第12話:死角からの一撃

俺はカーラとケイトを連れて、ノドカたちと合流した。

合流した俺たちは、まず暗めの路地裏に行きカーラとケイトのことを説明した。

彼女たちがただ依頼で暗殺に来たこと、俺たちは今狙われていること、そのために戦える仲間が欲しいこと。

すぐに納得したノドカは納得してくれが、ソフィアが納得せずに難色を示している。

カーラとケイトは襲撃した負い目があるため、強く言えない。

これから一緒に過ごすことになる面々が、喧嘩したままではマズいと思った俺は

「昼飯をみんなで食おう」

と言って食堂に誘った。

食堂に着くと大きな1室に案内される。

俺が中央に座り、右側にノドカとソフィア、左側にカーラとケイトの順に座った。

俺が両側から注文を聞き、店員に頼んでいく。

ノドカはまだお酒が飲めないらしく、ソフィアも今日はお酒を控えるとのこと。

だから、俺とカーラ、ケイトがお酒を頼み、ノドカとソフィアがジュースを頼む。

それから飲み物や食べ物が来るまでの間、俺がソフィアを説得することになった。

「さっきも言ったが、今後俺たちは暗殺者から狙われることになる。今の状態ではノドカとソフィアが危ないから、俺以外でも守れる人が欲しいんだ」

俺はソフィアにそう言い聞かせる。

「それは先ほどお聞きしました。ですが、彼女たちである必要はないと思います」

まだ襲撃で俺を襲ったことに怒っているのか、彼女はそう言って引かない。

「んじゃ、そこのお嬢さんは私が何をしたら許してくれるってのさ」

「守られる側が偉そうに」

目の前で自分たちを否定され続けたカーラとケイトも怒り始める。

「冷静になってくれ、ソフィア。お前の言いたいことは分かるが、俺たちの状況を知っている方が護衛として信頼できるし、強さの確認もできている。認めてはくれないか?」

「認めるも何も、一度刃を向けてきた人は信頼できないのです!」

いつもは言うことを聞くソフィアが、頑固に抵抗する。

「信頼については、どの人間をパーティーに入れても起こり得る問題だ。それに刃を向けてきたのも依頼だと言っただろう?冒険者というのはそういうものさ。どうしてそこまで拒むんだ?」

「…っ!で、ですが、それでも認められません!」

「どうしたソフィア?いつもらしくないぞ?それともソフィアは、彼女たちに暗殺者に震えながら生きろというのか?」

「いえ……そこまでは言いませんが……」

ソフィアは何か問題があるから反対しているのは分かるが、何を問題視しているのかが分からない。

その問題を解決しようとするが話してくれない。

ずっとソフィアが反対を訴え、それをカーラとケイトが聞いて怒る。それを聞いたソフィアが更に反対を訴えていくという、最悪な雰囲気になっている。

こういう雰囲気の時はノドカの能天気さが1番なのだが、笑顔のまま何も話さず俺の裾を掴んで離さない。


今にも殴り合いに発展しそうな雰囲気の中、注文していたお酒とジュースが来た。

この時、俺はこの場を宥めることを意識して見ていなかった。

店員が酒の入ったジョッキだけ側面や持ち手ではなく、吞口を持ってテーブルに置いたことを。

そんなことを露も知らず

「まぁいい。さぁ皆で乾杯するぞ」

そう言って、俺は何も注意することなくジョッキを持ってしまった。

俺の手を飛び付くケイトが途中で見えたが、この時の俺は何事か分かっていなかった。


ジョッキを持った後、すぐ身体に異変を感じた。

身体が痺れ、呼吸が上手くできない。

座っていることさえ、厳しくなってきた。

イスから倒れそうな俺を誰かが抑え、口に何かを突っ込まれて水を呑まされる。

この時になって初めて、俺は何かしらの毒をもらったことに気づいた。

ケイトは俺を担ぎあげようとして、カーラが戦闘態勢に入る。

だが俺はケイトを突き飛ばし、肺に残った最後の空気を使って叫んだ。

「ノドカと、ソフィアを頼む……!」

ケイトとカーラは一瞬動きを止めたが、すぐに何を言いたいか把握してくれたのだろう。

急いでノドカとソフィアをそれぞれ担ぎ上げると、そのまま店を飛び出していった。

これでいい。そう思って俺はその場に崩れ落ちた。

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