第11話
「ガアア!」
ユニークオークが苛立ったように周囲を睨みつけるが、その隙に俺が一気に距離を詰めて短剣を振り抜いた。
短剣術には慣れているからな。無駄なく切り続けると、苛立ったように持っていた棍棒を振り抜いてくる。
リアルの体よりスペックが低いので、動きは先読みしてかわさないといけないな。
ただ、慣れてくればユニークオークの動きは単調で、かわすのは難しくない。
弱攻撃、弱攻撃、強攻撃……それの繰り返しだ。
小さく棍棒を二回振ったら、一度思い切り振り抜いて隙が生まれるので、そこで一気に短剣を叩き込めばいい。
なんなら、弱攻撃といっても、ユニークオークの動きに無駄があるので、紙一重でかわしながら腕を斬るなどもできる。
……簡単すぎるな。
ただ、たまにちょっと溜めてその場で回転攻撃をするので、それを見たら突っ込んではいけない。
「ぐ、アアア!」
俺の連撃にユニークオークがよろめきながら、悲鳴をあげる。
「そんな隙あるのか?」
咆哮を上げている間に俺は弱点へと短剣を叩き込み、トドメのつもりで思い切り深く突き刺した。
「……アッ」
俺の短剣が深く突き刺さったユニークオークの目から光が消えた。
その体が崩れ落ちると、それから粒子状にその体が消えていき、ユニークオークは完全に消滅した。
『【レベル1の大番狂わせ(Sランク)】を獲得しました。ステータスポイントを獲得しました。また、自分よりレベルが高い相手と戦う場合、ステータスが上昇します』
『【無傷の先導者(Sランク)】を獲得しました。ステータスポイントを獲得しました。パーティーのリーダーを務める場合、自身と部下のステータスが上昇します』
おお! やったぜ!
レベル1のとき限定で手に入るだろう称号を入手できた!
これはきっとレアだろう。あとで舞に見せて、褒めてもらおう。
ユニークオークがあの程度ならもっと上の魔物を狙いたい気持ちもあったが、まあいいだろう。
【先導者】は、村人たちを率いて戦ったからついたのだろうか?
パーティーを組んでいれば、いずれは達成できそうな称号だが、こいつも便利だな。
それと、ユニークオークの倒れた場所には武器がドロップしていた。
拾ってみると、武器名が表示される。
「オークの斧か。こいつはいらねぇな」
とりあえず、売却だな。ていうか、あいつ棍棒しか使っていなかったのに、オークの斧はどこからドロップしたのだろうか? 腹にでも仕込んでいたのか?
まあ、ゲームだし深く考えても仕方ないか。
こういうゲームだと売却するにしても、店売りじゃなくてプレイヤーに売りつけたほうがいいのかね?
もしかしたら舞が斧使いかもしれないし、舞のためにとっておくのもありか。
俺がこのゲームをしている理由の一つは、舞に貢ぐためだしな。
ひとまずは、インベントリに入れておこう。
「あ、あの……」
「オークを倒してくださりありがとうございました。怪我人も出ずに倒せたのは異邦人様のおかげです」
「気にするな。俺たち異邦人の役目でもあるんだからな」
「……なんだかんだいって異邦人さん、優しいですね」
「なんだかんだとはなんだ。俺は端から端まで善人だぞ? ほら、報酬よこせ?」
「あっ、はい……多少ですが、ゴールドもお渡しましますね」
異邦人はこの世界に発生している様々な問題を解決するために、神様によって派遣されたらしい。
まあ、どこかの女神と違って勇者一人に全責任を押し付けていないところは見事だな。
「ありがとうございます。……確か、あなたのお名前はユート様でよろしかったでしょうか?」
「え、知ってるのか? 個人情報ダダ漏れか?」
「村の英雄ですもの。当然ですよ」
やだな村の英雄。これから、あちこち行くたびに俺は名前を呼ばれるのだろうか?
舞に呼びつけられたくてこの名前にしたのだが、変えれば良かったかも?
でも、舞に呼ばれたときのアドバンテージを考えたら、このくらい屁でもないか。
「大した報酬は払えませんがその代わりこちらの村では宿やアイテムなどは格安で売らせていただきますね」
これも称号の効果もあるのかね? あるいは、称号+村を守るクエストを達成したからだろうか?
どちらにせよ、しばらくはここを拠点にするというのもありかもしれないな。
ひとまず、村の外から村内へと移動し早速宿に入る。
ここで休むことで、体力の回復とリスポーン地点の更新ができるようだ。
他の村の宿代は分からないが、まあどちらにせよ大した金額ではないのでそこで一度泊まる。
一瞬眼前が暗くなると、宿に泊まっているという感じのBGMが鳴り眼前が明るくなる。
どうやら、これで休めたようだ。リスポーン地点もここになったので、次に死んでもこの村で復活できるな。
「とりあえず、レベル上げでもすっか」
レベルを上げればやれることも増えるだろう。
とりあえず、リアルの体くらい戦えるようにするのが、ひとまずの目標だな!
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