4ー3

AM 11:55 探偵事務所 如月


 目を覚めてから、2時間が経過していた。私は、目が起きてからずっと、酒を飲みまくっていた。

 だが、どれだけ飲んでも、喉の渇きが潤うことがない。もう、10本以上のウィスキーを開けてしまったようだ。


「姉さん。いくら魔力が切れてるからって飲み過ぎだよ」


 ラスティアは、開けようとしてる私の手を止める。だが、私は、ラスティアの目を見た習慣、ラスティアの顔を見る。


(血が……、欲しい……。ラスティアの……、血が……)


 私は勢いよくラスティアを倒す。口を開けながら、涎を多量流してる私の顔を見て、ラスティアは全てを察したようだ。


「姉さん……、欲しいんだね? いいよ。私の血を飲んで」


 固唾を飲み、私はラスティアの頸を噛む。「うっ……」っと声を上げながらラスティアは私に血を吸われる。

 しばらく吸ってるうちに、理性が戻った私は、ラスティアの頸から口を離す。


「はぁ……。はぁ……。ありがとう……、ラスティア」


 口を開けながら、私はラスティアから離れる。

 

「もう……。姉さんは、強引……なんだから……」


 血が多量吸われたラスティアは、意識が朦朧としながら、輸血パックを自身につけながら、そのまま眠りにつく。


 私は、口を腕で拭き、それを眺める。その度に、私は人間ではないと思い、惨めになる。


「終わったかしら?」


「『仮面の魔女ジャンヌ』か。何のよう?」


仮面の魔女ジャンヌ』が声をかけてきた。どうやら、私がラスティアの血を吸ってる間に、ソファーに座っていたようだ。

 ちなみに、今の格好は、女子高生の格好だ。彼女を紅茶を飲みながら、私に話しかける。


「待っていたわ。あなたが起きるのを」


「どれぐらい経った?」


「3日は経ったわ。それよりいい加減、受け入れなさいな。自分が人間ではないことを」


「わかってる。でも、血を吸うのは嫌だな。勢い余って失血死させかねない」


「そんな綺麗事言っても、無駄よ。あなたの魔力供給は、それでしか供給できないんだから」


「……そうだね。禁忌だとわかっても、こうでしか魔力を回復できない。だから極力、奴を呼び起こさないようにしているさ」


「まぁ、あなたは妹君の血が一番馴染む訳だしね。それより、あなたに渡すものと伝える事があるわ」


 ジャンヌは、亜空間から書籍を出し、それを私に渡す。


「『グリモワル真書』か。すっかり、忘れてたよ」


 私は、『グリモワル真書』を読み始める。少し読んで、それを閉じる。


「『白の書』だね。こいつは間違いなく本物だ」


「そうね。聖教会が『聖典』と崇めてる書籍よ。その実は、『グリモワル真書 白の書』。主に、消去と変換について書いてるわ。

 それを、どう解釈したかわからないけど、かなり重宝してた様ね」


「レプリカでさえ、国宝クラスの代物だ。それが実は本物だったなんて、この時代でわかるのは、私くらいだ」


 私は、『グリモワル真書』を置き、煙草を吸う。『仮面の魔女ジャンヌ』は、私にまた話しかける。


「それともう一つ、彼女が近くまで来てるわ。そこの橋で待ってるわ」


「誰さ? その彼女とは」


「会ってみればわかるわ。では、私はこれで」


 そういい、『仮面の魔女ジャンヌ』は亜空間に入っていく。吸い終えた煙草を、灰皿に置き、私は着替えては事務所を後にする。

 河川敷を歩く。下の方では、バーベキューをしたり、ボール遊びをしている人たちで賑わっていた。

 しばらく歩いてると、見覚えのある人物が、煙草を吸いながら座っていた。


「君だったか」


「来るなんて、思ってもなかった。もう来ないかと思いましたよ」


 マリアが、ベンチに座りながら、煙草を吸っていた。修道女の服ではなく、私服のようだ。


「吸うんだ。煙草」


「他の信徒に見られる訳にはいかないので、こうして1人の時しか吸えないのです」


「堂々と吸えばいいのに、何も恥ずかしい事ではないだろう?」


「神職者である以上、それはできないのです。シスターが煙草をしてたら、イメージ悪いでしょう?」


 マリアは、もう一本吸い始める。細長い煙草を口に運び、火をつける。私も一本咥え火をつけようとしたが、マリアがそれにも火をつける。


「まぁ、それなら仕方ないか、それより、その足はどうしたの?」


「全治3ヶ月だそうです。骨は愚か、神経が何本が負傷していたそうです」


「あんなの食らって、3ヶ月で済むなら、まだましか。場合よっては、切断すらあり得た」


「そうですね。それに、出血が酷かったようです。おかけで、数日寝ていたみたいです」


 マリアは、煙草を離し、煙を吐く。そして、松葉杖を空いてる手で持ち、煙草の火を消した。


「まぁ、あんなのと殺しあった以上、無事ではすまないだろう。それに、もう行くの?」


「えぇ。迎えが近くまで来ているので、私はこれで。それに、ありがとうございました。あんな無茶を聞き入れてくれて」


「あの時は、状況も状況だったんだ。別に気しなくてもいい」


「あなたらしいですね。では、失礼します」


 マリアは、松葉杖を動かしながら、その場を後にする。そして、私はその場に残りながら一服を続ける。

 こうして、私は近くの橋で、時間を潰したのだった。

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