたいだ。


「おぉ! やってるねぇ!! 僕らも混ぜてよ」


「遅いじゃないですか、議長。 もうやってましたよ!!」


 美生とアリスは、3人を席に案内する。すると、ジョッキが二つ追加された。


「僕は飲めないから、君らで嗜んでておくれ。それに、君が来てくれるなんてね」


「ここは私の街さ。せっかくの誘いを断るわけにはいかないだろ?」


 リリィは、オレンジジュースを飲みながら、私に話す。


「まぁ、そうだね。君がいなきゃ、今回の件は最小ですんだ訳だし。感謝してるよ」


「報酬はしかと受け取ったからいいよ。それで? いつこの国を出るんだい?」


「明日には出とうとは思ってますが、セシリアさんのあの様子では、難しそうですね」


 美羽は、セシリア達の方を見る。あんな様子では、帰るのは難しいの取ろうとは思うのは無理もないだろう。


「それで?『グリモワル真書』はどうだったの?」


 リリィは、私に『グリモワル真書』について、聞き出す。


「紛れもない本物だったよ。それを知らず、聖典なんて言ってんだ。馬鹿げた話さ」


「まぁ、奴らにとって、そう捉えたいんだろうさ。それが、敵対組織の開祖の書いた書籍と知ったら、それこそ終わりさ」


「『グリモワル真書』は、模造品でさえ国宝クラスの代物ですからね。それの本物を手にしていたと考えたら、この世の全てを手にしたと変わりませんから」


「そうさ。アレを手にしただけで、魔術世界にとっては富の全てを手にしたと言っていいだろう。だが、アレは一冊では真価を発揮しないさ。

『グリモワル真書』は、9冊揃ってこそその真価を発揮する。

 人間というのは馬鹿なものさ。9冊揃わんといけないものを、たかが一冊手にしただけで、この世の全てを手にしたと勘違いしやがる」


 そんな話をした後、私は、ビールを口に含む。ジョッキが開いた後に、ピッチャーに入れてあるビールを、ジョッキに注ぎ込む。

 その話を聞いた後、美羽は話を続ける。


「では、キサラギさんは何のためにそれをお集めになるにです?」


自分虹の魔女を知るためさ。奴が、何のために、いたのか。それを知るためかな?」


「相変わらず、その探究心は強いよね。まぁ僕も、それを知りたいから、君に協力してるんだしね」


 リリィは、オレンジジュースを飲みながら言う。


「それに、この街を君を置いたのは僕な訳だし。そのせいで、この街札幌はこう呼ばれてるんだよ」


 リリィの言葉に、その名称は何なのかはわかった。


 ――――――――【魔女が住まう街】


 巷では、この街をそう呼ぶものが多いだそうだ。迷惑な話はこの上ないのは確かだが、みんな他の魔術師が住み着かないようにはしている。

 汚職に近い事は確かだが、こうまでしないと、より面倒な事になるのだから。


「何4人で水臭いことしてるのよ!! 今日はパーっと飲みましょうよ!!」


 セシリアが、私たちに席に来る。すでに出来上がっていたようなので、やれやれと思いつつ私は付き合う事にした。



 ――――2時間後


 セシリア達は酔い潰れてしまい、その場から動こうとしない。当然である。あれ程の勢いでビールをたらふく飲むのだから。

 幸い、私とイロハとリリィは酔っていないが、他のメンツはもうダメみたいだ。

 

 

「それじゃ、あとは頼むね」


「はい。セシリアさんたちは後で連れて行きますので!」


 イロハにセシリア達を任し、私はあるところへと向かう。


「待ってたわ。今日も極上の酒を用意したわ」


仮面の魔女ジャンヌ』が、出向いてくれた。どうやら、私の為にいい酒を用意しながら待っていたそうな。

仮面の魔女ジャンヌ』は、ロックグラスにウィスキーを注ぐ、会場では吸えなかったので、席につくなり私は煙草を吸い出す。

 

「今回はかなり大変だったわね。ここ最近では、5本の指に入るほどよ」


「一時はどうなるかと思ったが、まぁ終わればいい訳だしね」


「そうね。【虹の魔女あの方】の力なしでは、難しかったのもあるわね」


仮面の魔女ジャンヌ』は、灰皿を私の前に置く。私は、遠慮なく吸い殻を灰皿に落とす。


「それで? 今後の予定は?」


「さぁね。今まで通り、その時次第に動くさ」


「あなたらしいわね。でも、たまには自分の目的のために動くのもありよ。待ってるだげじゃ、何も進まないわ」


「それもありか。だが、易々とこの街を離れるわけにはいかないさ」


「あのお子様との約束があるなら、致し方ないわ。でも、そうならなく時もくるんじゃない?」


仮面の魔女ジャンヌ』は、私に指摘する。今はリリィとの誓約がある以上、安易にこの街を離れられない。

 でも、私は、この街を離れる気はない。


「確かに。でも、私はこの街を離れる気はないよ」


「まぁ、あなたがそう思うなら、構わないわ」


 私は、グラスの酒を飲み干し、席から上がる。そして、紙袋を置き、ここを後にする準備をする。


「これ、置いていくよ」


 そう言うと、『仮面の魔女ジャンヌ』はそれを受け取る。


「確かに、受け取ったわ。それじゃ、またね」


仮面の魔女ジャンヌ』が受け取るのと同時に、私はここを後にした。

 少しすすきのの街を歩く。しばらく歩いていると、事務所に帰ってきた。私は自分の席に座ると、急激な睡魔が私を襲う。 

 こうして、私は眠りについたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る