第28話 突然のデート?!
真はあかねに言われた通り、今日も十時に事務所を訪れた。
「レディースエンドジェントルメン」
そう言ったのはあかねだった。彼女は立ちながら足を組んで両手を開いてポーズをとっている。
「何なんですか。いきなり」
真は驚愕している。
「飯野真君。君には今日とっておきのサプライズプレゼントをしようと思っていたんだ。ほら、誕生日も近いでしょ」
「僕の誕生日は六月ですよ。今、十一月じゃないですか」
「あれ、そうだっけ? テヘヘ」
そう言って、あかねはお茶らけた表情で、自分の右手でこぶしを作り、自分の頭に軽く当てた。
「ふざけないでください。僕を呼んだわけは何ですか?」
「それはね、つむぎと真君でデートして欲しいのさ」
デート? 一瞬、真は何のことを言っているのか理解できなかった。
「デートって……」
「そう、デート」
あかねは横にいるつむぎに目配せをした。
「何で、飯野さんとそんな風になっちゃうの。ね、飯野さん」
つむぎは半分真顔で半分照れた表情をしている。
「な、何ででしょうか?」
真も二人のどちらに目を向けたらいいのか困った。
「まあ、いいじゃない、お二人さん。楽しんで来たら」
そう言って、あかねは真の右手とつむぎの左手を掴んで、互いに手を握らせた。
「あかねさんは何をするんですか?」
「あたしは、今から用があるから。じゃあ、二人で楽しんできてね」
あかねは急いで玄関のドアを開けて閉めようとした時に、顔だけ二人に見せて言った。
「結果を教えてね」
と、笑顔を見せて、ドアを閉めた。
残された二人は我に返ったように、互いの手を離した。
「あ、すみません」
真は恥ずかしくて下を向いていた。
「いえ、あたしこそすみません。本当にごめんなさい。バカなお姉ちゃんで……」
つむぎも下を向いていた。
「本当に、何考えてるんでしょう、あかねさん。今日は変ですよね」
「まあ、いつもあんな感じですよ。飯野さんには見せてないかもしれないけど、結構突発的なことを言って、いろんな人を巻き込んでるのがお姉ちゃんですから」
「しかし、どこに出掛けたんでしょうか。つむぎさんは知ってます?」
「うーん」つむぎは首を傾げた。「思いつかないですね。ただ、お姉ちゃん、今日悪夢を見たらしくて、かなりうなされてたんです。それで何かをひらめいたようで、お姉ちゃんじっとしてられない性格だから、それが事件と関係してたんじゃないかなって……」
――なるほど、確かにあかねだったら、何かひらめいたらそれを実行せずにはいられない。ただ、自分を誘っておいて、当の本人はどこかに出かけて、何故つむぎとデートをしなくてはいけないのか。それが疑問だった。
誰にも邪魔されたくないのか。しかし、何故つむぎも誘って?
真は事務所の掛け時計の時間を見ていた。時間は十時十五分。
「つむぎさんは今から予定ありますか?」
「いえ、特にないですけど……」
「まあ、せっかくだし、お姉さんがやってくれと言ったわけだから、二人でどこかに行きますか?」
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