第10話


 メニュー画面を見てみると、クエスト一覧というのがあった。

 そこを確認してみると、オークの襲撃、と言うものが追加されていた。


 ヘルプにも書かれているが、現地人たちは日々様々な悩みを持っているらしく、会話をすることによってクエストの発生、受注が可能になるらしい。


 ランダムクエストと呼ばれるそれらはもう毎日更新されるらしく、早い者勝ちということらしい。

 AIなどでランダムで生成しているんだろうな。知らんけど。


 それによって、異世界感を増すようにしているんだろう。

 この『リトル・ブレイブ・オンライン』の世界が平和な場所になるかどうかは異邦人の俺たちにかかっているらしい。


 凝ったゲームだな。通常、ゲームの世界というのは完成した世界観があるものだが、このゲームでは異邦人たちによってどうにでも変わってくるようだ。


 例えば、魔物が発生するイベントを放置し続けていたら、街や村がなくなるとかそういう事態もあるようなことが示唆されている。


 世界が完全崩壊した後とかはどうなるんだろうな? そんなことをぼんやりと考えながら俺はオークが村を襲ってくるのを待っていた。


 オークを仕留めるとはいったが、今の俺のステータスだと称号を活かさないとまともに攻撃は通らないだろう。

 称号ボーナスで、俺は村近くで戦闘すれば能力が上がるので、ひとまず待機。


 その間に、新しく獲得したスキルを確認していく。

 ひとまず、戦闘以外で使用できるスキルを確認だ。


 【鋭い感覚】を発動してみる。

 なるほどな。これまで俺が自力でやっていた索敵の範囲が伸びる感じか。

 リアルならもっと広範囲の索敵ができるのだが、それはスキルレベルが上がっていけばまた変わるのかもしれない。


 あとは、【影遁の術】か。相手の感知などに引っ掛かることがなくなるようだが、どうなんだろう。

 とりあえず、足音や足跡は完全に消えている。……ただ、今の段階だと効果時間が短いか。

 村人の横を過ぎたが、特に視線を向けられることもない。


「ちょっといいか?」

「うお!? びっくりした!?」


 ……村人にはどうやら俺の姿が見えていなかったようだ。

 消えている、わけではなく路傍の石のようになっているのだろう。


 意識すれば見られる、一度発見されてから再度発動しても消えるようなことはできない。


 あくまで、標的の意識にいない間に使うスキルか。


 これならリアルで使えるステルス魔法の方が使い勝手がいいなぁ。まあ、まだ【暗殺者】になったばかりだし、あれこれ求めてはダメか。


 残りのスキルは戦闘中に使用するものだろうし、あとはオークを待つだけだな。

 そんなことを考えていたときだった。村人たちから悲鳴が上がった。


「お、オークが来たぞ!!」

「……またかよ!?」

「クソっ! すぐに戦えるものは準備をしろ!」


 そんな叫びが聞こえてきた。

 おっ、村人たちも戦ってくれるのか。


 村人たちが装備を持って村の外へと向かうのに合わせ、俺もその後を追う。

 外に向かうと、すぐにオークを見つけられた。


 クエスト限定のオークなのだろうか? 通常とは少し違う個体のようで名前が『ユニークオーク』と表示されている。

 じっと様子を眺めていると、村人たちとオークとの交戦が始まったのだが、村人たちに勝てる要素はなさそうだ。


 ……現地人は死ねばそこで終わりなんだったか。


 ゲームとはいえ、まじで悲鳴を上げられたり傷に痛む姿を見せられるのはあまりいい気がしないな。ほら、俺元勇者だし。


 そういうわけで、俺は【影遁の術】を発動しながら、ユニークオークへと突っ込む。村人たちがデコイになってくれているおかげで、まったくこちらに気づいていない。


 まずは一撃を与えよう。【致命的な一撃】を発動すると、ユニークオークの弱点と思われる部位に星のようなマークが見えた。

 脇腹か。

 一気に地面を蹴り付け、【音の先へ】を発動して突っ込む。


 身体強化の魔法みたいな感じか。ただ、速度しか上がらないから使い勝手はそこまで良くなさそうだけど。


 突き出した短剣がユニークオークの弱点に寸分違わず突き刺さる。


「グア!?」


 悲鳴を上げよろめいたユニークオークへ、俺は追撃の短剣を振り抜きながら、【暗殺宣告】を発動する。

 これで、ドロップアイテムが増加するはずだ。


「あっ、あなたは先ほどの……!」

「もしや、村の英雄ではありませんか!?」


 ……ああ、もしかして称号のことか?

 ここは村近くなので、称号の効果も発動している。おかげで、レベル1だというのにユニークオークにもかなりのダメージを与えることができているようだ。


「ああ、そうだ! おまえらは魔法とか遠距離武器で援護してくれ! 俺が仕留めるからよ!」

「わ、わかりました!」


 そういうと、持っていた弓や石を投げて攻撃していく。

 ……別に、俺一人で倒す必要はないもんな。

 村人たちの攻撃によるダメージは微々たるものだが、それでも注意を分散させてくれるのはありがたいな。





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