1ー2
PM 4:20 探偵事務所 如月
安達さんと共に、腐乱した遺体の山を処理し終え、事務所に戻る。戻ってすぐに、明日香に預けていた腐乱した遺体の一部を持ち、工房に行く。
工房に入ると、すぐさま遺体を置き、解剖を行う。腕一本のみであるが、それだけでも何か良いものがとれるかは不安でしかない。
早速、私はこの遺体の一部を解剖することとした。
「ダメだ。何をしようとも、魔術の痕跡すらない」
数時間遺体の一部を解剖していたが、何一つ魔術の痕跡が見当たらなかった。肝心の右肩の刻印でさえ、魔術の痕ではなく、一種のタトゥーだった。
だがしかし、気になるものが一つ見つかった。
そう、血液を採取したところ、薬物の反応があったからだ。聖教会はそんな現代的な方法を取るのが頑なに嫌がるはずだ。
「あら、お取り込み中かしら?」
何もないところに亜空間ができ、聞き慣れた声が聞こえてくる。
「『
「あなたに伝えたいことがあってね。どうやら、もう動いているなんてね」
『
「時期に、大きな争いが起きるわ。それも、大勢な犠牲が出るほどにね」
「どういうことだ?」
「恐らくは、誰かの暗躍によるものと思われるわ。けど、黒幕が誰かはわからない」
「黒幕がわからない? それは一体?」
「えぇ。そいつが何者で、一体誰なのかですらわかってないのよ」
「それが魔術院や、聖教会の誰かですらわからないってわけか」
「そうね。今の所は、だけど」
『
そして、『
『時期、大きな争いが起きるだろう』
奴が言っていたあの言葉が、頭に響く。その意味を知るために、この2ヶ月悩みに悩んでしまった。
それが『
「それよりも、あなたにとって大事なことがあるわ」
「今度は何?」
「もうすぐ、新月が来るわ。その時にまた来るわ」
そう言い残し、『仮面の魔女』は亜空間に入って行った。溜息をしつつ、煙草を吸う。しばらく一服をしていると、スマホから電話がかかってくる。
「もしもし」
『もしもし。キサラギさんですか? 安達です。今大丈夫ですか?』
電話の相手は、安達さんだった。どうやら、もう午前の死体の結果が出たらしい。
「はい、大丈夫です。それで、結果は?」
『どの遺体も、死因は薬物の過剰摂取によるものだったそうです。それも、今世界中で起きてるものと同様のものとのことです』
「それが、連続大量変死の死因。しかも、誰がさせてるのかも不明ということですか?」
『残念ながら。しかし、全てに共通することがありまして、それが何とも言えない不気味な感じがしましてね』
「不気味な感じ? それは一体」
『どれも、右肩にタトゥーが彫られているのです。それも、専門の者でさえわからないデザインだそうです』
安達さんは、残念そうに言う。それもそうだ。聖教会に刻印だからだ。
『では、また何かあれば連絡しますね』
「はい。ではまたお願いします」
そういい、電話を切る。そして、遺体の一部を燃やし廃棄した。
工房の片付けをしてると、ラスティアが工房に来る。
「姉さん。お客様が待っているよ」
「わかった。すぐ行く」
ラスティアに案内される形で事務所に向かう。
かくして、特にこれといったものが収集出来ず、私は遺体の解剖を終わらせたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます