そして二人は、あやまりあう。

「「今まで、本当にごめんなさい」」


 そして、彼らは戻って、そして頭を下げる。

 今まで自分達が酷い誤解をしていたこと。互いが互いに、申し訳なく思っていたこと。そして同時に、二人共が互いを想っていた事を。今までの関係者全員に、そう言って回るのであった。

 赤くなった、仏頂面で。


 そんな事をすれば、今まで笹葉を責めていた者は、全くの筋違いで責め立てていた事になる。その上で、謝るべき人間に謝らせているのだ。どうしたものか分からなくなる。

 が、そんな空気をさも知らないかのように、男子等は騒ぐ。


 やれ、じゃあ今度こそ本当に夫婦じゃん!!だとか

 やれ、やっぱり似た者夫婦じゃん。だとか

 やれ、じゃあ言葉と付き合うんだよな!だとか。

 やれ、どうせならまた二人きりにしてやろうか……だとか。


 それに対して赤くなる言葉であったが、笹葉は逆に怒りだす。


「あのなぁ!お前らそう都合よく言うけどさぁ!!オレが女子に言われてる間に何も言い返さなかっただろうが!!!オレは覚えてるぞ!!!」


 そう、別に笹葉も怒らない人間ではない。ただ言葉に対して怒らないだけで、それは言うなれば幼馴染の特権であった。本人は気付いてないだろうが、口調だって違う。

 そういってバツの悪くなった男子を横目に、言葉だけは彼の耳が赤くなっている事に気付き、少しだけ笑う。確かにそうかもしれないね似た者夫婦かもしれないねと。


 そうして、彼らは最終的に、全員で謝り合うこと。

 そして、最終的に受験が終わったら何処かの温水プールに行くということにするのであった。

 ……まあ受験結果次第では精神的にそれプールどころではないので、一応は参加自由という事にしたが。きっと、それでも彼ら彼女らの大半は来るだろう。

 この中学三年生という一時を、最後に良かったと思うため。後悔しないために。

 ついでに、今度こそカップル成立を祝わんとするために。


「もう次は離さないでね?」


 と、彼女が冗談っぽく笑う。


「当たり前だろ。もうあんな生き地獄はごめんだ」


 そう答える。


 あの時までは、ずっと幼馴染なら、話さなくても気持ちは通じる。そう思っていた。だけど実際には、話さないで人の心なんてわからないのだ。できたとしても、どこかにすれ違いとかそういったものも、あるかもしれない。

 だけど、だから、きっと二度と話さないような事はすまい。二度と彼女を離さないと、誓ったのであった。


 自分のした事は変わらない。だけど、言葉を交わせなかった罪は二人とも一緒で。きっと、誰かは自分を許さないだろう。

 心の中の自分とかだけじゃなく、この2年間を無駄に辛いものにさせられたと、心のどこかで恨まれてもいるだろう。高校への旅立ちは、きっと綺麗なものばかりじゃない。


 それでも、イカリソウの咲く頃に。その頃までにはきっと、自分達はそれぞれを許して旅立つしかないのだろう。その旅路を2人で背負って歩いて行こう。そう思った。

 まだまだ人生は、これからなのだから。



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【KAC2024-5】旅立ちの日に 【はなさないで】 創作感想用の何か(仮) @CreaTubeRose

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