第35話
ネットでは、何かしらの文字の法則があると考えているようで解析班が解読中らしいのでそれを待ったほうがいいかもしれない。
……ただ、それはつまり最速攻略ができなくなるわけで、舞に褒められる機会が減ってしまうんだよな。
そんなことを考えているとルルラがひょこりとポケットから姿を見せた。
何か気になるようで、きょろきょろと周りを見ていた。
「ルルラ、何か分かるのか?」
「……えっと、その。なんだか不思議な力を感じると言いますか……」
なんだって?
ルルラに期待して視線を向けていると、何やらこちらに迫る気配を感じる。
視線をそちらに向けると、
「誰か……! 助けてください……っ!」
そんな悲鳴が聞こえた。
……あれは、プレイヤーか。
何かのクエストが発生したのかと期待したがただのプレイヤーのようだ。
可愛らしい見た目をした女性だ。銀色の髪を揺らしながら登場した彼女は何やら王女様のようなドレス姿をしている。
このゲームでは自分のVTuberのアバターなどをそのまま反映することができるそうだが、彼女もまさにそんなVTuberらしい派手さがあった。
必死に逃げてきた彼女に視線を向けると、その後からさらに複数の男性が追いかけてきた。
「はは、逃げたって無駄だぜ、なつみちゃん」
「コメント欄凄い盛り上がってんなぁ! やっぱ、有名人とのコラボはいいねぇ!」
ニヤニヤと笑いながら迫ってきた男性たちは、合計五人だ。
……コラボ、というが女性の様子をみるにコラボという感じはしないな。
「ん? なんだあいつ?」
男たちが、俺に気づいたようだ。何やら苛立った様子で声をあげる。
「ちっ、ここが例のワールドクエスト関係の場所だからみにきた一般人だろ……」
「い、いや……待て、あれって!」
こちらを指さしてきた男たちの表情が、何やら狂気の笑みで飾られている。
「ひょっとこ兄貴じゃないか!?」
あんな奴らでも、俺のことは知っているようだ。
「うっひょー! ラッキー! まさかこんなところでさらに有名人に会えるなんてなぁ!」
「しかもちょうど一人じゃねぇか……!」
舌なめずりをする彼らが、何か嬉しそうに叫んでいる。
その隙に、逃げてきた女性はこちらへとやってきて、すがるようなめでこちらを見てきた。
「た、助けて……っ! PKに追われてて!」
「……PK、ああ。あいつらやっぱりそうなのね」
例の初心者狩りか?
こちらの女性はもちろん、向こうの男たちも何やら配信をしているようだな。
「さあ、視聴者ども! みてくれ! ここにあのひょっとこ兄貴がいまーす!」
「これからぶちのめして、金と武器を巻き上げたいと思いますので、チャンネル登録よろしくな!」
……ほぉ、何やら調子のいいことを言っているな。
あんな生意気な奴らでも、配信とかで結構稼げるのかね?
「えーと、あんた名前は?」
俺は近くにきた女性に声をかける。
「わ、私は空城院なつみって言うんだけど……」
「死にたくなかったら、俺の後ろから出るなよ?」
「……え?」
俺はそれだけを空城院に告げ、両手に短剣を構えた。
向こうもこちらのやる気に気づいたようで、ニヤニヤと笑みを浮かべてくる。
「知ってるか? ひょっとこ兄貴。このゲームはレベル差があってもプレイングでカバーできるんだぜ?」
「オレたちは、他ゲーのVRで瞬間一位をとったこともあるプロなんでな?」
「そしてこの数の差だ。相手が、悪かったなぁ!」
三人が叫びながらこちらへ突っ込んでくる。
二人は、後方にて待機している。魔法使いと弓使いか。
三人の前衛は全員戦士か? 皆、もれなく目は赤いので、空城院以外ですでにPKしたことがあるのだろう。
PKKを行っても、特に罪にはならないらしいので……心置きなくやれるな。
つっこんできた三人に合わせ、矢が飛んでくる。
こんな攻撃、異世界で散々見てきたな。
軽く短剣で弾く……だけじゃない。その矢を打ち上げるように弾き、即座に左手の短剣で撃ち返す。
「え?」
矢は、近くに迫っていた戦士の腕に突き刺さる。
前衛二人が驚いたように目を見開いている間に、俺は持っていた短剣を【投擲】する。
「当たるかぁ!」
迫っていた男の顔を狙った俺の短剣は、かわされた。
「かわして良かったのか?」
俺が不敵に笑いながら言ってやると、遅れて彼らの背後から悲鳴が上がる。
俺の投げた短剣は、魔法を構えていた男の胸に突き刺さっていた。
男が壁になっていたのと、魔法チャージ中で油断していたのだろう。
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