3ー3

AM 0:00 魔術院日本支部 地下牢


 廊下が騒がしくなっている。どうやら、抗争が始まったみたいだ。

 だが、私はここから出る事はない。終わるまでは幽閉されるという約束をしてるからだ。

 私は、何もせずに居座ってると、どこからか足音が聞こえる。魔力を見る限り、魔術院の人間ではなさそうだ。

 足音はどんどん近くなり、私にいる牢の扉が開く。その人方に何かは、私の前に現れた。


「あんたが噂に聞く『魔女』か?」


「そうかもしれないが、今はただの幽閉された魔術師さ。『魔女』と思うなら、他を当たってくれ」


「そうか。なら、あんたはここで死んでもらう」


 声の主は、私の首に向けて糸のようなものを放ち、私の首を締め付ける。


「なるほど。糸を触媒とした魔術か。それであそこの門番を殺したわけか」


「あぁそうさ。俺の魔力を与えると、こいつはもっと鋭利になる。アレみたいに簡単にその首を切れるわけだ」


「確かに。これだと、身動きが取れないまま、ただ死ぬのを待つだけだな」


 私の言葉に、彼は勝利を確信する。その反応に、私は呆れながら反撃の体制を取る。


「それで勝ちを確信するとは。聖教会も落ちぶれたものだな」


 私は影を見つけ、それを使役し、狼のようなものに変形させ、彼の腕を噛みちぎった。


「ガハッ! 何故だ……!? 封印布がつけられてるのに、こんなことまで……」


 私は、彼を蹴り倒し、首元を足で踏むつける。


「待って!! 話を――――――」っと言ってる間に、彼の首を影で噛みちぎった。

 その反動で、私の足には、彼の血が大量に付いてしまったようだ。

 足に不快感が残る中、亜空間が開かれる。どうやら、『仮面の魔女ジャンヌ』が来たみたいだ。


「『仮面の魔女ジャンヌ』か」


「あら? その状態で、殺せたのね。さすがだわ」


「あぁ。こっちが殺されるところだったよ」


仮面の魔女ジャンヌ』は、証拠を隠滅するかのように、死体を灰にさせる。そして、私の目と腕を覆っていた封印布を解いた。


「久しぶりの自由だ。それより、どれぐらい経ったの?」


「5日よ。外はもう、魔術院と聖教会の抗争が始まったわ」


「やっぱり避けられなかったか。それで? 戦況は?」


「かろうじて、魔術院が有利よ。聖教会なんて、あれも投下してきたんだから」


「あれって?」


「咎人よ。それに、『愚者グール』も大量に投下してきたわ。連中、やはり何かを隠してるようね。

 それも、もっとやばい何かを」


「なるほど。そいつらは、誰が処理したの?」


「あなたの妹君よ。あのお子様、あなたとの約束を破ったわ。いや、はなから守る気なんてなかったというべきかしらね」


「――――――なら、ここにいる必要はないな。早くここから出よう」


 私は、『仮面の魔女ジャンヌ』の言葉に、怒りを覚える。リリィは、やはりラスティアを抗争に招集したのだ。

 なら、ここにいる意味もない。私は、取られていた衣服を取りに、牢から出る。すると、『仮面の魔女』は、私を静止する。


「待ちなさい。そのまま出ると、気付かれるわよ」


「ならどうしろと」


仮面の魔女ジャンヌ』は、亜空間から何かを引き出す。その中身は、私の魔具と、ラスティアの服ではないも服だった。


「あなたの魔具は、こっちで預かってもらったわ。もちろん、あなたが囚われた日にね。それと、激戦が予想されると思ってこれを用意したわ」

  

「『魔女の礼装』か。これを着る時は、とんでもない時くらいだと思っていたが、まさかこの時とはね」


「そうね。これをあなたが着ると、あなたの魔力は『魔女』になった時の半分程度まで解放できる。

 いつもの倍は、満足に魔力を扱えるようになるわ」


「あぁ、今がその時って感じか。なら、今からでも着替えよう」


 私の声に応じ、『仮面の魔女ジャンヌ』は私が着ていた物を脱がす。その上から、礼装を着させる。しばらくして、ドレスの様なものに羽織った私の姿があった。


「悪くない。それに、不思議と力が湧いてくる」


「その礼装は、【虹の魔女あのお方】の髪を素材に生成されてるわ。その転生者生まれ変わりであるあなたなら、十分に呼応するわ」


「君に言われるのなら、悪い気はしないよ。なら、改めてここを出よう」


 私はそういうと、『仮面の魔女ジャンヌ』は亜空間をさっきと同じところに展開する。私は、『仮面の魔女ジャンヌ』と共に、亜空間を経由して牢を出た。



 しばらくして、私たちは正面の門にたどり着いた。執行者の車はなく、全員が戦地に向かったのが目に見えてわかる。


「何も、ここじゃなくてそのままあそこまで連れて行ったのに」


「君にそこまでしてもらうつもりは無いよ。それより、煙草ある? 5日も吸ってないと、口が寂しくなる」


仮面の魔女ジャンヌ』は、煙管きせるの様なもの私の口に咥えさせ、マッチで先端のところに火をつける。


「まずい。でも落ち着く味だ」


「その煙管きせるには、アヘンを使ってるわ。【虹の魔女あのお方】が、好んでいたわ」


「あれと私は違うんだ。でも、置いていったから、無いよりはマシか」


「そろそろ始めましょう。でないと、来るわよ」


「そうだね。では、始めるとしよう」

                  

 私は、ドラウプニルを展開し、右腕を切り付けた。そして、術式を唱え始める。


『我と契約を交わせし幻獣よ 我が血を糧とし 現世にへと現界せよ

 その猛き四肢 その紅蓮なる炎を纏いし肉体をもって 我を導け

 ――――――――――現れよ 『幻馬スレイブニル』!!』


 ドラウプニルから、紅い体をした馬が現れる。私を見下ろす顔を近づけ、私に甘える。


『あぁ〜。これはこれは、お久しぶりでございます。我が主よ』


「君も変わらんな。『幻馬スレイブニル』。それより、私を運んでくれ」


『はい。あなた様のためであれば、どこまでも向かって差し上げましょう』


 私は、『幻馬スレイブニル』に跨り、戦場となってる場所へと向かう。すると、正門から魔力を感じ、振り向く。

 そこには、美羽とリリィ、それにイロハまで来ていた。


「どこへ向かうおつもりですか?」


「君たちには関係ない。どこへ行こうと、私の勝手だ」


「しかし、リリィとの取引はどうなるんです? 『グリモワル真書』は、あなたにとって、喉から手に取る代物でしょう?」


「そんなの、君らで使うといい。そもそも、君らが私との取引を破ったものだろう」


 私の言葉に、美羽は戸惑う。どうやろ、現場での出来事は入ってきてないようだ。戸惑う美羽をよそに、リリィが出てくる。


「行くといい。君が行くなら、僕らは止めやしない」


「そうさせてもろう」っといい、私は『幻馬スレイブニル』と共に改めて戦地となってる場所へと向かう。そして、『幻馬スレイブニル』の雄叫びと共に、私は魔術院を後にした。


「どのぐらいで着きそう?」


『この『幻馬スレイブニル』に任せれば、数分で辿り着きましょう!』


「それは、頼もしい限りだ。急ごう!!」


幻馬スレイブニル』は、目に止まらぬ速さで、駆けていく。道行く人たちは、駆ける炎の馬を見て、スマホで写真を撮る。

 そして、10分も経たないうちに、私は戦地と化した大通についた。

  

 戦況はかろうじて、魔術院が有利である。しかし、双方ともすでに多数の死傷者を出していた。

『虚数空間』を展開していたとはいえ、ここまで酷いものになってるとは、考えもしない。中でも、セシリアとマリアの決闘は、かなりのものになっている。

 ここに割り込めば、この抗争も一変するであろう。


「『幻馬スレイブニル』。あそこで降りれるか?」


『もちろんです! あなた様の要望とあれば、容易い事!!』


 私は、『幻馬スレイブニル』に着地するよう指示する。『幻馬スレイブニル』は、私の指示に従い、急降下をし始める。

 そして、戦地となってる場所に降り立った。



 ――――――――――――――――――――


「――――――そこまでだ!」


 私は、グラムとティルフィングを展開し、両陣営の指揮官同士の一騎打ちに介入する。両者の間を、『幻馬スレイブニル』で割り込む様にそれまた両者の攻撃を受け止める。


「アル!? あなた、幽閉されていたんじゃ!?」


「悪いが、勝手に出させてもらったよ。それに、この戦いにも介入させてもらう」


 セシリアは、疑問に感じる。あの状態を見ていたのなら、それはそうだろう。しかし、それよりも疑問に感じて入れる人物が、そこにいた。

 マリアである。彼女は、私の登場に驚きを隠せないようだ。

 私は、『幻馬スレイブニル』から降り、マリアの元に向かう。『仮面の魔女ジャンヌ』からもらった薬を、マリアに渡す。


「なぜ、この様な真似を?」


「さぁ? だが、それはどうでもいいことだ」


 マリアは、私が渡した薬を飲み、立ち上がる。そして、私に向けて魔具を構える。


「ここであなたを倒せば、聖教会としては、かなりの功績となる。この絶好な機会、逃す訳にはいきません」


「ほう? では、やってみるといい。君に、私を殺せるのならね」


 私は、魔力を少しだけ解放する。だが、それだけでも周囲にとっては重圧となっているみたいだ。マリアも同様だ。少し解放した私の魔力の前に重圧を感じたらしく。冷やせをかいている。


「行くぞ」っと私がいう。かくして、ただでさえ混沌としている抗争は、さらに混沌と化して行くのだった。

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