第29話



 契約を終えたルルラは、俺の肩のほうにゆっくりと飛んできた。


「の、乗ってもいいですか?」

「別にいいぞ?」

「し、失礼します……っ」


 ぺこり、と頭を下げてから、ルルラは俺の肩へと乗ってきた。

 俺の肩に乗ったルルラは、とても嬉しそうであった。

 周りのフェアリーが羨ましそうに見ているので、どうやらフェアリーたちにとって契約者の方に乗るというのは憧れのようなものがあるのかもしれない。

 俺も、なんたらマスターになった気分だ。


「それじゃあ、そろそろ戻るかな」

「もっと強くなったら、もっと契約できるようになると思うからまた遊びに来てねー!」


 やっぱり、レベルをさらに上げれば契約でいるフェアリーを増やせるのかもしれないな。

 この子たちは、ソロで遊びたい人向けのお供キャラなのかもしれない。

 性別はもちろん、見た目や性格もかなり種類が豊富なので、気にいる子は確実にいるだろうしな。


 俺は【ワープ】を発動し、ひとまずイレルナの街へと移動する。


「わあ、人間さんの街!」

「あんまり離れるなよ。食べられるかもしれないからな」

「え……? に、人間さんって私たち食べるの?」

「ああ、大好物だ」

「……そ、そんな……っ!」

「冗談だ。迷子になられたら困るからあんまり離れるなよ」

「……も、もう!」


 俺の冗談にむっ、とルルラは頬を膨らませる。

 からかいがいのある子だな。

 【ワープ】の移動先は街の中央になるようだ。

 これなら、街の中央に店を構えるといいかもしれない。


 NPCに話を聞けば誰でも情報を教えてくれるのかもしれないが、俺はシスターさんに話へ向かう。

 俺のこの街での相棒みたいなものだからな。


 転職神殿に到着すると、いつものように休みなく働くシスターさんがいた。

 今日も今日とて、社畜だなぁシスさーさんは。

 俺の方を見て、フェアリーがいることに気づいた彼女はいつもの穏やかな笑顔を浮かべる。


「無事契約できたのですね」

「ああ。それで、店を出したいと思ってるんだけど、特に申請とかは必要ないのか?」

「ええ、異邦人の方であれば商売に関しては自由にしてもらって問題ありませんよ。もしも、出店のような枠が欲しいのであればアイテム屋などに置いてあると思いますよ」


 出店か。別に店がなくとも、販売をする上では問題なさそうだが、あったほうが目立つよな。

 それに看板でもつけておけば、よりわかりやすくなるはずだ。


「よし、ルルラ。アイテム屋いくぞ」

「は、はい……っ!」


 転職神殿にいた猫と戯れていたルルラに声をかけると、すぐにこちらへ戻ってきた。

 俺がアイテム屋に移動し早速アイテムを見ていく。


 回復系アイテムなら、あの村で買った方が安く変えるな。

 出店のようのアイテムは……グレードがいくつかあるな。

 とりあえずは、この木造のやつでいいか。あと、看板もつけられるようで、合計で三万ゴールドほどだ。


 まあ、このくらいならすぐにペイできるだろう。

 看板にも色々なタイプのものがあるが、俺は旗をつけておいた。


 俺のトレードマークではないが、ひょっとこ仮面のおかげでそこの部分が注目されているので、ひょっとこの絵を書いてみた。


「こんなもんか?」

「……え? ……これ、なんですか……?」


 ルルラが微妙な顔をしながら俺の絵を見てきた。


「このひょっとこだ」

「…………私、書きましょうか?」

「書けるのか?」

「こ、これよりはうまいと、思います」


 わかってるわ、自分の絵が下手なことくらい。

 俺は少しいじけながら、ルルラに旗を書いてもらった。



「それじゃあ、早速店番頼むな」


 アンタレスの街へと【ワープ】する。場所は噴水広場だ。

 ここが最初のログイン地点でもあるからか、かなりの人で溢れている。

 なるべく、邪魔にならない隅のほうに移動したところで、俺は出店をおいた。


 俺が店を展開すると、さすがにすぐに近くのプレイヤーたちの視線が集まる。

 俺の近くにいたルルラが、少し緊張した様子で顔を引き攣らせている。


「慣れるまでは大変だと思うけど、頑張ってくれ」

「……は、はいっ」

「えーと、売りたいアイテムは……おっ、これ便利だな」


 どうやって店舗に並べるのかと思っていたが、俺のインベントリに店用のものが増えていた。

 手持ちのインベントリから、店用のインベントリに移せば、商品を即座に並べることができるようだ。

 値段を設定しておけば、あとはルルラが販売していってくれるらしい。


「ね、値段の目安とか決めておいてください……! 売りたい範囲を教えてくれれば、それで交渉しますから……!」

「ほぉ、了解だ」


 これなら、ルルラを店に貼り付けたままで俺は現地調達にいけそうだな。

 今ある装備品と【ワープ】のスキルブックをそちらに移動させる。


「それじゃあルルラ。頼むな」

「はい……っ! が、がんばります!」


 ルルラを出店に配置したところで、俺はイレルナの街へと戻り、掲示板にスレを立てた。






―――――――――――

新作投稿しました!

https://kakuyomu.jp/works/16818093075391995337


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