第7話:初級者だらけのパーティー
ソフィアが家にやってきた翌日、俺たちは全員で拠点の裏手にあるダンジョンへやってきた。
今日の目的はノドカの鍛錬ではあるが、それにソフィアの鍛錬も加わった。
ソフィアは片手剣に盾という、ごく一般的な装備を付けている。この装備、実はマックがソフィアを預けた時の支払いとして、拠点に置いて行った武器たちだ。
だが俺はソフィアを預かったつもりはなく、仲間として迎え入れている。
だから、この武器たちはソフィアしか使っていない。そして、マックが武器屋を開いた時は祝い金として送り返してやろうと家の奥に保存している。
そんなソフィアは魔物と戦ったことが無いと言っていたが、武器屋の娘なだけあって武器の知見や戦い方を熟知していた。
そのため俺とノドカが使っている大剣と太刀では、相性が悪いことを知っていた。どちらも超攻撃的なアタッカーであり、タンクや遠隔アタッカーがいないからしょうがない。
俺も相性が悪いことは知っているが、当分はこのままでいくことを伝えてある。
ノドカやソフィアを連れてダンジョンの浅い層を探索していくが、アッサリと戦闘が終わっていく。
ソフィアは冷静に盾で敵の攻撃を受け流してから片手剣で敵を切りつけていく、パワー不足ではあるものの初級冒険者として十分な実力がある。
翻ってノドカは、太刀を振りまわしは転び、逆に攻撃を受け流されピンチに陥ることもしばしば……。
このままでは変な手癖が付くと思った俺とソフィアは、午前中にダンジョン探索を切り上げ、午後からはノドカ向けに太刀の使い方をレクチャーした。
「いいですか、ノドカ。太刀の握り方は左手が下で右手が上です。そして右手に力を入れるのではなく……」
そういってソフィアが、丁寧にノドカへ説明していく。
最初、俺がレクチャーしようと思っていたのだが
「こうやって斬ったら、ああやって斬れる。斬れなかったら筋力が足りない」
と言って教えていたのだが、すごい顔をしたソフィアに教師役を外され、俺はソフィアが指示する通りに手本を見せる役になった。
ノドカはこのレクチャー法が懐かしいらしく、かなり真面目に受けている。
そのまま夕食の時間に入ったため、実践は明日に回して就寝する。
次の日、早速レクチャーしたことを実践させるため、早朝からダンジョンへ赴いた。
試しにノドカに戦わせてみると昨日とは全く違う、敵を見て一刀ずつ丁寧に振って敵を斬る動きを見せていた。
これだったら初級冒険者として及第点だろう。
昼食までまだまだ時間があった俺たちは、次のステップを踏むため2層目へと歩を進めた。
2層目と1層目で敵の強さに違いはあまりないが、2層目から出てくるアイロンマジロが厄介だ。
アイロンマジロは硬い外皮に覆われており、丸まって突進攻撃をしてくる。この攻撃はとても弱いので脅威にならないのだが、倒すとなったら話が変わってくる。
倒すためには丸まっていない時に攻撃する必要があり、その隙を作るために初級冒険者は四苦八苦する。
1番簡単な方法は硬い外皮ごと中身を切り裂くこと、次に魔法で燃やしたり水に沈めたり、または盾などで衝撃を与えて混乱させて隙を作らなければいけない。
どれも初級冒険者にとって難しく、それ故にアイロンマジロは初級冒険者にとって避けたい魔物となっているのだ。
そんな俺たちのパーティーも、2層目に降りた直後に2体のアイロンマジロと出会う。
ノドカも1回目は避けられるが、こけてしまうため2回目以降は避けられず、何度も体当たり攻撃を食らっている。
ソフィアは避けたり盾で弾くことはできても、気絶させて隙を作ることができず苦戦している。
2人の姿を見て、まだまだ1層目での鍛錬が必要だと感じた俺は、すぐに2体のアイロンマジロを外皮ごと斬り伏せて
「ノドカ、ソフィア、まだまだ1層目で筋力を鍛える必要がある」
と言って、1層目に戻って鍛錬を始めるのだった。
その頃、ノースウッドの領主の館にて。
「依頼書にある通りだ。こんな顔をした盗賊の頭を暗殺、連れ去らわれた金髪の女を助け出してくれ」
領主はそう言って、カイルの似顔絵が描かれた紙をテーブルに放り投げる。
その紙を拾い上げ見た冒険者は
「こいつが盗賊の頭ねぇ~。んで、その盗賊団の人数は?」
「3人だ。そのうちの1人は別の街に、馬車で向かったと聞いている」
それに疑問を感じたもう1人の冒険者が口を挟む。
「それはおかしい。もっといるはず」
「質問せんでいい。ただお前らはその男を殺して、女を連れてくるだけでいいのだ。それ以上の詮索はするな」
強い命令口調で、話を打ち切った領主。
「……へいへい。そうさせてもらいますよ」
カイルの似顔絵が描かれた紙を持っている冒険者がそう答え、領主の館を後にするのだった。
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