第21話 犯人の気持ち

 今日はついにやった……。

 森本翼を階段から突き落とした。


 奇跡的に誰もいない。森本も気づかれていない。あの時、一か八かだったが、やってみて良かった。

 しかし、森本は悪運が強い。意識不明だが、一命は取り留めたといった。


 悔しかった。森本を殺害するにはこの方法を前々から考えていた。

 あいつは大体昼休みに屋上にいる。今日は気分が良さそうで、おまけにポケットに手を入れていたから、落としたら死ぬだろうと思って勢いづいたのに……。


 水野の死は良かった。朝の生徒たち、先生たちの慌てた声、そして、探偵と刑事が事件を聞いている。

 遺書もふざけたものを書いてみた。他殺が断定したとき、あいつらはどう思っただろうか。

 まだまだいろんな人物を殺害させる役目があるのだ。次はあの的野とかいう、演劇バカにしてみようか。


 私は引出しから、科学室の薬品庫から盗んできたクロロホルムの液体が入ったビンを手に取った。

 普段はこんなものは授業では使わない。


 管理がずさんな学校だ。まさか、薬品庫の鍵が掛かっていないなんて、科学の先生も言えないだろう。

 一応、クロロホルムのビンが置いてあったスペースを埋めるように、左右のビンなどを動かして、誤魔化した。しかし、後日鍵掛かってあったことから、科学の先生は水に流すつもりでいるのだろうか。


 だが、警察がどこまで調査しているかだ。あのどう見ても高校生くらいにしか見えないショートカットの女と、女子にも見える大きな目の謙虚そうな男だ。

 今のところ、あの二人には事件を解決するような、才能があるには見えないが……。


 すると、問題は警察だ。

 警察だけ気にしていたらいい。

 あの二人はただの遊びに来ているようなものだ。

 クックック、私は笑いをこらえるのに必死だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る