第9話
転職を終えた俺は、獲得した称号を活かすために村を探そうと思ったのだが……情報を集める手段が分からない。
まあ、迷ったら現地人に聞け、だな。
異世界では女神を呼び出せば、ナビしてくれたものだが、あれはかなり優しかったんだな。
ちょっぴり女神に感謝しつつ、近くのNPCに声をかける。
「なあ、あんた。この近くに村とかってないか?」
「ん? あー、一応あるな」
「場所とかって分かるか?」
「この街の東門から出た先にいるな。ただ、東側のエリアは結構魔物強いから気をつけろよ。あんたまだ新人の異邦人だろ?」
「ま、そうだけどな。とりあえず、行ってみるわ」
「ま、異邦人は死なないみたいだからいいけどな……気をつけろよー」
NPCがそう言って手を振ってきた。
俺は移動しながらメニュー画面などを弄っていると、色々とできることがあることに気づいた。
普通にWEBを開くこともできるし、そこで自分だけが見えるように動画サイトなどをみることもできるようだ。
なるほどな。これで素材集めとかしているときの暇つぶしもできるな。
まあ、仮想現実感はなくなってしまうから、ちょっともったいない気もする。
せっかくだし、この世界を楽しみたいからな。
とりあえず、舞の配信を見たい気持ちはあったが、それはあとで集中してみるとして、掲示板を覗いてみる。
ざっとスワイプして、一気に情報を取得していたのだが、その中に気になる文字があった。
465:名無しの異邦人
これ、レベル1で討伐する魔物重要だぞ!
466:名無しの異邦人
なんで?
467:名無しの冒険者
最初に称号もらえる
なるべく高レベルの魔物を倒したほうがいいみたい
468:名無しの異邦人
でも、死んだらデスペナルティあるだろ?
469:名無しの異邦人
だから無茶しない範囲でだな
へぇ……そうか。
俺はヘルプを見てみる。
『称号は、様々な行動で獲得可能です。ヒントをあげますが、基本的には困難と思われることを達成すると獲得できることがあります』
なるほどな。
チュートリアルでもそうだったな。
連続で盗賊を仕留めたり、無傷で仕留めたり……。
そういった無謀な行為がいいんだな。
村に行くまではいいとして、なるべく高レベルの魔物と最初の戦闘はしたほうがより強くなれそうだな。
そうとなれば、隠密行動だ。
街の外へと出た俺は、周囲の警戒をしながら進んでいく。
足跡や気配を探ってみると、リアルのように感じられるのだが敵の把握は難しくない。
本当に、リアルな作りだよな。
慎重に移動した結果、俺は魔物に遭遇することなく、目的の村まで移動できた。
だが、到着した村はどこか寂れている。
……村の人たちも元気がないな。
異世界でもこんな感じの村があったものだ。
魔物の被害によって、村が危機的状況に陥っていたんだよな。
いつもなら笑顔で勇者権限を使い、村のものを押収していたのだが、さすがに俺も少し心配しながら押収したものだ。もちろん、その村の問題も解決してやったしな。
入り口近くにいた村人が、明らか声をかけて欲しそうに何度もため息を吐いている。
……これ、もしかして何かしらのクエストでも出てるのかね?
「何かあったのか?」
「……はあ、旅の人ですか?」
「そうだ。何か村であったんだろ? ほら、さっさと言えって」
「……せっかちな方ですね。あなたが言うとおりです。……ここ最近、村の近くにオークが現れまして……何とか撃退していますが、どんどん兵士たちが傷ついて言ってしまって……もう耐えられそうになくて」
「なるほどな。それは大変だな。頑張れよ」
「……え? 異邦人の方ですよね? 助けてくれないんですか?」
「助けてほしいのなら誠意を見せてみろ、誠意を。何かくれるのか?」
「……い、異邦人の方は皆優しいと聞いていましたが、あなたは酷い人ですね」
「あー、もうそれ聞き飽きたわ」
異世界では、「勇者なのに」と散々言われたものだ。勇者なら無償で助けろ、みたいな異世界だったもので困ったものだ。
まあ、でもオークか。 最初の討伐モンスターとして、悪くないのではないだろうか?
「まあでもオークをぶっ倒せばいいんだろ?」
「それは……できるのであればお願いしたいですが、異邦人の方はレベルがあるんですよね? いま何レベルなんですか?」
「1だが?」
「……む、無理ですよ? レベル20はあるような魔物ですよ!?」
「でも、オークだろ? 大丈夫大丈夫。あいつら結構バカだから。余裕余裕」
「……ああ! 死んでも知りませんからね!」
「残念でした、異邦人は死なないんですよー」
村人がそう叫んでいたが、俺は気にせずステータス画面を開いた。
もちろん、今のままオークを倒せるとは思っていない。
ひとまず、ステータスポイントを割り振っていくとしよう。
ヘルプを見たところ、職業によって多少の違いはあれど、基本的には筋力が攻撃力に関係しているようだ。
あと、敏捷力だな。相手より速く動ければ、なんとかなるだろう。
俺はステータスポイントを割り振っていった。
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