第34話




 昼を食べ終えた俺たちは、すぐに部屋へと向かう。


「それじゃあ、またあとでね!」

「ダンジョン攻略頑張ってな。あと、街についたら言ってくれ」

「りょうかい!」


 たぶん、舞たちもクランを作りたがるはずだ。その時に、クランハウスを契約できるようにしてあげないと。

 舞にお願いされたら、どれでも選べるようにしてあげる必要がある。

 クランハウスを建築するための金だって、送金予定だ。

 動画編集をしている分身に労いの言葉をかけつつ、さっそく仮想世界へと入る。

 すると、ルルラが俺の近くに出現した。


「あれ、おまえまさか仕事サボってるのか?」

「ち、違いますお兄様! 全部売れたんです!」

「本当か? そいつはすごいな。ちょっと喜びのダンスを踊ってみてくれるか?」

「よ、喜びのダンス……? こ、こんな感じですか?」


 慣れない様子でルルラがその場で踊り始める。踊る、と言っても彼女はぷかぷかと浮いているんだけど。

 俺はそれをしっかりと動画に収めていく。


 よし、これをショート動画として俺のチャンネルであげていこう。

 どこぞの誰かに勝手にあげられて、急上昇を取られているみたいだしな。

 奪い返しにいかなければ。


「お兄様……今のでいいですか?」

「ああ、ばっちりだ。これを動画サイトにあげるからな」

「ど、動画サイト!? それって、お兄様の世界のものですよね!? たくさんの人がみれるっていう……!」

「そうだ。ルルラはきっと人気者になるぞ?」

「で、でも恥ずかしいです……! 勝手にあげるなんて、ダメ! やめてください!」

「いやでももう勝手にあげるやつがいるんでな……」

「うえ!?」

「そういうわけで、そういう奴らに負けないように俺があげようと思ったんだ。大丈夫だ、ルルラは可愛いからな」

「……わ、私……可愛いですか?」

「ああ!」

「ど、どれくらい可愛いですか?」

「どれくらいとは?」

「せ、世界一……とか」

「いや、世界一は俺の義妹だぞ? その次の……次の次の次の次の次くらいには可愛いぞ!」

「……むぅ」


 俺としてはわりと全力で褒めたのだが、ルルラはちょっと不満そうに頬を膨らませた。

 だとしても、俺は自分に嘘はつけない正直者なので、訂正はしなかった。




 ひとまず、ワールドクエスト関連を調べるために、アンタレスの街に移動したのだが……ひょっとこ仮面はあまりにも目立つようになってしまった。

 初心者向けに武器を売る人、としてな。

 あと、ルルラもな。


 こういうときは、スキルの出番だ。


「ルルラ。とりあえず、俺のポケットに隠れててくれ」

「はい、お兄様っ」


 とりあえずポケットに隠れてもらい、俺は【偽装者】を発動する。

 性別も変化させておけば、まず分からないだろう。


『あ、あれ? お、お兄様?』

『今はお姉様とおよび!』

『ひっ! お、お姉様! ……もしかして、下もなくなってるの?』

『やべ、下消すの忘れてた』

『ひっ、ふたなり!』


 そんなチャットをしつつ、下のブツを隠した俺は街を歩いていく。

 とりあえず、アンタレスの外に出るため移動していると、目が赤い男を見つけた。

 むこうはこちらに気づいたがすぐに視線を別に向けた。


 PKしたやつは目の色が赤くなるんだったな。あいつはもしかしたら初心者狩りを行っている話題の連中なのかもしれない。


 一定期間PKを行わない限り、目の色は元に戻らないらしい。

 PK中の者は街の施設を利用できなくなるらしいが、街内には普通にいられるようだ。

 顔を隠していることも多いため、普段仮面などをつけているやつがいたら要注意、と書かれていた。


 あれ? これ俺もPKと思われるのではないだろうか?

 職業は【暗殺者】だし、完全にそう見えるな……。


 やべぇ、せめて目の部分だけは見えるようにしたほうがいいか?

 ひとまず、外に出たところで変身は解除する。MPの消費も結構あるからな。周りに人がいなければひょっとこ仮面でもいいだろう。


 俺はそのまま雑魚を狩り、掲示板にあった石碑が並んでいる場所へときていた。


 ……ここか。

 いくつもの石碑が並ぶそこには、よくわからない文字が書かれている。

 ……このゲーム世界の言語だろうか? 何が書いてあるか分からん。


 リアル世界の体でくれば、こういったものも解読できると思うんだが……さすがに無理だな。





―――――――――――

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