2ー3

PM 10:45 中島公園


 抗争の開始が刻一刻と近づいてる。魔術院の精鋭達が、議長であるリリアンヌの指示により、中島公園に集結して行ってる。

 その先陣を任されたセシリアは、軍団の先頭に居座り、状況を知り得ていた。


「アリス。状況は?」


「要請に応じた魔術師達は、皆集結しつつあります。いつでも、いけれるかと」


「ありがとう。美生。聖教会側の動きは?」


「特に異常はありません。あちらも、準備万端だと思います」


「そうね。それで? 彼女は来たのかしら?」


 3人は、後ろを振り向く。すると、魔具を携えた魔術師、ラスティアが現れる。


「あら? もう準備ができてるのね?」


「これが終わったら、姉さんを解放する約束でしょ? 早くいきましょう」


「ダメよ。まだ議長からOKが出てないんですもの。気持ちはわかるけど、もう少し我慢して」


 セシリアは、ラスティアを宥めながら、制止する。皆が準備を進めてると、もう1人現れる。


「やれやれ。ラスティアはあいつのことになると、冷静でいられないんだから」


「明日香さん!? どうしてここに?」


「何って、君を心配してきたんだけど? それに、ラスティアが死んじゃ本末転倒でしょ?」


 明日香の言葉に、ラスティアは黙り込む。セシリアは、煙草を吸いながら、周りを見渡す。


「では、始めようかしらね。アリス、美生。アレを」


 セシリアの声に、2人は何かを用意する。


「みんなも知ってるように、ただいまから聖教会との抗争が開始されるわ。状況として、奴らの行ってる蛮行への制裁とし、我々は全戦力を持って奴等に制裁を与える! しかし、今回はここ近年では大規模なものになることが予想される。

 各員、死を覚悟し、奴らに我らが親愛なる星の神秘を用いて、裁きを与える!! いい? これは星の明日を賭けた戦いでもあることをしかと胸に刻み奮戦せよ!!」


 セシリアの号令に、決起する一同。これから起こる抗争が、ただの戦いではないことを物語ってる。


「さて、行くとしますか」


 セシリアが進みにつれ、魔術院の軍勢は、戦地となる場所に向かう。魔術院陣営は、セシリアを筆頭に出陣をしたのだった。



 ――――――――――――――――――――


 同刻 札幌駅南口



 白い武装をした集団が、札幌駅前に集結しつつある。彼らは、魔術院を撃滅戦と集った聖教会の精鋭達だった。

 彼らは例の事件を受け、プロパガンダを掲げ、集結しているのだ。その先頭を任されたのは、シスターであるマリアだった。


「シスター・マリア。部隊の準備が整いました。あなた様の号令があれば、いつでも出陣が可能です」


「ご苦労様です。あなたも持ち場に戻りください」


「シスター・マリア。聖遺物を」


「感謝します」っと部下にいい、マリアは刀のような聖遺物を手に取る。

 聖遺物とは、魔術院で言うと、魔具にあたるものだ。聖教会はそれを嫌がるため、わざわざその呼び方をしているのだ。

 マリアは、教徒たちを鼓舞するように、声をかける。


「親愛なる我が同胞達よ。今宵、教王閣下の号令に集いたこと、教王閣下に変わり、感謝します。

 今、我らは、神より預かりし祝福を汚せし魔術師共を根絶やしするべく、教王閣下は聖戦を蜂起した。

 教王閣下の名の下に、悪しき魔術師共に、神の粛清を与えましょう」


『全ては、神の御心のままに!!!!』


 教徒たちは、マリアの鼓舞に士気を上げる。そして、彼らもまた、戦地なる場所へと歩み始めた。



 ――――――――――――――――――――



AM 0:00 南3条通り



 しばらく時が経ち、両者が睨み合う。両陣営の先頭に立つ、セシリアとマリアがついに邂逅した。


「これはこれは。魔術院側の先頭は、あなたでしたか」


「あら? やっぱりあなただったのね? この数に人間、引っ張れるのは、あなただけしかいないですもの」


「その言葉、そのままお返しいたします。それより、あの方は来ていないようですね?」


「あなたが知ることではないわ。まぁ、知る前にあなたが生きてるかどうかだけど」


「なるほど。では、あなたから吐き出させれば良いと言う事ですね?」


「出来るのかしら? 言っておくけど私、かなり強いわよ」


「その余裕がいつまで保つか、見ものですねぇ。まぁ、すぐにその余裕をへし折ってあげましょう」


 両者が睨み合うと同時に、双方の兵達がぶつかり合う。雄叫びと同時に、武器同士がぶつかり合う音と、魔術による爆発音が響き渡る。


「どうやら、もう始めてしまいましたか」


「そうね。血の気高い連中を抑えるのは、疲れるわね」


 セシリアとマリアは、その光景を眺める。幸い、『虚数空間』を張っているので、民間人への被害は最小に抑えられる。

 混沌がひしめく戦場の中で、この2人だけは、そこいらの魔術師や教徒よりの異常な重圧感が放たれてるのだ。


「無駄話もこの辺にして、こちらも始めましょうか」


「そうね。少し、喋りすぎたわね」


 セシリアとマリアは、お互いの魔具を展開し出す。展開と同時に、強力な魔力が衝突し合う。

 こうして、魔術院と聖教会による熾烈な抗争が、幕を開けたのだった。



 それが仕組まれたものだったとは、この時、この場にいる者たちは知る由もなかった。

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