閑話:最悪だらけの異世界転生
はい!こんにちは!
今回は私、ノドカの視点からお届けします!
自分でもビックリするくらいテンプレ通りトラックに轢かれ、女神様と出会いこの世界に転生してきました!
女神様は「チート」やら何やら言っていたような気がするけど、異世界という単語にワクワクしすぎて全く話を聞いていませんでした!
だから何のチート能力を持っているのか知らず、しかもステータス画面が開けないので、チート能力は無いと言えるでしょう!
なんで、ここだけテンプレ通りじゃないのかなぁ。
さてさて、転生した直後に戻りましょう。
転生した場所はよく分からない森の中でしてね~。
適当に歩いて森を抜けると、ファンタジーお馴染みのでっかい城壁のある街が目の前に現れます。
ウキウキ気分で街の中に入ろうとしたら門番に止められてしまう、ここでもあるある展開が始まりました。
かなり怪しまれたけど何とか街に入れました!
けど、最後に門番が言ってた「こんなアホそうで弱そうな女が街に入っても問題ないだろ」という言葉、一生恨むからね!
街に入った後の目的はただ一つ!
森の中では木の実とか野イチゴ的なものを食べてたけど、そろそろマトモなご飯が食べたい!
早速美味しそうな匂いを出している酒場らしき場所に入りました。
入った酒場は私がバイトしていた居酒屋とは比べ物にならないくらい酒臭く、ガラの悪そうな男がそこら中にいます。
テーブル席はそんな男たちと相席しなくちゃいけなさそうだったから、人の少ないカウンター席に座ろっかな。
隣には顔に傷のある男が、貴族がどうのこうのと文句を言いながら酒を飲んでいるけど、テーブル席よりマシだから問題ナッシング!
そんなことよりやっとご飯が食べられる!
ウキウキ気分で何か頼もうと思った時、私は重要なことを思い出します。
そう、お金を持っていないのである!
でもカウンター席に座っちゃったからには何か頼まないと!
やってきたマスターらしき人に、とりあえず聞いてみる。
「こ、ここにお腹いっぱいになるお水ってありますか?」
ヤバイ!マスターが何言ってんだコイツみたいな顔してる!
「誠に申し訳ございませんが、そのような料理は出しておりません」
そうだよねー!そんな水あるわけないよねー!
でも私はへこたれない!
「そ、それなら無料で飲めるお水ってありますか?」
「……。料理と一緒にお出しすることはあります。何か注文していただけますでしょうか?」
困り顔のマスターにめちゃくちゃ申し訳なさを感じながら、今の状態を簡潔に伝えることに。
「い、今お金を持っていないん…です……よね~」
「……。それならお金をお持ちの時に、またお越しください」
綺麗なお辞儀を見せるマスターだけど、私は恥ずかしくて顔を見てらんない!
「そ、そうですよね!またお金がある時に!」
そう言って私は逃げるようにカウンター席から立ち、店を出ようとすると
「そこのお嬢さん!」
と、いきなり声をかけられました。
言い方は悪いかもしれないけど、周りを見てもお嬢さんらしき人はいない。
「わ、私ですか?」
ナンパかもしれないと思いつつも、声がした方を振り向くとカウンター席に座っていた顔に傷がいっぱいある男でした。
「金無いんだろ?今日は奢ってやるよ」
「え?」
無一文の私にとって、その提案はめちゃくちゃ嬉しい!
けど、何かしらの対価を求めてくるはずだ!
もしかすると……身体?
「ありがたいのですが、何を狙っているんですか?」
「何も狙ってねぇよ。俺も昔メシを食えずに困った時があってよ。そん時の俺に似てたからだ」
……。
即興で作り話を言った可能性もあるかも?
本当に安心かどうか分からないから断ろうとしたけど、その前に男はこう言ってきたの。
「安心しな。俺はもう酒場を出る。金はここに置いていくから、好きに使いな」
そう言って、男は本当に金を置いて酒場から出ていきました。
……さっきの話は多分本当だったっぽい。
「冒険者さん、ありがとうございます!」
聞こえていないだろうけど、お礼はしっかり言う。
そして
「マスター!これで食べられるご飯をください!」
と大きな声で注文しました。
お腹いっぱいになった私は酒場を出て、これからどうしようと考え始めます。
あの冒険者さん、たっぷり食べられるくらいのお金を置いていったらしく、もう一食分くらい食べれそうなほどお金が残っています。
このお金を使って明日もう一度ご飯を食べるか、それとも宿で寝るかのどっちにしようかな。
悩みに悩んだ末、ご飯は命の源だと思ってご飯用に残すにした!
そして今日の寝る場所だけど、綺麗な路地裏を発見したのでそこに決定!
異世界ファンタジーだと路地裏に人がいっぱいいるのが多かったけど、この世界では見かけないな。
冬服の制服のまま転生してきたから寒さもないし、この路地裏なら寝れるかな?
そう思って私は、路地裏の中でも綺麗な場所を選んで、壁を背もたれにしておやすみなさ~い。
何分か跡か分からないけど、突然知らない男に身体を押さえつけられて起きました。
何をするんだと文句を言ってやります。
「な、なんですか!あなたたちは!」
「へっへっへ。何にも知らない田舎娘ゲットだぜぇ」
「よかったすねアニキ。最近は見なくなりやしたが、今でもたまにゲットできやすね」
厳ついスキンヘッドでアニキと呼ばれた男と、それより小柄で卑屈そうな男がそう話している。
コイツラの話から路地裏に人がいないのは、路地裏に住む人がいないのではなく、コイツラに攫われた後だからだとすぐに悟りました。
私はすぐに逃げようと思ったけど、アニキと呼ばれる男に押さえつけられ動けない。
「大人しくしてろ!」
しかも、その男に思いっきり頭を殴られて意識を失うことに……。
次に気づいた時は、見たことないほど汚いテントの中でした。
そこには色んな人間とか獣人?とか、エルフがいて、私を含めてみんな鉄の首輪をつけていました。
服装もボロ布を被っただけの状態だったけど、そのまま知らない建物の中にいた奴隷商人らしき人に売られちゃいます。
ファンタジー世界あるあるの奴隷になるのは嫌だ!
私は力いっぱい抵抗しました。
「触らないで!!」
「私は奴隷じゃない!!」
「あっち行け!!」
やってくる奴隷商人や護衛らしき人をを蹴り飛ばし、唾を吐きかけまくってやった。
ニヤケ顔で迫ってきた奴隷商人には、股間に蹴りをプレゼント!
そしたら奴隷商人はブチ切れて、奴隷がいっぱいいる部屋から、四肢を拘束する牢獄のような1人部屋に入れられてしまいました。
しかも、猿轡を付けられるオマケ付きで!
未だに股間を抑えて痛そうにした奴隷商人は
「明日からお前を徹底的に調教してやるから、覚悟しろ!!」
と言い残して、部屋から去っていきました。
そんな感じで奴隷になった初日は終わったのを覚えています。
次の日、性懲りもなく奴隷商人は脂ぎった顔をニヤニヤさせながら近づいてきやがりました。
私の猿轡をとって反省したか聞いてきたので、思いっきり唾を吐きかけてから昨日と同じように叫んでやりましたよ。
そしたら奴隷商人は堪忍袋の緒が切れたようで、部屋の隅っこにあったムチを手に持って私に近づいてきます。
「お前の叫びが許しを請う声に変わるのが楽しみだよ」
そう言って、私は人生で初めての鞭打ちの刑を味わいました。
痛さのあまり長く感じたけど、数十分くらいだったと思う。
すっかり息切れしている奴隷商人を横目に、私はまだ叫んでいました。
「はん!お前みたいなやつは、ムチじゃなくてダンベルでも持って鍛えろよ!!」
威勢のいいことを言っているけど、痛みに耐えられなくなっているのは自分でもわかっている。
それでも負けたくないと、抵抗を続けてます。
「言わせておけば……」
額に青筋を浮かべた奴隷商人が、再びムチを振ろうとしたその瞬間!
「何をしている?」
奴隷商人の肩に、いきなり誰かの手が置かれました。
奴隷商人は飛び上がって驚いていましたが、私も目を凝らして見てみると、そこには酒場にいた顔に傷を持つ冒険者がいるではありませんか!
奴隷商人はすぐに態度を変えてご機嫌取りを始めました。
「お客様でしたか!ささ、こんなところではなく応接室に……」
「そんなことより、お前は何をしている?」
心臓に突き刺さるような冷たい言葉に、私まで心臓を掴まれたように感じてゾクゾクする。
「何をと申されまして……ただ奴隷の躾けをしていただけでして」
「その女は昨日まで奴隷ではなかったはずだ。無理やり奴隷にしたのか?」
「い、いえ……。私どもはよく来られる顧客様からこの奴隷を売っていただいただけなのです。そう!私は買っただけなのです!」
「……。」
顔に傷を持つ男はいくらか黙った後。
「いくらだ?」
「え?」
「いくらだと聞いているんだ」
何か奴隷商人が言った後、その男はお金の音がする袋を荒々しく奴隷商人に投げ渡して、私と私の制服を同時に購入してくれたのでした。
この顔に傷を持つ男は何を隠そう、私の雇人であるカイルさんです!
立場上、私は一応カイルさんの奴隷になります。
ただ奴隷の首輪も付けてないし奴隷紋もないんで、正式な奴隷ではないらしいです。
そこのところよく分からないですが、助けてくれたカイルさんに恩返しするため、今日も私はカイルさんに付いていきますよ!
あ、もちろん元の世界に戻る方法も一緒に探してますけどね。
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