3ー2
AM 0:30 南3条通り
魔術院と聖教会が、それぞれの力をぶつかり合う総力戦を繰り広げる。すでに、双方に死傷者が出るほどの甚大な被害が出ている。
殺し合いが殺伐としている群衆とは別に、双方に総大将が一騎打ちが始まろうとしていた。
「あなたと殺し合えるなんて、夢に思ってませんでした」
「そう? 私は別にそうとは思ってないけど?」
マリアは、セシリアに向けて魔具を見せつける。それを見たセシリアは、驚愕をする。
「その魔具は、まさか」
「わかりますか? 『三日月宗近』。天下五剣と評された5本の刀の一振り。ある時に、魔術院が輸送物を鹵獲した物から拝借したのです。
まぁ、私の『色素』とあったのでそのまま使ってますがね」
「聖教会は、『原色』を忌み嫌っているんじゃなかったの?」
「えぇ、我々は『無色』を信仰している組織。全ては白と黒で決まる。それは神が善悪を判断下さるからです。
しかし、実態は『原色』を扱う者が多い。それを神の奇跡と誤魔化しているだけ。
皮肉な者ですねぇ。そうしないと、教会の存続が危ぶまれるのですから」
「あなた、結局は神とやらを信仰してるの? 聞いてると、信仰してるとは思えないけど?」
「私は、神という仮想の群像を信じません。信じるのはただ一つ。『虹の魔女』と『虹の王』だけ。それを昔の凡愚共は、『神』という自己都合なものに変換し、気がついたら、それが組織の基盤になった。ただそれだけです」
「あなた、随分とひんが曲がってるわね? 頭のネジがぶっ飛んでるみたいだけど?
まぁ、今時そんなものを信じるのは、狂ったカルトくらいだわ」
「そうですね。では、無駄話もこの辺にして、私たちも始めましょうか」
「そうね。では、始めましょうか」
セシリアも、自身の魔具を展開する。マリアは鞘を抜き、攻撃の体制を整える。セシリアは、攻撃をするが、何かを察して避ける。
「これは!?」
セシリアは、刀から放たれた剣の衝撃波をみて、驚愕する。放たれた刃は、ビルを切り裂き、斜めに倒壊していく。幸い『虚数空間』内であったものも、双方を巻き込む被害が出ることは変わりない。
「透明な刃……。『緑』の魔術ね」
「そうです。この子の得意とするものと、私が得意とする『透明術式』で作り出した『透明斬撃』となります」
「なるほど。三日月の時に真価を発揮するその魔具なら、あなたの魔術と相性がいいわね。それじゃ、この周囲にも、透明な何かがあると言うわけね」
セシリアは、何かを察知したような素振りをし、ニョルニルで地面を叩き割る。すると、その衝撃で周囲が爆発し出す。
「ほう? 衝撃で、私の仕掛けた爆弾を一気に爆発させるとは、さすがと言いますか」
「そっちがその気なら、今度はこっちの番よ!!」
セシリアは、足に魔力を溜める。すると、目に止まらぬ速さで、マリアに接近する。
マリアもまた、透明な斬撃を放つ。その衝撃により、斬撃の軌道が変わり、ビルに当たる。
「さすがはニョルニル……。これほどまで強力とは」
「あいにく、易々と命なんて差し出せれないんでね!」
マリアとセシリアは、互角にぶつかり合う。斬撃と重撃。どちらも、雌雄決することなく、互いに互角にぶつかり合う。
それにより、『虚数空間』の中の街並みは滅茶苦茶な事になっていく。
「さすが、やるじゃないの!?」
「あなたこそ。ですが、まだ負けたわけじゃない。ここからが勝負です!!」
2人は、再びぶつかり合う。だがしかし、セシリアは思わぬ光景を目にしてしまった。
なんと、聖教会陣営に、咎人の姿があったのだった。よそ見をした上に、マリアの攻撃を見逃してしまう。
セシリアは、咄嗟にそれを避け、体制を持ち直す。
「一ついいかしら?」
「なんでしょう?」
「あれ、あなた達がやった事なの? それに、なぜ咎人が混じってるわけ?」
「――――何故それを、聞くのです?」
「単純なことよ。あなた達が、こんなことをした隠しにしてないか聞いてるの」
その言葉に、マリアは怒り出す。そして、透明な剣圧を複数放出する。それを見たセシリアは、ニョルニルで撃ち返す。
「許しません。えぇそうです! あなたはここで謀殺します!!」
「やる気になったんじゃない!! では、私も本気で行かせてもらうわね!!」
セシリアは、脚に自身の魔力をフルスロットで展開する。それと同時に、彼女の両脚は蒼く放電し始めた。
「『四重魔術 特級付与術式・蒼雷蓄電』!! さぁ、行くわよ!!」
セシリアは、マリアに向かい、攻撃をする。マリアはそれを防ぐが、速さが増した重撃の前では、成す術も無く吹き飛ばされる。
「これが、魔術院最強の、『雷電』と言われた魔術師の全力……! これほどまでとは、思いもよりませんでした」
「それはあなたもよ、『
マリアは刀を横に振るい、水平に透明な斬撃を放つ。だが、セシリアは垂直に避け、飛び蹴りを食らわせる。
マリアは咄嗟に避け、左腕を突き刺し、突風を放つ。
「へぇ。中々やるじゃない。なら、そろそろ片を着けさせてあげる!!」
セシリアは、片方の足を大きくあげる。すると、ニョルニルが肥大化し、電力もまた強くなっていく。
「終わりよ!! 『四重魔術 特級展開・巨鎚殲滅撃』!!」
「ならば、こちらも!! 『アルカナ術書 【
三日月宗近を天高く上げ、月の光で構成された透明なバリアがマリアを包み込む。それを打ち砕くように、セシリアのニョルニルが、頂点にぶつかる。
そして、次第に魔力がぶつかりあい、大爆発を引き起こした。
「はぁ……。はぁ……。なんとか、防げました……」
「はぁ……。はぁ……。まさか、塞がれるなんてね」
「でも、まだ終わってませんよ。まだ、決着がついてません」
「そうね。街はボロボロになってるけど、私達はまだ生きてる。それだけで十分よ!」
2人は、そこが尽きかけてる魔力を無理やり放出し、魔具を展開する。お互いが再びぶつかり合おうとした。
――――――その時だった。2人の間を、赤熱の体を纏った巨体をした8本の足をもつ軍馬によって防がれた。
「そこまでだ!」
マリアとセシリアは、白と黒の剣によって、魔具を押さえつけられた。
「アル!? どうしてここに!?」
「そんな! この短時間で、ここまで来るなんて!?」
「悪いけど、私も加えさせてもらおうか」
2人は、突如現れた幽閉されていたはずのアルトナの乱入で、驚きを隠せれない。それはもちろん、この場にいる全員がそうだ。
氷壁越しで、マリアとセシリアの激戦を眺めていた者たちも同様である。
かくして、わずかの時間で混沌とした状況になってる戦場に、『魔女』と呼び恐れている魔術師がこの抗争を終わらせんと介入してきたのだった。
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