第33話




 さて、【ワープ】の入荷は終わったのだが……今後どうするかだな。


 掲示板に書いてあった、ワールドボスモンスター。

 ……正直、そそられる。

 どれだけ強い魔物なのだろうか?


 何より、もしも達成したらどれだけ舞に尊敬の目を向けてもらえるのか……。

 ぐふ、ぐふふふふ。


 ただ、現状意味深な情報は出ているが、まだその姿は発見されていないらしい。

 どこかのダンジョンにいるのか、はたまた何かしらのクエストを達成すればいいのか……。


 分からないな。 

 そっちは引き続き情報を集めていきたいが、真っ先に討伐するためには真っ先に発見する必要がある。


 ……俺もあちこち行って手段を見つけないといけないよな。

 それと、そろそろ……イレルナにもプレイヤーたちが到着しそうだな。


 『聖連隊』と『ディメンション』が現在ダンジョンを攻略中らしい。

 あそこを超えたら、すぐイレルナに到着するだろう。

 そうなれば、『聖連隊』はクランハウスを手に入れようとするはずだ。


 そろそろ、俺もすべてのクランハウスと契約を進めておく必要がありそうだな。


 

 せっかく稼ぐチャンスがあるのなら、使わない理由はないからな。

 すべてのプレイヤーたちのゴールドを俺がかすめられれば、それだけ舞に貢げる金額も増えるというわけだからな。


 イレルナに訪れる人たちの多くが、恐らく家を契約するはずだ。


 クランハウスで使う者もいれば、店として使う者もいるだろう。

 だから俺が、先にすべてを押さえておく。


 そうすれば、多くの人たちは契約するには俺と交渉するしかなくなるからな。

 あとは、俺がその人たちに契約した時よりも多くの契約料を要求すれば稼げるというわけだ。


 ただまあ、うまくいくかどうかは分からない。クランを結成しないで次の街を目指すクランも出てくるかもしれないからな。

 ま、ダメだったらその時はその時だ。こちらも契約をそこで中断してしまえばそれでいい。


 とりあえず不動産屋に行った俺は、一週間分ですべての物件を契約する。あとは、様子を見ながら契約の破棄、延長をしていけばいいだろう。


「ありがとうございました!」


 商人の笑顔に見送られていると、新しい称号がいくつか手に入っていた。

 お金を一気に使ったことと、一つの街のクランハウスを独占したことによる称号のようだ。

 特に効果はないが、ボーナスポイントが入るのだからラッキーだ。


 一つの街の物件をすべて獲得した場合に手に入る称号はなかなか狙えるものじゃないだろうし、ラッキーだったな。

 いつものように筋力1、敏捷2のペースでステータスを割り振っていると、そろそろ昼食の時間だ。


 そろそろお昼の準備をしないとな。

 いつも舞に任せてしまっているので、今日は俺の当番だ。

 ひとまず、外の肉体を分身させ、そいつに命令を出しておいて、料理を任せる。


 料理、といっても乾麺を茹でるだけだ。今日は結構暖かい日だったので、そうめんだ。

 また【ワープ】が売り切れてしまったようなので、追加で購入しつつ俺は現実と仮想世界の両方で活動を開始した。



 分身が昼飯を作り終えてくれたようなので、俺はログアウトをする。

 すでにテーブルには料理が完璧に準備されていた。


「舞ー! 飯食えるぞ!」

「うん、今行くよ!」


 呼びかけると舞もちょうど切り上げていたところだ。

 もともと、食事の時間はお互い決めていたので、それに合わせて準備をしておいたというわけだ。

 だだだ、と元気よく階段を降りてきた舞とともに席に着く。

 そうめんをとって、麺つゆにつけてちゅるり。うん、完璧な茹で加減だ。さすが俺の分身だ。


「兄貴ー。配信で言われてたけど、武器屋オープンしたの?」

「おう。なかなかの売り上げなんだよ」

「それに、なんだか凄い可愛いフェアリーと契約したんだよね? いいなぁ」

「ルルラな。レベル30まであげれば仲間にできるみたいだぞ?」

「あっ、それあたしも配信で聞いたよ! でも、そこに行くまでまだまだかかるよ。やっとみんなのレベル27くらいになったところなんだけど、いけるかな?」

「皆の腕前は知らんが、少なくとも武器は推奨レベル級だしなんとかなると思うけどな?」

「だよね……でも、もしも全滅したらかなりのロスになっちゃうから結構身長なんだよね。ボスってどんな感じなの?」

「レベル28くらいのガイコツキングだな。ガイコツ兵をそのまま強化したような感じだ」

「ガイコツ兵をそのまま強化ってだけなら……皆でうまく立ち回ればいけるかな」

「俺は大丈夫だと思うぞ?」


 舞は可愛いからな。冗談だ。

 舞の配信を少し見たが、彼女らの戦闘はかなり上手かったからな。

 異世界の平和ボケした兵士たちよりもよほど連携がしっかりとしていたので、贔屓目抜きに問題ないと思っていた。


「早くしないと、『聖連隊』のトップたちが仮眠から戻ってきちゃうからなぁ。急がないと! そういえば、兄貴は今レベルいくつなの?」

「レベル37だな」

「はや! 兄貴早すぎるよ! どうなってるの!?」

「とりあえず、武器を新調したらワールドボスの情報を集めようと思ってるんだよな」

「……ワールドクエストだね。まだまだ分からないことが多いけど、第二の街についたらそっちも手を出していかないとだよねぇ。でも、なんだかPKの方も問題になってて、うちの事務所の子たちも狙われそうなんだよねぇ……」

「PKねぇ……なんか流行ってるみたいだな」

「そうなんだよ! 特に配信者とか狙って積極的にやってるみたいなんだよ! あいつらも配信してるから、有名配信者に絡んでいくと視聴数上がって、それでお金になるからってやりたい放題なんだから!」


 ぷんすか怒っている舞も可愛いが、舞をここまで怒らせるそいつらは許せねぇな。

 それに、舞の後輩がもしもいじめられたら、きっと舞も悲しむことになるだろう。

 そしたら俺が怒り狂うことになるわけだ。


 そのうち、様子でもみにいくとするかね?

 そんなことを考えながら食事をしていた俺は、もう一つ考えていたことを舞に伝える。


「そうそう。動画を投稿しようと思ってな」

「え? そうなの!?」

「お金稼げるみたいだしな」


 舞のグッズを買うために、現金が必要だ。

 そのためにも、俺も配信者になるのが一番手っ取り早く稼げるだろう。


「絶対人気でるよ! あたしも登録するからね!」

「それならいいんだけどな。今はここまでの戦闘動画を編集しているところだ。全部終わったら投稿していくつもりだな」


 今も俺の部屋で分身くんが頑張ってくれている。

 頑張れ、俺の分身!


「わー! それは楽しみ!」

「どうにか再生回数を上げるためにも、上げた後は宣伝お願いしてもらってもいいか?」

「もちろんだよ! 他の人たちも見たいって言ってたしね!」

「俺も、人気が出てきたら舞のチャンネルを宣伝しまくるからな!」

「お互い、頑張ろうね!」


 これなら本当になんとかなるかもな。

 やはりこういうのは有名人に宣伝してもらうのが一番だ。

 そして、俺が有名になればお金も稼げるし、舞のチャンネルの宣伝もできるはずだ。


 ふっふっふ、頑張らないとな。

 動画をバズらせるためには、今人気者のルルラにも協力してもらう必要がある。


「一気に登録者数増やすために、できることって他にどんなことがあるんだ?」

「え? 有名な人とコラボするとか? あたしも、事務所に話して一緒にできるか話してみるよ!」

「おお、いいのか?」

「うん、でもどうなるかは相談してみないとわからないけどね?」

「それでも全然オッケーだ」


 舞の事務所は女性ライバーしかいないからな。現在男性ライバーを募集中のようだが、それに対しても結構男性視聴者たちの反対が多いみたいだからな。

 あまり期待はしておかないほうがいいだろう。

 





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