第32話
俺が店を開いた時もそうだが、俺のあだ名はすっかりひょっとこ兄貴で定着してしまったようだ。
その理由が、舞が兄貴兄貴と呼んでいるからだ。
『ディメンション』のコメント欄では完全にひょっとこ兄貴で定着してしまったみたいだ。
まあ、こっちとしては大した宣伝をしないでも有名に商売できているので、悪い気はしない。
掲示板を色々とみていたが、『リトル・ブレイブ・オンライン』はマジで人気だな。
常に真偽様々な新しい情報が飛び交っているので、情報を得ている側としてはなかなか苦労する。
それにしてもゴールドを現金に変えられるのか。
……現金か。
こういったゲームでは、ゲーム内通貨を現金で購入するというのも当たり前に存在しているようだ。
特に『リトル・ブレイブ・オンライン』では、この世界でちゃんとすれば、リアルでも生活できるようにしたいと開発陣が話しているからな。
今のレートだとゴールドがそのまま現金になるので、俺は……まあ、かなりの金持ちだな。
これを日本円にしたら、舞のシチュエーションボイスもいくらでも買えるじゃないか。
今も、【ワープ】の転売で稼げているし、まじで先行者特典が強い。
そりゃあ、皆最速で攻略したがるわな。
あとは……掲示板に書いてあったルルラの動画を見てみる。
ショート動画が上がっているな。
一生懸命店番をしているようだが、必死に笑顔を浮かべている。
確かに頑張っている姿が可愛らしい。再生数もかなりのものだ。
この動画とかって、確かお金も入ってくるんだよな?
さらに舞に貢げる金額が増えるよな?
俺も……配信始めるか? 最初は知名度もそんなにないし、有名になるのは難しいと思ったが、これなら話は別だ。
ルルラと、舞たちのおかげで知名度を上げることには成功した。
これまでに撮影していた動画を軽く編集してあげていけば……もしかしたら俺も再生数を稼げるかもしれない。
掲示板を流し見しながらも、俺は戦闘を重ねていった。
新スキルの性能を試すためにだ。
その結果は……購入して良かった、という感想だ。
どれも無難に使い勝手が良い。
痒いところに手が届くスキルたちだ。
一番使い勝手が良かったのは【投擲】だな。
【投擲】に関しては装備していない装備でも発動できるので、インベンントリに眠っていた短剣たちでも使用できる。
それに、短剣じゃなくても他の武器でも可能だ。
ただ、【投擲】で使用した武器は、捨てた、と同義であるため魔物に使われる可能性もある。
なので、メインの武器とかは使わない。【投擲】用の安い短剣を村で大量に仕入れに向かった。
これで、十分だな。
まあ、あくまで牽制程度に考えておいたほうがいいだろうな。
スキルの確認を終えた頃には、レベルは37まで上がっていた。
基本格上をソロで倒していたおかげで結構上がったな。
今俺がいるのは、南の森近くにあった村だ。
この辺りに出現する魔物はレベル40ほどであるが、村関係の称号もあって問題なくダメージが通る。
……ただまあ、そろそろ新しい短剣を手に入れたい時ではあるが。
『お兄様! 【ワープ】、完売しちゃいました……っ』
ルルラからメッセージが来ていた。
声で文章を打ち込んでいるからか、詰まった音まで入っている。
『わかった。まだ需要はありそうか?』
『はい……。まだ欲しい人はいて、今も待ってます……』
『それなら仕入れるから時間を稼いでおいてくれ』
『じ、時間を稼ぐって……どうすればいいですか!?』
『笑顔で歌でも歌っててくれ』
『ええ!? そ、そんな恥ずかしいですよ……っ』
『内気を治すのにいいはずだ……頑張れ! ルルラならできるぞ!』
『で、できるかな?』
『ああ、たぶんなー』
『お兄様、適当に返事してないですか?』
『してないしてない。で、何の話だっけ?』
『怒っていいですか、お兄様?』
『冗談だ。時間稼ぎ頼むなー』
最後の返信を確認したところで、俺は【ワープ】でイレルナへと移動し、【ワープ】を購入してルルラに販売してもらっていった。
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