閑話:ソフィアから見たカイルたち
今回は武器商人の娘こと私、ソフィアの視点でお話をさせていただきます。
私がカイル様に助けられた日、父は本当に私をカイル様の家に置いて行ってしまいました。
最初は全く納得がいかず、コッソリ馬車に潜り込むことも考えていました。
ですが、深夜に父とカイル様のがお話しされているところを聞いてしまい、父がどのような気持ちで置いて行くのか、私がどれだけ大事にされていたのかを知りました。
それを聞いてしまったからには、ここで私が駄々をこね続けるわけにはいきません。
あ、決して盗み聞きをしていたわけではありませんよ。
ただ、最後に父が言っていた私とカイル様が付き合う件については、私の意志を無視するなと叫びたくなりましたが。
今後会った時に、問い詰めて1発殴らせていただきましょう。
そうやって夜が明け、父とカイル様は馬車で街に戻っていきました。
父も私も涙は見せまいとしていましたが、馬車が見えなくなってから耐えられず私は泣いてしまいました。
父もきっと我慢できずに、今頃泣いていることでしょう。どこまでも強がりな父娘です。
ですが私は父の気持ちに応えるためにも、ここで商人として勉強に励みましょう!
まずはカイル様と一緒にいらっしゃるノドカ様にお話しを伺います。
「ノドカ様?私はこれからどのようなことをすればいいのでしょうか?」
「んん~?」
ノドカ様を何か考える素振りを見せた後
「とりあえず、そのノドカ様っていうのをやめてノドカって呼んでね、ソフィア!」
……。
私にはかなり難しい要望です。
「い、いえ助けたいただいた手前、ノドカ様と呼ぶのが正しいと思うのですが……」
「実際に助けたのはカイルさんだし、私はただの付き人のようなもんだからねぇ。それに、これから一緒に生活するのに、そんな堅苦しいのは嫌だもん!」
そう熱く語りながら、グイグイと顔を近づけてくる。
「わ、分かりましたノドカ……さん」
「ノドカ!」
「…はい、ノドカ」
結局ノドカ様の圧力に負け、私はノドカと呼び捨てにすることが決定しました。
「それでノドカ?私は何をすればいいんでしょうか?」
先ほどはぐらかされた質問を、再びノドカに対して聞いてみる。
「知らない!」
なぜか自信満々な顔で、腕組みをされながら言われてしまいました……。
私はどうしようか悩んでいると
「でも本当に何をすればいいのか、私もよく分かってないんだよねぇ。だから必死に自分でできることを見つけて、するだけ」
そう言って屈託のない笑顔を見せるノドカ。
私も笑ってしまい、そうですねと答えるしかありませんでした。
その後、拠点内にどのようなものがあるのかを知り、どうやって生活をしているのノドカに聞きました。
旅商人をしている時に身に着けた計算や家計のやりくりならお手伝いできると思いましたが、全てノドカがやっていた上に私より計算が早い!
そのため、私が最初にすべきことはノドカと同じくらいの計算力とお金のやり取り方法を学ぶことになりました。
そして何より、ノドカに言われたことに衝撃を受けます。
「あ、そういえば何で武器屋を街の中央で出してたの?入口付近にある武器屋で、みんな買っちゃうから誰も来なくない?」
……確かに。ですが、他に方法はないと思うのですが……?
「え?入口の外で出店やればよくない?それか武器屋に置いてもらうか。最初に見た時から疑問だったんだよねぇ~」
商売魂も、どうやら私は負けているようです……。
こんな何も考えていない顔をしているくせにぃ!!
く、悔しいぃ!
そんなことを言っていたら昼食の時間となったので、私はノドカが作ったお手製の料理を食べます。
この料理が非常に美味しく、もうノドカが何でもできる超人にしか見えなくなってきました。
ですがそれは、食器を洗うといって皿を割り、こけて机の上にあった私の勉強用資料を盛大にばらまくまでの短い時間でしたが。
そうこうしている間にカイル様が帰ってこられました。
すぐにノドカは立ち上がって、カイル様の装備を取り外していきます。
こう見ていると、ノドカは付き人ではなく甲斐甲斐しくカイル様のお世話をする妻にしか見えません。
そう思った時、果たして私はこの2人の間に割って入ることが出来るのでしょうか?
それともカイル様は、一夫多妻を目指しているのでしょうか。
そんな将来図を妄想している黙っている私を心配して、カイル様が声を掛けて下さりました。
自分は一体何を考えているんだろう、すぐに頭の中にあった結婚妄想を振り払い、カイル様に街の様子を尋ねてみます。
するとカイル様は
「何事もなかったように普段通りの街だった。恐らく領主が隠ぺい工作をしたんだろうな」
と街の様子を教えてくれるのでした。
ということは、真実を知っている私たちや父を全力で消しにかかることでしょう。
いつ襲われるか分からない状況に身を置いてしまった恐怖を感じつつも、父は本当に大丈夫なのか心配で堪らなくなってしまいます。
そんな私を見ていたのか、カイル様は
「マックなら大丈夫だろうさ。当分は色んな街で護衛を雇ってやっていくと言っていたからな」
1つの街だけで護衛を雇うと、貴族の息がかかった冒険者しか応募してこないため、それを避けるために色んな街から冒険者を雇うのでしょう。
それでも心配です。
しかし、私は冷静な顔を装いながら
「父なら大丈夫でしょう。心配はご無用です」
と強がります。
それを見たカイル様は、私の頭を撫でながら
「早くこの問題を解決しような」
と言ってくれ、取り繕っていた私の鉄仮面がすぐに崩れてしまうのでした。
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