4ー2

AM 4:10 南3条通り


 グングニルを持ち、枢機卿を威圧する。枢機卿もまた。ロンギヌスを携え、こちらを威圧する。

 魔力の差は歴然。だが、枢機卿は一切下がる事なく、ロンギヌスを振りかざす。それを『魔女』となってる私は、グングニルの結晶で防ぐ。

 続けて、私は魔方陣を上空に展開し、大きめの火球を降らせる。

 だが、枢機卿はこれを避ける。だが、私が影の槍を放出すると、それを察知した枢機卿は咄嗟にそれを避けた。


『なんと怒涛な攻撃……! こちらに攻撃の隙を与えないとは』


「腐っていても、実力は高いか。だが、これなら受け止められまい!」


『魔女』となってる私は、さらに術式を展開する。火柱を展開し、枢機卿に向けて放出する。

 だが、枢機卿はこれを障壁を展開して防ぎ切る。それと同時に、光の剣を大量に展開し始める。


「小賢しい真似を」っと『魔女』と化しているは、白い炎を展開し、それを全て吸収する。


 光の剣は消え去り、白い炎も消滅していく。そして、私はもう一度魔方陣を展開する。


「返すぞ」っと私は、炎の剣を放出する。その剣は、まんま枢機卿が使っていたものと一緒だった。

 枢機卿は、それを障壁を展開して防ぐ。だが、炎の剣は、障壁に当たると同時に爆散する。


『二重に仕込んでとは。これが『魔女』の実力か』


「ふふふ。これだけではないぞ」


『魔女』と化してる私は、指を鳴らす。すると、今度は地上から血を吸い上げた。さらには、集めた血で刃を形成した。


「これなら止められまい」


 そうして、私は血の刃の雨を枢機卿に向けて放つ。枢機卿もまた、光の剣で応戦する。

 そして、光の剣と血の刃がぶつかり合い、爆発を引き起こす。


『これでも倒れませんか。では、とっておきを見せましょう』


 枢機卿は、ロンギヌスを高く上げる。そして、何かを集め出した。


「――――信仰心か」


『そうです。これを使う時はないと思っていましたが、そうと言ってられないのです!!』


 ロンギヌスが、光を放ち出す。その光は、『虚数空間』の中であっても眩しいくらいだ。


『これで、私の力はフルパワーと言えましょう!!』


「愚かな……。その割には、貴様の兵隊は死んでいっているようだが?」


『言ったでしょう? 信仰なんてただの幻想だと! さぁ、私はいつでも貴方を殺せる準備は出来てます! もはや、私を倒す事なんと、出来ない!!』


「哀れだな。貴様何もわかっておらん。貴様が相手取ってるのは、貴様以上だというのに」


『何?』


「わからんか、雑種。貴様のその、汚らしい信仰ごと消しとばしてやろうと言ってるのだ」


 私は、グングニルから立ち上がる。


「貴様に今から、真の魔術というのを見せてやろう」


 さらに私は、グングニルを自身の前に持ち構える。そして、二つに束ねた長髪と、片目が隠れる程に長い前髪が、風によって靡かれる。


「『グングニルよ 我に従えよ 我 星を蝕む外敵を 討滅せん』」


 グングニルが天高く舞い上がる。周囲に浮いていた結晶が、蝶の羽のように開く。


「『我が炎 我が誓約 即ち

  1つ 星を仇なす者は 例外なく焼き払う

  1つ 人理に害を及ぼす者を 灰に帰せよう

  1つ 悪しき富を廃し 弱き貧困を救わん

  1つ 汚れし善を焼き払い 真なる善を支えよう

  1つ 闘争駆ける義者を鼓舞し 愚かな悪者を滅さん

  1つ 去し亡者を焦がし 生せし生者の道にならん』

 ――――――1つ 我が力は『星の怒りの体現』である――――――」


 詠唱を全て唱えると、グングニルは回転を始める。大気圏の熱を触媒とし、最後の詠唱を待つ。


「『全ての誓約は解かれた 我が名の元に 煉獄なる焔よ 星の外敵を焼き尽くせ』!!」


 グングニルは、さらに回転を早める。そして、禍々しい炎を纏い、枢機卿に狙いを定める。


「『星滅魔法 【終焉へと導く煉獄の焔ザ・ラグナロク】』。その薄汚い信仰とやらと共に、燃え尽きるがいい!!」


 星をも燃え尽くす炎が、空から落ちていく。その威力は、『虚数空間』ですらも破壊する威力だ。

 枢機卿は、障壁を何層にも展開する。五層に展開されている障壁だが、グングニルは、簡単に障壁を壊していく。


『この威力……。これは今までにないものだ!!』


 障壁のみでは防ぎれないと判断した枢機卿は、放射状の光と、無数の光の剣を展開して応戦する。


『抑えられている! これで――――――』


 だが、予想以上に強い魔力のようで、放った魔術でも押されてしまう。そして、徐々に『魔法』に押され、最後の障壁の目の前にまで、接近してきていた。

 最後の障壁が、破られそうになっている。だが、枢機卿は、引く事もなくただその場に立ち尽くしている。

 そして、最後も障壁が、破られた。


『これが、我が天命か。ならば、受け入れるとしましょう……』


 枢機卿は、煉獄の炎をその身に受け入れる。枢機卿に直撃した瞬間、大規模の爆発が起きる。

 そして、枢機卿は叫び声を上げる事なく、肉片一つ残らず灰になった。


「哀れよな。貴様がこのような無粋な真似をせねば、こうもなる事もなく済んだ。

 ならば、黄泉の地にて、その欲で殺めた者達に懺悔するがよい」


『魔女』となっていた私は、地上に降り立つ。そして、グングニルが私の元へ戻ってきた。


 ――――――――――――――――――――――


『魔法』とは、魔術師が持つ術式の中で、最も高い出力を持つ術式である。

 私たちが使う『魔術』は、星の神秘を具現化するためものである。大昔は、自然現象でのみで起きたものを全て『魔法』とされていたが、時が進むにつれて、それが人工的に使えるようになってからは、大半は『魔術』に格下げられてしまい、今は科学的理論上、再現ができない神秘のみが『魔法』とされている。

 最も、『魔法』の有効的な発動方法は、一つだけある。

 そう、魔術師が持つ魔具を最大限に『発動』することで、現代の魔術師はようやく『魔法』が扱えるのだ。

 ただし、そのためには大きなリスクがある。それは、最悪の場合、一生分の魔力を消費する可能性あるからだ。

 その為、現代の魔術師は魔具を最大限に使用する事はなく、ただ護身のためにのみ持つものが大半だ。

 その性もあり、上の連中は性根が腐った連中しかいないはずだが、近年はリリィが議長に居るおかげでそれも改善されつつある。


 ――――――――――――――――――――――


 かくして、『魔女』と化した私は、束ねてる髪をなびかせる。そして、『魔女化』を解除させ、元の私に戻った。

 だが、私はその場で倒れ込んでしまう。


「はぁ……。はぁ……。」


 多量の汗をかきながら、私はその場で倒れる。すると、セシリアが駆け込み、私を受け止める。


「全く、無茶するわね」


「すまない……。魔力が切れた……」


「姉さん……。もう、やりすぎるんだから」


 ラスティアと、明日香も駆けつける。しかし、マリアはただ1人立ち尽くしているようだ。


「おのれ!! 皆!! 今が好機だ!! 枢機卿の無念をここで晴らせ!!」


 聖教会側が、攻勢を始める。動ける魔術師がいないうちに攻めるようだ。だが、その攻勢は、止められる。


「もう良いのです!! 我々は、この戦いの負けました。もう戦う必要は、ないのです」


「シスター! しかし、それでは、枢機卿の無念が」


「良いのです。これが本望だったのでしょう。それに、信者達の不要な血を流させるわけにはいかないのです」


 指揮をとっていた信者が、マリアの指示に従い、撤退を始まる。


「この戦い、貴方方に勝利を譲りましょう。それに、こちらに落ち度があるなら、後始末はこちらでするのが礼儀でしょう?」


「そうしたきゃ、勝手にしなさいな。もう懲り懲りよ。全く」


 聖教会側は、撤退していく。そして、『虚数空間』が消滅していく。魔術院側は、戦勝を確信し勝ちどきを上げる。

 その歓喜の怒号を聞きながら、私は目を瞑るのだった。

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