第24話 第一の事件経緯
「おはよう。真君。事件の捜査は進んでるかい?」
真が笹井探偵事務所に足を運んだら、そこには菅がニコッと笑った。もちろん、隣にはあかねがいる。
「進んでるもなにも、あかねさんから聞かなかったんですか?」
「もちろん聞いたよ。水野さんの過去も聞いた。何でこんな不幸ばかり経験してきた人が最期に殺されるなんてね」
「ねえ、水野さんってやっぱり自殺なんじゃないの?」
あかねは菅に聞く。
「いや、警察は他殺の線で捜査をしている。俺自身もあの遺書は彼女が書いたとしたら、これまでのいろんなことを綴っているはずだ。それに椅子も机もないんだ。まず、事件が起きた場所から考えよう。本当に犯行はあの場所で行われたのか……」
「あの場所で合ってるんじゃない。わざわざ別室で殺して科学室に運ぶ理由がないもん」
「まあ、机の並び方もコの字になってることから、あの場所で殺害は可能だ。今度はロープだ。あのロープはかなり頑丈な綱引き用ほどではないが、切れることはない」
「通販で買えば簡単に手に入るね」
「恐らく千円くらいだろう。それくらいだが、その日に殺害するには前から用意しなくてはいけない」
「それは、犯人はこの日に殺害する計画を立てていた。だから、手に持っていたという事ですね」
と、真。
「ああ、そうだ。材料は手に持っている。では犯行だ。まず、後ろからこう頭を通して首に巻き付ける」
菅はあかねの後ろから彼女を被害者に見立てて、後ろからジェスチャーをした。
「ちょっと、あたしを使わないでよ」
「ごめん、一度犯行する犯人をやってみたら何かわかるかなと思って」
「本当に気味悪いからやめてくれない」
あかねは露骨に嫌な顔を出した。
「ごめん。本当に」
「まあ、いいよ。それで」
あかねは腕を組んで言った。
「そして、首を絞める。被害者も驚いて、縄を解こうと抵抗するが、犯人の力が強く、しばらくして力を尽きる。犯人は水野が死んだと確認すると、そのまま自殺に見せかけて、ロープを天井に括り付けた」
「ちょっと待って。首をロープで絞めたのもそうだし、水野さんを椅子や机無しで首をくくるとなると、相当力が強くないといけないんじゃない?」
「そうだな。だとすると」菅は顎に手を当てた。
「犯人は男の人っていう事ですよね」
真は言った。
「そう考えると男の可能性が高い。後、筋肉質の女性かだ」
「そんな女性、西京高校にいますか?」
あかねは語尾を強く言った。
「すまん。男だな。男で水野を邪魔だった人間っているかな」
「うーん」
と、あかねも顎に手を置いて考えていた。真も言葉を失っていたが、思い出したように言った。
「そう言えば、あかねさん。校長先生の話を菅さんに話しました?」
「え? ああ、すっかり忘れてた」
あかねは笑顔を見せた。
「何だい? 校長先生が何かあったのかい?」
「校長先生、女子生徒を呼んで学年成績の隠ぺいをしていたんだよ」
あかねは菅に校長先生の噂の話をした。
「そんなことを隠してたのか校長は。だからあの時、せかすように我々を帰らせたのか」
菅は怒りを露わにした。
「という事は、校長先生が水野さんを殺害? どうしてだい?」
「水野さんは二年生の時に一気にテストの点数も良くなったし、通知表もそれなりに評価は良かった。それは校長先生に、もしかしたら成績隠蔽していたんじゃないかなと考えてまして……」
真は右眉を人差し指でかいた。
「なるほど……。まあ、一念発起して勉強したかもしれないよ」
「まあ、ないことはないけど。普通今までほとんど勉強もしてこなかった生徒が、ある日を境に全ての教科を勉強するって、相当根性いるよ。しかも演劇もでしょ」
あかねは言った。
「まあ、演劇に関しては才能を褒められたにせよ、他の勉強は別に褒められてもないからな。怪しいな」
菅は口を覆い左手をさすった。
「取り合えず、校長先生にこの話を聞いてみた方がいいんじゃない。それしか方法はないよ」
あかねは言って、菅は「そうだな」と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます