第51話
次の日。
昨日の夜はひたすらレベル上げをしていた。リザードマンを狩りまくっていたのだが、武器のドロップはちょこちょこあったのだが、短剣はまだない。
短剣を持ったリザードマンがドロップするんだろうとは思っているのだが、今のところその様子はない。
まあ、武器に関してはまた後で狙うとして、今は『アサシンブレイク』だな。
『アサシンブレイク』が動き出したようで、目撃情報が増えている。
またあちこちでPKが起きているようでネットでは、メンテ前の最後に稼いで起きたいのでは? という意見が多いのだが、それは違うのではないかと思う。
ネットに転がっていた『リトル・ブレイブ・オンライン』のアンタレス周辺地図に目撃情報を書き込んでいったのだが、どれもそう遠くない距離だ。
露骨なんだよな。
明らかに誰かを誘い出すかのように、彼らはPKを行っている。
まあ、誰かというか、俺なんだろうな。すでに俺をPKするための準備ができたからこそ、彼らはPKを行い、俺を誘い出している。
なんなら、ここは匿名掲示板だ。もしかしたら、この目撃情報ももしかしたら嘘も混じっている可能性がある。
ここで動かないとなれば、今度は誰も助けてくれなかった、とか書き込んで俺を誘き出すためかもしれないな。
「お兄様、どうするんですか?」
「予定通り、『アサシンブレイク』と戦うつもりだぞ」
「……だ、大丈夫なんですか? ほら、あの他の冒険者さんに協力を申し出るとか」
「そんなことしたら楽しくないじゃん。ほら、早速配信開始するから、ルルラ頼むな」
「……や、やっぱり私がするんですか!?」
「内気を治したいんだろ? 司会進行解説頼むな」
「ほ、ほぼ全部じゃないですかぁ!?」
ルルラが瞳を戸惑いで揺らしながら叫ぶなか、俺は配信の準備を進める。
タイトルに『アサシンブレイク』や『リトル・ブレイブ・オンライン』という単語を使い、PKKなどの用語もあわせておく。
あと、サムネイルの画像は準備していたものがある。ルルラと俺が一緒に映っているものだ。
配信の準備が完了したので、早速配信を開始する。事前に枠自体は確保していたので、わずかだが待機していた人たちがいるようだ。
俺はすぐに分身にTwotterで配信開始を告げる呟きをしてもらう。あとは、細かいことは分身に管理させるつもりだ。
俺が配信を始めると、すぐにいくつかのコメントがついていた。
分身を通して内容は理解できるので、別に画面を見る必要はないのだが、ルルラにコメントが見えるように俺の眼前に表示する。
ルルラにだけ見えるように設定をし、カメラの位置もルルラが映るように調整する。
〈ひょっとこ兄貴初めまして!〉
〈おお、とうとう配信開始したのか!〉
配信を開始してすぐに視聴者が500人を超えた。
平日の昼間というのに、暇人が多いようだ。まあ、今の時期だと春休みに入っている学生も多いみたいだしな。
まだまだ視聴者は増えていて、この調子なら1000人は超えそうだな。
ルルラはじっと俺の方を見ている。もう配信が始まっているのだが、まだわかっていないようだ。
〈ルルラちゃん可愛い〉
〈何この生き物……天使か?〉
「え? あ、あれ? お兄様? もしかしてもう配信始まってますか?」
「ああ、そうだ。これから頼むな」
「うえ!? 始まっていたのなら、教えてください!」
〈慌ててるルルラちゃんも可愛い……〉
〈ルルラちゃんの声めっちゃ癒されるわ……〉
〈ていうか、ひょっとこ兄貴のことお兄様って呼んでるのか?〉
「は、はいそうです。何となくそれが一番呼びやすいなって思ったので……」
〈いいなぁ、ひょっとこお兄様……〉
〈もしかして、フェアリーと契約した時に呼び方とかって決められるのか?〉
早速質問が来ている。ルルラは戸惑いながらも丁寧に相槌を打つ。
「聞いてみてください。フェアリーによって、呼びたい言い方とか……色々あると思いますので」
〈ひょっとこ兄貴ー! ルルラちゃんをお嫁にくださいー!〉
「お、お兄様! なんだか、変なコメントさんがきてますけどどうしますか!?」
「嫁に行きたかったらどうぞ自由にしてくれ」
俺が答えると、ルルラはすぐに申し訳なさそうに頭を下げる。
「ご、ごめんなさい。私、今お兄様と契約してますから……」
〈フラれてて草〉
〈羨ましいなひょっとこ兄貴〉
〈ああ、俺も早くフェアリーたんと契約してぇ〉
〈ひょっとこ兄貴! マイたんを僕にください!〉
「おい、今コメントしたやつぶち殺してやるから住所書け!」
「お兄様!?」
ルルラが驚いたように声をあげる。
しまった。俺としたことが。
こほんと咳払いをしてから、勇者の力を使いコメントをしたやつの住所を冷静に特定しておいた。勇者の力って便利。
〈やっぱりこの人シスコンだ〉
〈それも常軌を逸したレベルのなw〉
コメントを分身を通して確認していると、ルルラがむーっと頬を膨らませる。
「お兄様。私のときはまったく怒ってくれなかったですね」
「え? この、よくも俺のルルラにー、怒っちゃうぞー」
「感情、全くこもってないです」
むすーっと余計にルルラは怒ってしまった。
―――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆やフォローをしていただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます